【代表レポート】
西成地区のまちづくり運動の現状と課題
西成地区街づくり委員会事務局長 富田 一幸
|
1. 西成地区まちづくりのあゆみ
1990年 同和地区生活実態調査実施
1992年 大阪市同和対策推進協議会意見具申・西成環境整備推進プロジェクト発足
1994年 西成地区まちづくり委員会発足
1996年 西成地区総合計画策定
1997年 長橋住宅改良事業認可、大阪市まちづくり活動支援制度適用
1998年 西成まちづくりプラザ開設、郵政省マルチメディアモデル住宅事業実施
1999年 社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会設立・特別養護老人ホーム「まちかどホームすずらん」開設、Jカード事業通産省の助成を受ける
2000年 旭住宅改良事業認可、同和地区生活実態調査
2001年 化製場(レンダリング)集約化工場完成、総合就労支援福祉施設「ウィング」完成・定期借地権付コーポラティブ住宅完成
シルバーハウジング事業(住宅福祉連絡員制度)開始
2002年 民間老朽住宅建替支援事業第1号住宅完成、大阪市福祉人材開発研修センター完成、西成くらし組合発足、ミニFMええかも開局
2. 西成地区の住民参加型まちづくりネットワーク
① 福 祉──社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会・西成区ボランティアバンク・福祉機器の店「チャレンジド」「まざあ」・精神障害者作業所「ポレポレ」・西成くらし組合
② 労 働──生きがい労働事業団・西成陶工「あすなろ」・(合資)西成リフォームセンター・地域就労支援センター「ワークあい」・大阪知的障害者雇用促進建物サービス事業協同組合(エル・チャレンジ)
③ 教 育──わが町西成子育てネットワーク・(財)ヒューマンライツ教育財団・西成まちづくり子ども大学
④ 情 報──西成高度情報化研究会・にしなり電遊教室
⑤ まちづくり──街づくり委員会・(株)ナイス・北津守をよくする会・くらしレディース・長橋住宅改良地区まちづくり協議会・旭住宅改良地区まちづくり協議会
3. 最近のまちづくり事業から-低所得高齢者の支援とまちづくり
大阪市の同和対策事業の高齢者入浴料助成制度(60歳以上の高齢者に17枚の無料入浴券を助成する制度)が今年3月で廃止され、16の浴場と5,000人の高齢者の双方が不安を感じたところから、西成地区街づくり委員会と西成人権協会は、浴場の経営実態調査と高齢者の入浴ニーズ調査を実施し、「西成くらし組合」を結成、500円の出資金と10回で2,600円のお風呂カードを発行、現在3,400人が組合員となった。お風呂カードは、多用途ICカード(Jカード)を活用しており、孤立防止のサービスに広がろうとしている。
これと並行して、地域のまちづくりから生まれた社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会は、社会福祉・医療事業団の「長寿社会基金」の助成を受けて、「都市低所得高齢者の支援方策調査事業」を実施したが、「地縁」「血縁」「職縁」を失い、都市に孤立し、いつも絶望に直面している低所得高齢者が希う「生活縁」の発見に関心を寄せたところである。
西成区ボランティアバンクは、5年前から毎日型食事サービス(配食)を実施、現在では毎日150人ほどの高齢者にサービスを提供している。ヒューマンライツ福祉協会と西成人権協会は、T公営住宅の住戸改善の際、シルバーハウジング事業を導入、生活援助員(ライフサポートアドバイザー)制度に、住宅居住者の出資を組み合わせて、地域独自の「住宅福祉連絡員制度」をスタートさせ、一人ぐらし高齢者等の孤立防止に取り組んでいる。
また、大阪市民間老朽賃貸住宅建替支援事業の助成を受けて、M荘の建替に取り組み、リロケーション住宅の建設や、従前居住者の家賃補助制度(高齢者は差額家賃の2/3を無期限補助)、ヒューマンライツ福祉協会による痴呆性高齢者グループホームの整備などで、低所得高齢者支援に取り組んでいる。
「西成生きがい労働事業団」は現在団員150名、事業高も1億円に近づいてきた。事業内容は公園清掃やタイル製造(地場産業である牛骨粉を使ったもの)などで、収入という面だけでなく、孤立防止やまちづくりへの参加という意味でも効果を上げている。
現在、医療費の改定に対応して、地域の診療所とタイアップした低所得高齢者支援の方策を検討している。また、西成区社会福祉協議会やNPO釜ケ崎支援機構や西成地区街づくり委員会が中心となって「西成区地域福祉研究会」を発足させ、地域福祉計画づくりに取り組んでいる。これらの事業は、厚生労働省の「社会的援護を要する人々への社会福祉のあり方検討会」に触発された。
西成区のまちづくりでは、福祉事業を中心に、社会福祉法人や住宅リフォーム、介護ショップ、食事サービス、生きがい労働事業団、知的障害者雇用促進建物サービス事業協同組合などで、この数年で500人を超える雇用を生み出したことが一番の成果であった。
|