【自主レポート】
佐那河内風力発電所(大川原夢風車)について
徳島県企業局・電力課・施設管理
調査担当係長 松村 俊宏
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1. はじめに
現在、世界のエネルギー需要の大半は化石燃料に依存しており、さらにエネルギー需要は増加し続けていることから、将来のエネルギー資源の安定供給は重要な問題となっています。また、化石燃料の使用に伴い排出される二酸化炭素などの温室効果ガスによる地球温暖化等の諸問題が顕在化しており、温室効果ガスの排出を減らすという観点から化石燃料の消費抑制が求められています。
特に、日本はエネルギー資源に乏しくその多くを海外に依存しており、この様な背景において風力エネルギーや太陽光エネルギーなどの新エネルギーを積極的に導入することは、諸外国にもまして緊急かつ重要な課題となっています。
このような情勢の下、徳島県企業局では新エネルギー導入として風力発電施設の設置を目指し平成9年度より県内における風力開発の可能性を調査し、風力発電の導入に向けた実証実験施設として、平成12年に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との共同研究事業「風力発電フィールドテスト事業」により佐那河内風力発電所建設工事に着手し、平成13年5月に運転を開始しました。
2. 風力発電の概要
(1) 風のエネルギー
風は空気の流れで、風の持つエネルギー「風力エネルギー」は運動エネルギーであり、風を受ける面積と空気の密度と風速の3乗に比例します。特に風速の場合は3乗に比例するため、風速が2倍になると風力エネルギーは8倍となります。
このことから風力エネルギーを活用する上では、少しでも風の強い地点を選ぶことが重要な要件となります。また、一般的に風は地上からの高さが高いほど強くなると言われており、風車の高さをできるだけ高くし、風を受ける面積が大きな風車を選ぶことが有利となります。
(2) 風力発電のしくみ
風力発電では、風の力で風車の羽根(ブレード)を回し、この回転を発電機に伝えて発電を行います。
風車の種類では、佐那河内発電所のようなプロペラ型が効率が高いことから一般的に多く用いられています。また、風の力を有効に利用するために、常に風の方向に向くようにするヨー制御や羽根の角度を変えて出力を制御するピッチ制御などの機能も備えています。
(3) 日本における風力発電の現状
風力発電の導入当初は、電力会社、地方公共団体、国、メーカー等の試験用やデモンストレーション用が中心でした。近年の環境問題への関心の高まり、事業としての条件整備・支援策などが整ったことなどから風力発電開発が急激に伸びています。なお、NEDOの資料によると大型風力発電の導入実績は、1999年末202基、出力合計約8.3万kWが2001年末に450基、出力合計約25万kWとなっています。
3. 佐那河内風力発電所について
(1) 建設までの経緯
① 平成9年度「風力発電立地選定調査」
県内における風力発電開発のための立地調査を行い有望地点を選定。
② 平成9年度~平成10年度「風況調査」
風力発電立地選定調査により選定された地点での1年間の風況調査。
③ 平成11年度「風力開発フィールドテスト事業(システム設計)」
NEDOとの共同研究事業により佐那河内村での風力発電開発に対する調査、検討及び総合的な評価を実施。
④ 平成12年度~平成13年度「風力発電フィールドテスト事業(風車設置)」
NEDOとの共同研究事業により徳島県における風力発電開発の実証実験施設として佐那河内風力発電所の建設に着手し、平成13年5月より運用を開始。
(2) 運転実績
佐那河内風力発電所で発電した電力は四国電力株式会社へ供給しており、計画と平成13年度に供給した電力量は次のとおりとなっています。
なお、CO2削減量(炭素換算)とは風車の発電した電力を石油火力発電所で発電した場合と比べた時の二酸化炭素の排出の削減量を表します。
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電力量
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CO2削減量
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備 考
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発電(供給)計画 |
66万kWh
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129t
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平成13年度実績 |
51万kWh
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98t
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試験発電を含む。※注① |
注①:4月は工事中で16日より試験調整発電を開始、5月9日より運転開始。
4. まとめ
風力発電所は自然の風の力を利用しているため本当に「風まかせ」の発電所ですが、風という再生可能なエネルギーを利用し、地球温暖化の原因となる二酸化炭素などの環境汚染物質の排出がないクリーンな発電システムです。
佐那河内風力発電所は市内からも近距離であることから風力発電所をとおして県民のエネルギー・環境保全に対する意識が高まることを期待しています。
【参考文献】
新エネルギー・産業技術総合開発機構「新エネルギーガイドブック」
(参考)
風力発電システムの概要
項 目
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諸 元
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備 考
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発電所位置 |
徳島県名東郡佐那河内村 |
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発電所建設地点標高(m) |
EL.958.00 |
(基礎上面標高) |
風車機種 |
E26/280kW
ENERCON社製 |
(ドイツ) |
発
電
施
設
概
要 |
風
車
形
式 |
回転軸方向 |
水平軸・右回り |
(時計方向) |
回転翼型式 |
プロペラ式 |
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回転翼枚数 |
3枚 |
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回転翼位置 |
アップウィンド式 |
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定格出力(kW) |
280
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定格風速(m/s) |
14
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カットイン風速(m/s) |
2.5
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カットアウト風速(m/s) |
25.0
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設計上の耐風速(m/s) |
70.0
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IECクラスⅠ |
ローター回転数(rpm) |
18~63
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可変速 |
ローター直径(m) |
26.0
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ハブ高さ(m) |
36.0
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翼先端最高地上高さ(m) |
49.0
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タワー型式(材質) |
分割式チューブラタワー |
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回転翼材質 |
GFRP(ガラス繊維強化エポキシレジン) |
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ブレードによる出力制御方式 |
ピッチ制御 |
電動駆動方式 |
発電機型式 |
多極同期発電機+逆変換装置 |
60Hz、400V |
主要計測項目 |
風速、発電機出力 |
現地表示有 |
風向、電力量、電圧、運転状況 |
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