1. これまでの主な経過と現状
(1) 事故の背景と放射性物質の拡散
① 事故の背景
良識ある多くの専門家や団体は、国および東京電力に対し福島第一原子力発電所が地震・津波への対策が不十分であることを指摘してきました。しかし、国民の安全よりも経済性を優先する電力資本と、そこから生み出される莫大な利益に群がる者たちの「都合の良い見解」によって対応は何もなされず、2011年3月11日の東日本大震災の地震・津波によって、原子炉内部の損傷を含む重大な事故が引き起こされました。
② 放射性物質の拡散と避難の在り方
一般的には、事故直後から放射性物質の拡散が始まったと認識されていますが、県内陸部にまで汚染が拡がり始めたのはグラフ①のとおり震災の数日後からです。
自治体が「安全神話」に惑わされず、事故を想定した避難マニュアル等を策定していれば、地域住民の被ばく量を大幅に抑える時間は十分にあったといえます。そして、避難の途中や避難先で761人もの貴い生命が奪われることもありませんでした。
また、国は予測システム(SPEEDI)によりこのことを事前に把握していたにもかかわらず、情報は公開されず多くの県民が防げたはずの被ばくをすることになりました。
(2) 放射性物質の汚染状況について
① 環境の汚染状況
事故後からの汚染状況は、グラフ①が示すように半減期の短い放射性ヨウ素が核崩壊によって消失し、現在は主に放射性セシウムによる汚染が続いています。放射線量は地域により異なり、避難・帰宅困難区域以外では、会津地方や県南部など放射性物質の飛散が比較的少なかった地域を除き、0.3μSv~3.0μSv/時程度で推移しています。
② 食品等の汚染状況
牛肉や海産物、山菜においては、スポット的に基準値(100Bq/kg)を上回る食品が検出されていますが、農産物は日本の農地が全体としてカリウム過剰なことなどから植物への放射性セシウムの移行率が低く、ほとんどが検出限界値(概ね15Bq/kg)以下となっています。
※ Sv(シーベルト)……放射線が身体の細胞に及ぼす影響の強さを数値化(1時間当たりで表示)
※ Bq(ベクレル)………1秒間に放出される放射線量(食品等は1㎏当たりで表示) |