【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅲ-①分科会 都市生活とまちづくり

児童下校時の安全対策の取り組みについて


群馬県本部/前橋市役所職員労働組合 柳田 章一・岡野  憲・高橋 昌巳

1. 『まえばしウォーキングバス』の導入

 前橋市では、2005年度より準備が進められ、2006年度より「動く」「見える」児童生徒の下校時安全対策として「ホットな見守り、ほっと安心、下校時スクールサポート」を合言葉に『まえばしウォーキングバス』が本格実施されました。


<ウォーキングバスとは>
 通学路の同じ児童がまとまって歩き、決められたポイント(バス停留所)を決められた時刻に通過しながら、登下校するもの。バスが決められた時刻を通過しながら目的地に行くのに似ており、車輌を使用しないのでウォーキングバスと呼ばれる。イギリスで導入され、登下校時の子どもに対する犯罪が激減した。バスの先頭や最後尾には大人が歩き、バス停留所にも大人が立ち、子どもたちの登下校を見守る。


(1) 実施の手順としては
① 集団下校と定時一斉(集団)下校を実施する。
② バス停留所(安全確認ポイント)を設定する。
③ 通学路マップを作成する。
④ 児童が歩くコース、バス停留所(安全確認ポイント)、バス停通過時刻を明示する。
⑤ ホットほっとボランティアを募集する。
 ア バス停で安全確認をしてくれる人。
 イ 一緒に歩いてくれる人(引継いで歩いてもらえれば全区間でなくてもよい)。
⑥ 帽子や腕章など、ボランティアの目印になるものを用意する。
⑦ ボランティア、PTA等による打ち合わせ会を実施。バスを運行する上での係りを決め、通学路マップを配布する。

(2) 実施する上での留意点として
① 下校時における同じ通学路の児童(同じバスの児童)のグルーピングについて、十分な工夫配慮が必要である。

2. A小学校(児童数600人程度)におけるウォーキングバスの実施状況例

 当該小学校では、「PTA安全パトロール」として、ウォーキングバスを実施しています。午後3時15分と午後4時15分の二回、一斉に下校していますが、低学年の多い午後3時15分の下校時にPTAの方々が、五つの方面に各一人ずつ同行しています。携行品として、腕章・たすき・防犯ブザーがあり、緊急の連絡用に個人の携帯電話(持参可能な方が無理のない様に)も、持参頂いています。
 パトロールの仕方は、時間に集合し受付簿に氏名等記入、コース図にてコースおよび申し送りの確認をし各方面のスタート地点へ移動、パトロール開始となります。
 パトロール中は児童に挨拶など積極的に声をかけ、防犯および安全面の下校指導をお願いしています。危険箇所など気づいた点があれば学校到着後、申し送りノートに記入し、内容によっては学校に報告もお願いしています。

3. 実施方法の見直し

 都市部・農村部あるいは、各学校児童数の大小等、各学区毎の実態に様々な違いが分かってくると同時にウォーキングバスの各方面における負担感等が露見してきたのです。
 その中でも一番の問題は、安全対策に参加出来る協力者(保護者・家族)の人数・回数についての負担感が増していることでした。人口密集地では、月一回で済むことが過疎地では週二回になるなど、協力者の方々から数々の不満が出てきたのでした。そんな中、行政側から『まえばしウォーキングバスの実施方法の見直し』が提案されました。それは前述の問題点を検討し、各学校・地域の実情に応じた無理なく長続きする下校時の安全対策という主旨のもとで、学校が主体となり保護者や地域関係者と協議しながら具体的な方法を検討し実施する。という導入時に比べると簡素化の方向に進んでいるようだが、中止に向かうことを避けて"ほどほど"の思想で継続させる手法をとったことは、評価出来ると思う。

4. まとめ

 下校時の児童の安全について保護者感情には「安全であるか危険であるかは、学校(行政)側が責任を持って判定すべきだ」「危険であると判定された場合の対応は、学校側が当たるべきだ」といった、「児童の安全を守るのは学校の責任である」という考え方が底流にある。学校側も事件・事故発生時の責任を考えるとある程度の安全対策をとることが望ましいと考える。しかしながら、安全と危険の判断は白か黒かの一線を引けるものではなく、その間には、幅広いグレーゾーンがあるのが現実であり、安全性を高めるということは、それぞれのグレーを少しでも白に近づけることだという考え方が必要だと思われる。
 このような観点に立って児童下校時の安全を考えなおしてみると、現代の生活環境に即した対策を立てることも大切だが、結局のところ地域の人たちがまちの中で暮らしている"生活感のあるまち"。それは、パトロール(監視)をするのではなく、子どもたちの下校時間に家の前で清掃をしていたり、道端で井戸端会議をしたり子どもたちが遊んでいるような、少し前には当たり前だったまちの姿を復活する事も大事なことであると考える。