【自主レポート】 |
第34回兵庫自治研集会 第3分科会 自然災害に強いまちづくり~災害から見えた自治体の役割~ |
2000年に総務省消防庁では、住民の生命、身体及び財産を守る責務を全うするため、消防力の充実強化を着実に図っていく必要があるとして、市町村が目標とすべき消防力の整備水準を示し、施設及び人員の消防体制整備を図るための「消防力整備指針」を策定しています。しかし、全国的に整備指針への整備充足率は低迷しており、地方交付税での消防費措置も不十分な現実があります。私が居住する盛岡市の実態を考察します。 |
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1. はじめに 昨年の東日本大震災の教訓や巨大地震への不安などにより、地域の防災に対する住民の関心が高まっています。災害等から市民を守る盛岡市の消防行政の実態と課題について検証してみましたが、他の自治体でも同様の調査や問題点の抽出を行いながら、住民の安全・安心が向上することを願うものです。 2. 国の消防力整備指針と盛岡市の現状 前述した通り、消防庁では市町村の市街地や建築物の配置実態、人口の集積状況や土地利用の面積等を勘案した「消防力整備指針」を策定し、市町村が適切な消防力を整備する人員や設備の基準数値を定め、地域の実情に即した消防体制の整備を求めています。 3. 地方交付税の消防費措置と予算の現状 一方、これらの消防力整備指針に対する地方自治体の低い充足率の背景には、国から自治体に交付される地方交付税での消防費の基準財政需要額との乖離や自治体の財政力の格差問題が上げられます。 |
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① 標準団体又は標準施設の行政規模 ② 単位費用と消防費の基準財政需要額 |
資料1 消防費の基準財政需要額(2009年) ③ 過去10年間の消防費決算額と基準財政需要額 |
資料2 盛岡市の消防費決算額 (単位:千円) |
4. 3年間の総合計画でも充足率は向上されず 以上の実態に対して盛岡市政がどのように受け止め、どう向き合おうとしているのかも重要な観点であり、盛岡市政推進の最上位計画である盛岡市総合計画では、盛岡市の消防力充足率向上をどう図ろうとしているのか、その検証が必要です。盛岡市総合計画で盛り込まれた、具体的な事業名や予算規模を示している、実施計画で掲げられた「火災に強い消防体制の構築」の分野では、向こう3年間の実施事業として、盛岡地区広域消防組合の運営費、中央消防署庁舎建設事業費、緊急無線設備デジタル化整備費、消防団の屯所やポンプ車更新などの実施事業に対して、実施計画期間3年間での全体事業費を97億3千7百万円と見込み計上しております。 5. まとめ 昨年の東日本大震災では大津波被害や原発事故を含めて、事前に策定されたシミュレーションやマニュアルは、想定外という言葉でその限界を露呈されました。非常事態へのリスクに対する備えは、政策的にも最優先で考えられるものと認識されてきましたが、消防行政の分野だけを見ても不十分な体制を否めません。ひとつの自治体だけでは、成し遂げられない課題を取り上げましたが、住民の安全という観点から見て、地方行政が一致して向き合うべき現実であると、改めて再認識されるものです。これらの問題意識が少しでも広がり、地域の消防力の向上に寄与出来れば幸いです。 |