【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第13分科会 地域で再生可能な自然エネルギーを考える

 函館市職労では、これまでも運動方針の中に脱原発を掲げて取り組みを進め、また、昨年3月の福島第一原発事故発生以降は、極めて大きなリスクを伴う原発政策を直ちに見直し、再生可能エネルギーの推進とともに脱原発の実現のため、これまで以上の取り組みを進めているが、福島原発事故から1年が経過し、今後の原発のあり方、大間原発の今後の方向性について、様々な意見があると考えられることから、市職労の今後の脱原発に係る運動方針の見直し・豊富化を図っていきたいと考え、組合員に対しアンケートを実施し、その現状を調査した。



大間原発・今後の原発のあり方について


北海道本部/函館市職員労働組合・自治研推進委員会

1. はじめに

 函館市職労では、いったん事故が発生したら甚大な被害が発生することや人体に対する放射能の影響、高レベル廃棄物の最終処分方法が曖昧なままであることなど、原子力発電には多くの問題があることから、運動方針の中に脱原発を掲げて取り組みを進めてきた。
 また、昨年3月の福島第一原発事故発生以降は、そこに暮らす、住民の生命と財産、安心・安全の暮らしを守る自治体職員の労働組合として、極めて大きなリスクを伴う、原発政策を直ちに見直し、再生可能エネルギーの推進とともに脱原発の実現のため、これまで以上の取り組みを進めている。
 しかしながら、福島原発事故から1年が経過し、国内にある原発で稼働しているのは、7月に再稼働した福井県の大飯原発のみであるが、大飯原発のときも含め電力不足対策として原発を再稼働させるかどうか意見が分かれているなど、今後の原発のあり方、特に道南地域にとっては、対岸の大間町で世界で初めてフルMOX燃料を使用する原発として建設中の大間原発の今後の方向性については、様々な意見があると考えられる。
 そこで、大間原発や今後の原子力発電のあり方についてどのように考えているのか調査し、市職労の今後の脱原発に係る運動方針の見直し・豊富化を図っていきたいと考え、組合員に対しアンケートを実施することとした。

2. 調査概要

① 調査期間  2012年6月18日~6月29日
② 配布数   1,493人
③ 回収数   1,058人
④ 回収率   70.9%
⑤ 調査内容  ⅰ)個人属性(性別、年代)、ⅱ)大間原発の認知度、ⅲ)大間原発の今後の取り扱いと対応、ⅳ)原発に対する考え方とその変化、ⅴ)原発再稼働に対する考え方、ⅵ)将来の原発のあり方、ⅶ)代替エネルギーに対する考え方、ⅷ)その他自由意見

3. 調査結果

(1) 大間原発の認知度
 函館と「最短18㎞」先の青森県大間町に「原発が建設中」であることの認知度について、「①知っている」「②知らなかった」「③知っていたが距離まで知らなかった」の設問を設定し、調査した。
設問
全体
男性
女性
10・20代
30代
40代
50代
84.9%
88.1%
78.8%
70.2%
83.2%
85.3%
88.6%
5.1%
4.7%
5.6%
14.0%
7.0%
3.6%
3.7%
9.5%
6.9%
15.0%
15.8%
9.4%
10.3%
7.7%
無回答
0.5%
0.3%
0.6%
0.0%
0.4%
0.8%
0.0%

 結果は、上表のとおりであるが、大間原発の認知度は、「距離までは知らなかった人」を含めると「全体」で約95%となり、「男女別」でもそれほど差異は見られなかった。「年代別」では、年代が若くなるにつれて認知度が低くなる傾向が見られた。

(2) 大間原発の今後の取り扱いと対応
 震災で工事が中断している大間原発の今後の取り扱いについて、「①建設は永久に中止すべき」「②地震や技術などの安全性が確認できるまで凍結すべき」「③即刻建設を再開すべき」の設問を設定し、調査した。

設問
全体
男性
女性
10・20代
30代
40代
50代
55.3%
55.4%
55.1%
33.3%
47.2%
54.6%
66.8%
40.4%
39.7%
42.1%
57.9%
46.9%
41.0%
31.1%
2.0%
2.7%
0.6%
3.5%
2.4%
2.3%
0.9%
無回答
2.3%
2.2%
2.2%
5.3%
3.5%
2.1%
1.2%

 結果は、上表のとおりであるが、建設中止または慎重な意見が全体で約95%を占め、建設容認の意見は2%とごく少数であった。「男女別」は、「全体」とほとんど差異は見られなかったが、「年代別」では、年代が若くなるにつれて建設中止の割合が低下し、建設慎重の意見が増加する傾向が見られ、「10・20代」では、建設慎重の意見が過半数を占め、建設中止を上回った。

 また、大間原発が建設中止となった場合、大間町としては、頼りにしていた交付金が入らなくなる。そうなった場合の大間町に対する対応について、「①仕方がない」「②国が何らかの手当を当面すべき」「③地の利を生かした新たな発電所の建設」「④その他」の設問を設定し、調査した。

設問
全体
男性
女性
10・20代
30代
40代
50代
25.3%
28.0%
20.1%
24.6%
33.3%
24.9%
19.0%
37.3%
39.4%
33.1%
31.6%
34.7%
39.0%
38.4%
28.9%
25.9%
35.0%
33.3%
24.3%
27.2%
34.2%
6.0%
4.8%
8.3%
8.8%
5.6%
6.0%
5.7%
無回答
2.5%
1.9%
3.5%
1.7%
2.1%
2.9%
2.7%

 結果は、上表のとおりであるが、「全体」では、国の手当を求める意見が一番多かったが、これは、原発が国策で進められてきたとの認識からではないかと推測される。「男性」と「30代以上」では同様であったが、「女性」と「10・20代」では、地の利を生かした発電所建設の意見が一番多かった。

(3) 原発に対する考え方とその変化
 原子力発電についての考え方についてや福島第一原発事故の前後での考え方の変化について、「①変わっておらず必要と考えている」「②変わっておらず必要ではないと考えている」「③必要ではないという考え方に変わった」「④必要であるという考え方に変わった」の設問を設定し、調査した。

設問
全体
男性
女性
10・20代
30代
40代
50代
21.2%
25.0%
13.8%
43.9%
28.3%
21.4%
10.8%
31.7%
31.3%
32.8%
15.8%
25.2%
29.7%
42.8%
36.7%
35.1%
39.3%
36.8%
33.6%
38.8%
36.6%
2.2%
2.4%
1.7%
0.0%
2.8%
1.8%
2.5%
無回答
8.2%
6.2%
12.4%
3.5%
10.1%
8.3%
7.3%

 結果は、上表のとおりであるが、「全体」では、「原発不要に変わった」との意見が一番多く、次に多かった「変わらず不要」と合わせて原発不要の意見が約7割となった。また、福島原発事故以前における原発不要の意見は、②と④を合わせた約3割であったことから、福島原発事故が原発に対する考え方を変える大きな転換点となったのかが分かった。「男女別」でも「全体」と同様な傾向が見られたが、年代別では「10・20代」で「変わらず必要」との意見が約4割を占め一番多かった。

(4) 原発再稼働に対する考え方
 アンケート実施時点(6月)では、国内の原発は全て運転を停止している一方、政府は大飯原発を再稼働しようとしていた。その時点の現状において再稼働に対する考えについて、「①政府が安全と確認できたものについては、速やかに再稼働すべきである」「②現状の安全確認では不十分であり、第三者機関等のさらなる安全確認がなされない限り再稼働すべきではない」「③原発はもはや安全とは言えず、永久的に再稼働すべきではない」の設問を設定し、調査した。

設問
全体
男性
女性
10・20代
30代
40代
50代
16.9%
19.9%
11.3%
28.1%
23.8%
14.5%
12.0%
42.8%
42.9%
43.2%
57.9%
45.8%
43.4%
37.1%
36.2%
34.3%
39.8%
10.5%
26.6%
35.9%
49.1%
無回答
4.1%
2.9%
5.7%
3.5%
3.8%
6.2%
1.8%

 結果は、上表のとおりであるが、再稼働に慎重な意見が一番多く、次に再稼働反対の意見が多かった。「男女別」でも同様の傾向となり、「年代別」でも「30代」「40代」は同様の傾向であったが、「50代」では、再稼働反対の意見が約半数、「10・20代」では、再稼働容認の意見が約3割を占めた。

(5) 将来の原発のあり方
 将来的な原子力発電のあり方について、「①従来どおり原子力発電を使用していくべき」「②当面は原子力発電は使用すべきではあるが、段階的に廃止すべき」「③速やかに原子力発電は廃止すべき」との設問を設定するとともに、各設問を選択するに至った理由について自由記載の設問を設定し、調査した。

設問
全体
男性
女性
10・20代
30代
40代
50代
6.4%
7.9%
3.7%
10.5%
9.8%
5.9%
3.4%
55.2%
57.4%
51.1%
71.9%
60.5%
55.6%
47.4%
34.7%
31.6%
40.7%
15.8%
26.2%
34.4%
45.8%
無回答
3.7%
3.1%
4.5%
1.8%
3.5%
4.1%
3.4%

 結果は、上表のとおりであるが、原発の段階的廃止の意見が一番多く過半数を占めた。原発即時廃止の意見も約4割を占め、従来どおり原発使用の意見は約7%であった。「男女別」「年代別」でもおおむね同様の傾向であったが、「50代」では、段階的廃止と即時廃止の意見が拮抗し、「10・20代」では、段階的廃止の意見が約7割を占めた一方、従来どおり原発使用の意見は10%を超えた。

 【各設問を選択した理由の主なもの】
① ・原発で死者は出ておらず、むしろ、石炭など火力発電の方が、環境や採掘時の事故等により死者が出ている。被爆リスクを過大評価しすぎである。今後は、放射性物質の除去や無害化などの技術、原発の技術革新が計られることを期待する。
  ・現在の生活レベルを維持するためには、安定的な電力供給は欠かせない。原子力に代わるエネルギーシステムが同レベルで他にあるのなら別だが、そうではない現状ではやむを得ない。原子力を廃止するのであれば、国民全体が大きなデメリットを負うことになるが、現在の社会システムでは無理だと考える。
  ・元々資源のない国であり、原発は仕方がないのではないか。電力不足で節電はまだしも電気料金の値上げには疑問が残る。
  ・安全性を別とすれば、現状ではクリーンエネルギーであることには間違いない。
② ・現在、原子力に勝る電力供給源が見当たらないため、このままだと毎年電力不足になり、計画停電や節電をしていかなければならない。そのため、安全確認が十分であると判断された原発から再稼働して、その間、原子力に代わるエネルギー源の開発に努め、徐々に原発を廃止し、新エネルギーにシフトしていくべきである。
  ・原子力発電の危険性が明らかになった今、廃止、他のエネルギーの活用に向けて舵取りをするべきであるが、電力不足を生じさせてまで即時に廃止できるほど日本の国力に余裕はなく、国民の覚悟もできていないと感じる。
  ・現時点での発電コストの優位性、関連産業労働者への影響を考えると即時すべて停止はできないと思う。
  ・速やかに原子力発電は廃止すべきだが、廃止した原子炉に対し原子力関連の技術者もある程度今後も養成する必要があるため、結果として段階的に廃止するのがより安全であると考える。
③ ・関係者には不都合もあるだろうが、やめるには今しかない。国民全体の世論拡大がさらに必要である。
  ・永久に核のごみ処理問題を抱え、事故の不安も抱え、なぜ原発にこだわるのか分からない。現在の技術力をもってすれば、速やかに自然エネルギー活用にシフトすべきである。
  ・現代の科学技術をもってしても、津波や地震などの自然災害に対応できない。また、原発の稼働に人間が関わることは、必ず判断・操作ミスがつきまとう。万が一の時にミスしても、原発事故を収束させることは困難を伴う。リスクが大きすぎる。
  ・事故が起きた時の被害額やその事故を防ぐためにかかる費用、使用済核燃料の処分費用まで考えると原発の発電コストは一体どの位になるのか。そこまでして推進する理由が分からない。

(6) 代替エネルギーに対する考え方
 原子力発電に代わるエネルギーについて、「①火力発電」「②水力発電」「③地熱発電」「④太陽光発電」「⑤風力発電」「⑥波力発電」「⑦バイオマス発電」「⑧その他」の設問を設定、3つまでの複数回答とし、調査した。

設問
全体
男性
女性
10・20代
30代
40代
50代
6.9%
7.5%
5.5%
7.1%
6.8%
7.1%
6.7%
11.6%
11.5%
12.0%
10.2%
9.9%
12.2%
12.5%
14.7%
15.8%
12.1%
15.7%
16.0%
13.9%
14.4%
25.6%
25.6%
25.6%
23.6%
25.4%
26.3%
25.5%
13.8%
13.7%
14.1%
14.2%
11.5%
14.4%
15.1%
9.1%
10.0%
7.3%
11.8%
10.2%
8.7%
8.3%
6.1%
6.2%
5.9%
6.3%
7.4%
5.2%
6.0%
1.1%
1.2%
0.8%
1.6%
1.9%
0.7%
0.7%
無回答
11.1%
8.5%
16.7%
9.5%
10.9%
11.5%
10.8%

 結果は、上表のとおりであるが、上位3つは「太陽光発電」「地熱発電」「風力発電」となり、「男女別」「年代別」でも同様の傾向が見られた。

(7) その他自由意見
 その他、大間原発・今後の原発のあり方に関して、様々な意見が寄せられた。主な意見は次のとおり。
・停止、廃止一辺倒ではなく、今後の持続可能なエネルギー開発推進に向けた前向きな議論や活動を望む。今まで、神話の上に築かれたものだったとしても、原子力発電によって、私たちの経済活動や豊かな生活が支えられてきた事実を認める必要はあると思う。
・原発を廃止にして、節電が必要ならば、企業や個人の努力も重要だが、国からの助成も重要だと思う。日本中の蛍光灯をLED電球に替えると、それだけで節電目標に近い9%の削減になる。節電しやすいような状況にして欲しい。
・節電行動を多少でも運動に入れるべきである。このまま突き進むと地域エゴ的に見られる部分もあるので、「原発に頼らない節電方法」などチラシの片隅にでもたまに入れるのも一興かもしれない。
・函館は、漁業の街。大間との間は、津軽海峡があり遮蔽物がない。福島原発クラスの事故が発生すれば、函館の水産業、農業は成り立たなくなる。引き返せる今のうちに大間は中止にできないのか? 大間町だけの問題ではない。

4. 課題と今後の取り組み

 アンケート結果を見る限り、これまで進めてきた「脱原発」の運動方針の方向性については、問題はないものと考察される。しかしながら、原発の段階的廃止の意見が過半数を占めていることからも、代替エネルギーを確立し、節電の取り組みを推進した上で、原子力発電がなくても電力が十分確保できることがはっきりしない限り、「脱原発」実現への道のりは遠いものと思われる。今後は、北海道における使用電力量の状況を注視しながら、意見反映等も含め運動の展開を図っていきたい。
 最後に、時間のない中での取り組みで、アンケート対象は組合員のみとなり、また、より深いアンケート結果の検証ができなかった。今後は、アンケート対象を函館市民や青森県の方々に広げ、それぞれの結果を比較検討するなど、今回の取り組みを発展させていきたい。