【自主レポート】 |
第34回兵庫自治研集会 第4分科会 自治体がリードする公正な雇用と労働 |
「大阪市家庭児童相談員労働組合」の組合活動の実践を通してみえてきた課題や問題点を、「家庭児童相談室」の設置経過、児童行政の市町村への分権化による組織改編にも言及しながらいったん整理する。そのうえで、大阪市や全国的な非正規公務員の格差問題をめぐる発言や動きにも触れながら若干の対応策と今後の課題について明らかした。さらには、今後非正規公務員労働運動が社会運動へと発展するための、角度を変えた視点での考察も加えている。 |
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はじめに 今、地方自治体の非正規公務員労働組合は、行き詰まっている。これは、筆者自身が、この数年組合活動を行ってきたなかでの実感である。「格差社会」や「官製ワーキングプア」が横行する中、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現に向け労働組合が各公務労働現場や、すべての労働現場において必要とされる仕組みであることは間違いないにもかかわらず、このままでは道を失ってしまいかねない分岐点に立っている。 |
1. 「大阪市家庭児童相談室」を取り巻く動き 1964年4月厚生省事務次官通達(注1)により福祉事務所内に「家庭児童相談室」の設置が義務づけられた。 |
2. 大阪市家庭児童相談員労働組合結成 2006年7月、要綱の施行された2004年4月1日を起点に、任用期間1年、更新3回目にあたる家庭相談員は論述試等で選考しなおすという要綱改正の説明がなされた。これは通算勤続年数10年~30年以上という半数近い相談員も選考対象となった。 |
3. 非正規公務員組労働組合の課題の整理 2011年10月18日、第3回定期大会では、執行委員役員の大幅な変更が行われた。家児相労組の原型をつくった前執行委員役員・組合員らの退職や、60才前後となったことを受け、執行委員役員の若返りを図ったのである。これにより、現執行委員役員は次世代の家児相労組を担える人材として成長することを期待され、同時に今後組織を発展させていく上での課題も担うこととなった。以下、現在の家児相労組において突き当たっている、いくつかの困難な点と課題を列挙する。 (1) 組合員間の意識共有化の問題 (2) 組織運営上の課題 |
4. 若干の対応策と今後の課題 近年、わずかであるが大阪市の非正規職員の問題について、市労連からの発言もみられる。2012年2月、新たな人件費削減の取り組みにより非正規職員も含む報酬削減案が出された際、市労連は非正規職員への削減撤回を求め交渉も行っている。また、局との交渉の中で市労連は非正規職員についても触れている(注5)。 |
5. さいごに ―今後の非正規公務員労働組合の展望― 以上これまで考察した家児相労組の抱える様々な課題は、国・市レベルで「家庭児童相談室」が変遷する中、「非正規職員」であるという「身分(注7)」に限界を感じつつ、地域における継続性の要する児童家庭相談の専門職であるという連帯意識が組織化を可能にし、解決できた部分もある。しかし一方で、近年の児童相談行政の分権化(注8)により市町村の再編が行われたものの、専門性の必要度に明確な基準がないなかで、その業務と雇用形態の不安定さが正規職員との関係性のとらえなおしを必要とするために、課題解決の糸口が見いだせていないものもあるといえよう。 |
(注1) 1964年4月22日 厚生省発児第92号 厚生次官通達「家庭児童相談室の設置運営について」各都道府県知事・各指定都市長宛に設置の通達を行った。 |