1. 『ピースおおさか』にかけられた攻撃とその背景
『ピースおおさか』の展示をめぐって、自民党・右翼による攻撃が激化したのは1996年からである。
この年には長崎原爆資料館の改装に伴う加害展示、とくに、南京大虐殺の写真の撤去を求める攻撃に端を発して、全国の自治体が設置する平和博物館の展示に対する攻撃が執拗に行われた。
1995年の村山内閣時の「戦後50年の国会決議」を受け、市民運動や労働組合の真実に根ざした歴史の継承と、戦後補償を求める取り組みが活発となった。
このことは、自民党タカ派・右翼にとって看過できないものであり、いわゆる自由主義史観グループの活動が台頭してきた背景と重なる。
1998年3月には、自民党が大阪府議会で「教科書からの従軍慰安婦の記述削除」と「偏向展示を続ける『ピースおおさか』への補助金カット」の意見書提出・決議の動きを加速化した。
このときは、大阪の市民運動を中心に、労働組合も危機感を持って取り組みを強化し、自民党・右翼の動きを止めることができた。
しかし、展示内容の見直しについては一部行わざるを得なかったことも事実である。
この過程で、「ピースおおさか市民ネットワーク」が結成され、以降、この団体を中心に、『ピースおおさか』を守り、設置理念を継承発展させていく取り組みとして、『ピースおおさか』講堂を使用しての集会・イベントを集中して行ってきた。
大阪市職員労働組合・大阪市従業員労働組合(以下:市職・市従)も『ピースおおさか団体利用券』の購入や、講堂を使っての反戦・反核の集会等を開催してきた。
しかし、その後も自民党大阪府会議員をバックにした「戦争資料の偏向を正す会」が、執拗に『ピースおおさか』の運営に介入してきた。
2. 『ピースおおさか』存亡の危機~右翼との攻防
1999年3月21日には、映画「プライド」の上映を、こともあろうに『ピースおおさか』で行うことを求めてきたのだ。
映画「プライド」は、極東国際軍事裁判(東京裁判)を舞台に、戦争犯罪者として処刑された東條英機こそが「日本民族のプライドを守った」と描き、アジア・太平洋戦争を日本の「自衛戦争」「正義の戦争」と主張するなど、歴史の捏造と侵略戦争を美化した許しがたい作品である。
『ピースおおさか』でのこの映画の上映は『ピースおおさか』の本来の設置理念を歪曲し、戦争に反対し戦争責任を追及する多くの市民団体の運動を否定しようとする意図をもつものであり、右翼の執拗な攻撃が、理事長をはじめ「ピースおおさか事務局」のメンバーにかけられる中で、「ピースおおさか市民ネットワーク」をはじめとする市民団体の抗議にも関わらず、上映会は強行された。
今は亡きジャーナリストの黒田清氏が、“ピンチおおさか”と題して、この件を次のようにコメントした。
「このような戦争肯定の映画が、平和の砦である『ピースおおさか』で上映されたのはなぜか。『ピースおおさか』によると、この映画の上映を申請してきたのは『ピースおおさか』の展示物などに対して偏向していると批判してきた『戦争資料の偏向展示を正す会』である。さる2月11日の建国記念日に、講堂の使用許可と後援を求める形で企画申請してきた。それに対して、『ピースおおさか』は後援は断ったが、「映画の上映を通して平和の尊さを考える」という開催趣旨に反対できず使用を認めたという。
平和のための設置理念が、いわばなし崩しの状態にあるのではないか。はじめは堂々と、戦争の史実を展示してきたが、右派の攻撃によって徐々に設立の理念は食いつぶされ、とうとう戦犯賛美、戦争賛美の映画を上映するようになってしまったわけである。しかも、『ピースおおさか』では、現在の管理規定ではこの種の申請は断れないという。
それでは『ピースおおさか』がやるべきことは1つ。こういう映画が上映できないよう管理規定を変えることだ。それでなくては「ピース」の名が泣く。(1999年3月)」
黒田氏の憂慮が、現実のものとして我々の前に現れた。
「戦争資料の偏向展示を正す会」が、2000年1月23日に『ピースおおさか』の講堂使用許可申請を行ってきたのである。
講演集会の内容は「20世紀最大のウソ~『南京大虐殺』の徹底検証」(講師:東中野修道亜細亜大学教授)で、講演に先立って当時の南京特務機関員であった丸山進の証言ビデオを上映するというものだった。(※当初「正す会」が使用許可申請を提出した1999年11月23日には、東中野教授の講演ビデオの上映会を行うということであったが、12月に講演集会に切り替えてきた。)
「ピースおおさか市民ネットワーク」をはじめ、学者、市民団体が「ピースおおさか事務局」との話し合いを持ったのは12月5日だった。
この段階では、まだ正式に使用許可を行っていなかったが、「『ピースおおさか』内にある講堂や会議室の企画の内容は主催者が責任を持つもので、館として内容に責任を負うものではない。」「また、公序良俗に反するなどの反社会的な団体に使用させないという排除規定が館の利用規定にあるが、『正す会』はそれに抵触しない」という答弁であり、使用許可の方向で進んでいることが感じ取れた。
◆「20世紀最大のウソ~『南京大虐殺』の徹底検証」開催にいたる経過
◇12月15日
「ピースおおさか市民ネット」が呼びかけた要請書を提出し、「正す会」への講堂使用の件についても話し合う。
◇12月19日
17日に「正す会」の講堂使用許可決定を受けて、事情説明を求め話し合う。
☆「ピース事務局」の説明内容
先の「プライド」上映会の際と違って、今回は、大阪府、大阪市とも協議した。そこで、「ピースおおさか」大阪府、市とで「南京虐殺」に対する認識を「ピースおおさかB展示室(15年戦争)」での展示内容で確認した。また、石原東京都知事が、「南京虐殺」について発言した際には、野中官房長官(当時)が政府としての立場で石原発言を非難する内容の発言をしている。
申請団体については、好意的ではないが、開催趣旨からは異論は出せない。管理規定から判断して、不許可にする事はできない。法的な問題として、使用目的の制限に該当しにくい。公的施設(中央公会堂、市民会館など)と財団の施設との違いはなく過去の判例に照らし合わせ、不許可にしても裁判になると負けると考えられる。
示された判例は、「公会堂使用許可の取り消し(最高裁1979年7月5日)」。その内容は、1969年に「矢田事件」での共産党が対抗手段として、中央公会堂で決起集会を企画し、大阪市教育委員会に使用許可を申請、一度は許可されたが、その後不許可となり裁判となった。最高裁で、使用許可の取り消しが違法との判断がなされた。
主な理由として
1. 地方自治法244条2項「普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設利用することを拒んではならない」
2. 憲法21条の言論の自由の条項
■12月11日
国際市民フォーラム・・・・右翼の宣伝カー約40台
◇12月20日
「南京大虐殺」に批判的集会 「断れぬ」と使用許可(朝日新聞報道)
新聞報道で初めて、「20世紀最大のウソ 南京大虐殺の徹底検証」というタイトルで東中野本人が講演し、元南京特務機関員の丸山進の証言ビデオを上映する事になっていることがわかった。
◇年末に南京を訪問したメンバーが関係各方面に事情説明。
◇12月27日
風早館長が、新任の挨拶のため中国在大阪総領事館を訪問。
館長からは東中野講演会については触れず、総領事側から館長に対して質問。
◇1月7日
総領事が、大阪府・大阪市を訪問し、抗議の申し入れ。
◇1月12日
総領事が、大阪市助役に抗議の申し入れ。13日に朝日新聞が報道。
中国在大阪総領事、「中日の友好関係に水を差す行為で、中国政府として残念だ」と申し入れ。
◇1月13日
再度、抗議の申し入れ
◇1月17日
大阪市(教育委員会、社会教育課主幹)に申し入れ。
● 大阪、京都、兵庫の華僑総会が大阪市、大阪府、「ピース」へ申し入れ。
● 午後、中国在大阪総領事館が記者会見。 |
このように「ピースおおさか市民ネットワーク」をはじめ、平和を希求する市民・労働者のたたかいが、右翼との直接対峙も含め果敢に取り組まれた。
また、中国においても大きく報道され、日本の右翼勢力による南京大虐殺否定集会に対する抗議の運動が高まってきた。
◆ 中国における報道
日本の右翼勢力、「南京大虐殺」検証集会を開催
日本の大阪府と大阪市役所はこのほど、大阪国際平和センターにおいて日本の右翼勢力よる「20世紀最大のうそ-『南京大虐穀』徹底検証集会」の開催を認めた。この出来事は、中国人民および日本の友好的な人々から、非難と強烈な抗議を受けている。
中国侵略日本軍南京大虐殺遭難同胞記念館および南京大虐殺史研究会は13日、それぞれ日本の大阪府と大阪市役所、大阪国際平和センターに向け、抗議書を提出した。江蘇省と南京市の史学界、法学界、マスコミ・ジャーナリズムおよび青少年は、日本右翼勢力による大阪集会を糾弾した。
中国侵略日本軍南京大虐殺遭難同胞記念館の朱成山館長によると、23日に行なわれるこの反発的な集会は、「日本世論の会」などの右翼組織が創立した「戦争資料の偏向を是正する展示会」が主催するもので、日本の右翼勢力が歴史に対して行なう、総攻撃の宣戦布告である。
このほど南京を訪問した日本の友人である松岡環女史は、南京大虐殺の真相は既に明らかになっており、この侵略戦略の罪悪行為を否認、覆い隠すような行動は、不可能であると語っている。
「人民日報」2000年1月14日4面 |
日中友好協会の責任者は談話を発表し、南京大虐殺の行為を否定しようと企むことを厳しく非難
日中友好協会全国本部の理事長村岡久平氏は14日、談話を発表して、日本の右翼が集会を組織して、極力に南京大虐殺の行為を否定しようと企むことに対し強い憤慨と非難を表し、また次のように語った。
新年の始め、南京大虐殺という厳粛な歴史事実を「20世紀の最大のうそ」として否定するというまもなく大阪で発生する暴挙に対して、強い慎慨を表す。近代に、日本軍国主義は中国を侵略して、大量の凶暴な行為を犯したことは、国際的に公認された事実であり、誰も否定することはできない。
このような集会を開くのは、疑いなく中国人民の感情を傷つけて、両国関係の基礎としての『日中共同声明』の精神を踏みにじり、日中両国間の信頼関係に損害をもたらすことになる。実に残念なことである。
氏は強烈に当局が直ちにこのような集会に会場を提供することを取り消すよう要求し、われわれは日中両国友好に損害をもたらす行為に対し、警備しなければならないと語った。
「人民日報」2000年1月15日3面
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南京史学界、日本の右翼勢力による南京大虐殺否定集会に強く抗議
16日午後、南京歴史学界の著名な専門家や学者、約30人が、南京にて集会を開き、日本の右翼勢力が大阪国際平和センターで開催している「20世紀最大のうそ-『南京大虐殺』徹底検証集会」に、強く抗議した。参加した専門家らは、以下のように指摘した。
大阪府および大阪市がこのような反発的集会を「大阪国際平和センター」にて開催することを許したという事実は、国際平和に対する冒とくであり、中国人民および世界平和を愛する人々に対する、公然たる挑戦である。日本国民を含む、平和を愛する全ての人々にとって、容認できないことである。
南京大虐殺史研究会の孫宅巍副会長兼研究員は、周知のように、南京大虐殺は20世紀の人類の歴史上、最も集中的、最も暗黒の、最も悲惨な事件であり、歴史を改ざんしようとする符為は、全て徒労に終わるだろうと語った。中国侵略日本軍南京大虐殺遭難同胞記念館の朱成山館長は、私は何度も日本を訪れたことがあるが、日本国民は、平和を愛する人々であることを自ら感じ取ったと語った。江蘇省社会料学関係者連合会の廖進副主席は、南京大虐殺には確実な証拠があり、南京の30万人の人骨、国際法廷の裁判、幸いに生き残った17百人を超える人々などは、いずれも南京大虐殺の証人であると指摘した。
また中国侵略日本軍南京大虐殺遭難同胞記念館、南京大虐殺史研究会は16日、地元のメディアにおいて、大阪国際平和センター宛および大阪府と大阪市政府に宛てた2通の抗議文書を公開した。
その他の報道によると、17日以降、江蘇省および南京市法曹界、新聞出版界、教育界は、それぞれ集会を開き、日本右翼勢力が南京大虐殺の歴史を改ざんしようと企む反発的な行為を糾弾し、抗議した。南京市の大学生と中・高生らは、更に糾弾のための署名活動を行なう。この他、南京市ではまた、南京大虐殺の生存者、被害者の遺族と南京各界の人々が、日本の右翼勢力の大阪集会を批判するための糾弾大会を開く予定である。
「人民日報」2000年1月17日4面 |
南京の大学生、日本右翼勢力による南京大虐殺否定論に強く抗議
南京大学、河海大学、南京師範大学など南京の大学生らはここ連日、集会を開き、南京大虐殺という歴史的事実を否定しようとする、日本の右翼勢力による反発的ででたらめな理論に対し強い抗議を行ない、非難した。
写真は、17日、幅1メートル、長さ数十メートルの横断幕に署名する南京大学の学生ら。横断幕には、「南京大虐殺は明確な事実であり、動かし難く、悲惨な歴史は決して抹殺してはならない」と書かれている。
「人民日報」2000年1月18日4面 |
日本滞在の華僑、南京大虐殺否定論に抗議
日本関西地区の華僑団体は17日、日本大阪府と市役所に抗議の文書を手渡し、大阪府と大阪市役所が、日本の右翼勢力が大阪国際平和センターにおいて南京大虐殺を否定する集会の開催を認めたことについて、強烈な反対を表明した。
抗議文書によると、歴史的事実を歪曲し、中国人民を愚弄するこの企みは、中日友好を破壊し、中日関係を遠ざけるものであり、その悪質な目的は次の通りである。
第一、中国人民の感情を著しく傷つけ、長期間積み重ねてきた中日両国間の信頼関係を根本から動揺させ、平和と友好を追求する中日両国民に対する重大な挑戦である。
第二、1972年に、中日両国が締結した「中日共同声明」の精神をひどく損害している。
第三、日本政府は、「サンフランシスコ講話条約」第11条において、極東軍事法廷の判決を受け入れることを明確に表明した。今回の会合の意図は、この条約の主旨に違反するものである。
第四、この行動は大阪府、市の基本的政策と異なっており、大阪国際平和センターの理念から逸脱している。 団伊玖磨・日本中国文化交流協会会長は17日、日本右翼勢力による南京大虐殺を否定する集会を非難し、次のように述べた。
現在の日中友好関係が、日本による過去の中国侵略に対する真剣な反省の上に成り立っていることは、周知の事実である。日本が、中国人民に対して犯した罪悪、南京大虐殺を否定し、延いては日本の中国侵略を否定しようとする言動は、「日中共同声明」の精神を踏みにじるものであり、私たちが長い歳月をかけて守り育ててきた日中友好関係を根底から破壊するものであり、決して容認できるものではない。
このような邪悪な事柄の出現が、昨今の日本の右傾的風潮によるものであることは、見過ごすことができない、由々しい事態である。私たちは、警戒心を高め、歴史の教訓を正しく次世代に伝えていくという努力を、一層強める決意である。
「人民日報」2000年1月18日6面 |
南京大虐殺生存者の怒り
南京大虐殺の生存者および被害者の遺族代表など約30人が19日、南京市江東門にある侵華日本軍南京大虐殺遭難同胞記念館にて集会を催し、中国に侵入した日本軍が繰り広げた南京大虐殺という血塗られた暴行について、激しく憤り、告発を行ない、また日本の右翼勢力が、南京大虐殺という歴史上の事実を抹殺しようと企てていることに、強く反発した。
2000年1月20日 |
河野洋平外相、「侵略について反省する日本の立場は不変」
日本の河野洋平外務大臣は20日、鄭必堅中国共産党中央党校常務副校長と会見を行なった際、遠くない過去の一時期に発生した侵略戦争に対して、反省を表すという日本政府の立場は変わっていないと重ねて言明し、次のように述ベた。
1995年に村山首相が発表した談話の精神を堅持するという日本政府の立場は、少しも変わっていない。
日中関係は、日本にとって非常に重要な関係であり、現在両国が各分野で行なっている協力関係は日増しに密接になっており、国民間の相互理解も絶えず深まっている。長期にわたって日中友好事業に取り組み、関心を寄せる政治家として、日中関係の発展について深く喜んでいる。
「人民日報」2000年1月21日6面 |
南京の人々、日本の右翼勢力による南京大虐殺否定を激しく非難
南京の史学界、法学界、教育界、マスコミは最近、連続して集会を開き、日本の右翼勢力が、南京大虐殺の否定を企てる、反中国的行為に反駁している。
南京大虐殺史研究会、南京大学、江蘇省社会科学院、中国第2歴史書類保存館の専門家は、集会の席で、大量の史実と証拠を列挙し、以下のように述べた。
南京大虐殺は、20世紀に発生した最も野蛮で、最も暗い、大規模かつ凄惨な出来事であり、日本の軍国主義の凶暴かつ残虐な、恥を知らない本質が集中的に暴露されたものである。日本の右翼勢力が画策している、歴史の真相を歪曲しようとする「大阪集会」の本質は、南京大虐殺を否定することを企み、全面的に中国侵略の歴史を否定し、日本軍国主義の魂を呼び戻そうとするものである。
江蘇省法学会、江蘇省弁護士協会、南京公証処の専門家は、集会の席で、南京大虐殺は、極東国際軍事法廷および中国戦犯判決軍事法廷が審判した歴史的事件であると強調した。この災難において、30万もの犠牲者の累々たる遺骨、生存者と外国人の証言および大量の書類や史料は、南京大虐殺という事実の抹殺を許さない、実証である。
南京の教育界、マスコミの専門家は、日本の右翼勢力が画策している、南京大虐殺を否定するための大阪集会は、独立した事件ではないと考えている。1980年代に起きた日本の文部省の「教科書改訂事件」から1990年代に起きた「東史郎事件」に至るまで、日本の右翼勢力は常に、中国侵略という罪ある行為を覆そうと企んでいる。
専門家らは、南京大虐殺の歴史を宣伝し、研究を更に強化し、全世界的範囲において、日本の侵略者らの反発的本質を一層深く暴き出し、平和を呼びかけ、戦争に反対する強大な世界的世論を形成する必要があると、一致して認めている。
「人民日報」2000年1月21日4面 |
カナダの中国系および日系社団など、日本右翼団体による戦争犯罪否定を非難
カナダに住む中国系、日系、ユダヤ系などの社会団体はこのほど、バンクーバーにおいて、「南京大虐殺、歴史を鏡として新ミレニアムに邁進する」と題されたシンポジウムが開催された。
カナダ抗日戦争史実擁護会の列国遠会長、バンクーバー地区日系カナダ人協会人権委員会の鹿毛達雄代表およびバンクーバー市議員や各界の学者など150人を超える人々がシンポジウムに出席した。
参加者らは、以下のように表明した。
南京大虐殺は、日本軍国主義が中国人民を殺害した、数々の犯罪における典型的な犯罪である。証拠は確実なものであるが、日本右翼団体および政府の一部には、歴史を改ざんし、侵略という犯罪を覆い隠そうとする動きがある。このためカナダ政府は、カナダ政府には人々を教育し、日本軍国主義が第二次世界大戦期間中に、アジアの各国民に対して犯した極めて大きな罪を教える責任がある。
また日本政府および国民人民に対し、歴史を直視し、日本軍の暴行について法的および道徳的責任を負っており、アジア各国の人々に心からの謝罪と賠償を行なうことを促す責任がある。
「人民日報」2000年1月22日3面 |
ピースおおさか(大阪国際平和センター)で開催されようとしている集会
「20世紀最大のウソ 南京大虐殺の徹底検証」なるものに関する
日中友好協会全国本部 村岡久平理事長の談話
新しい年が始まった矢先、南京大虐殺という厳粛な歴史的事実を「20世紀最大のウソ」として否定しようとする暴挙が大阪で行われようとしている動きに、激しい憤りを覚えます。
近代において、日本軍国主義が中国を侵略し、大量の残虐行為を行ったことは、国際的に公知の事実であり、誰も否定することはできません。
この集会の開催は、明らかに中国人民の感情を著しく傷つけるものであり、両国関係の基礎である「日中共同声明」の精神を踏みにじり、日中両国間の信頼関係をも損なわせようとするものであって、極めて遺憾であります。
21世紀を目前にして、両国最高首脳が宣言した友好協力パートナーシップの具体化に向けて、両国が官民あげて邁進しようとしているとき、このような動きは時代の流れに逆行するものであり、断じて容認できません。この白々しき集会への会場提供を直ちに取り消すことを関係当局に強く要求するものであります。
今後も、日中両国の友好を損なう動きに対して、私たちは厳しい警戒の目を注いでいくものであります。
平成12年1月14日
日中友好協会全国本部理事長 村岡久平 |
3. 真実に根ざした歴史の継承と『ピースおおさか』再生をめざして
1月23日、どしゃ降りの雨の中、「ピースおおさか市民ネットワーク」、「南京大虐殺60ヶ年全国連絡会」の呼びかけで、華僑総会、中国人留学生をはじめ250人の市民・労働者が参加し、講演会参加者が来館する1時頃から、「南京大虐殺は真実だ!」「南京市民に謝罪せよ!」などのプラカードを掲げて無言の抗議行動を展開した。
『ピースおおさか』入口には、主催者の会場防衛隊と称した右翼が陣取り、ヤジや罵声を飛ばし、さかんに挑発行動を行ってきたが、最後まで無言の抗議行動を貫徹した。
中国における連日の抗議の声と、この日の在日中国人、日本の市民・労働者との共同したたたかいは、「正す会」や講演会参加者には驚異となったと思う。
平和の発信センターである『ピースおおさか』で、このような集会が行われたことは、『ピースおおさか』にとって設置理念に逆行する行為であり、絶対に許すことのできない暴挙である。
「ピースおおさか市民ネットワーク」をはじめとした市民・労働者は、4月8日に『ピースおおさか』において「南京大虐殺が日本に問いかけるもの~『ピースおおさか』の姿勢を糾す」と題した集会を開催し、市職・市従も参加した。
『ピースおおさか』は、今年5月に「講堂等の施設利用のあり方検討委員会」を設けて検討を行い、その報告に基づいて8月24日の臨時理事会において、「主体的で、より責任を持った情報発信を行う観点からの館の活用を図るため、当面、講堂などの施設貸し出しを行わず、自主事業の積極的な展開を図る」ことを確認し、今後、博物館機能を一層、整備・拡充するためのリニューアルが検討されている。
「講堂等の施設利用のあり方検討委員会」報告
はじめに
当委員会は、講堂等の施設利用のあり方について、「戦争や平和に関する幅広い府民の意見交換の場としての機能を念頭におき、設置理念を踏まえ諸外国との友好の一層の促進を図るという観点にも意を配り、どのような対応が最も望ましいかを検討する」ため、これまで多面的、精力的に議論を行ってきた。
主な検討項目は、次のとおりである。
● ピースおおさかの設置理念、寄附行為、管理規程
● 特別展示室、講堂、会議室の利用形態
● 大阪平和ビジョン
● 平和資料館(仮称)基本計画
● 施設使用許可に関する最高裁判例
● 市民会館等公共施設及び類似施設の条例、規則、管理規程
● 博物館法 等
この度、ここに意見の集約を終え、理事会に報告するものである。
設立趣旨
(財)大阪国際平和センター(ピースおおさか)は、1981年に設置された大阪府平和祈念戦争資科室を継承し、1987年の大阪平和ビジョンの中で「内外の平和に関する情報の収集、提供や調査、研究等の事業を行う総合的な機能をもつ平和資料館(仮称)を設置する」と謳われ、1988年6月に大阪府と大阪市が策定した「平和資料館(仮称)基本計画」において、その具体像が示された。
この基本計画では、「平和希求の原点となる」ピースおおさかの設立の趣旨と目的が大きく2つ記載されている。
1. 世界平和への大阪の貢献………平和の首都として
2. 戦争の悲惨さを次の世代に伝える………歴史の証言の場として
これらの趣旨は、すべて設置理念へと引き継がれている。
1989年、「戦争と平和に関する情報・資料の収集・保存・展示等を図るとともに、平和問題に関する調査研究・学習・普及等を図ることによって、戦争の悲惨さを次の世代に伝え、平和の尊さを訴え、平和の首都大阪の実現をめざして、世界平和に貢献する」(寄附行為第3条)ことを目的に、大阪府と大阪市の出捐によりピースおおさかが設立された。
施設の概況
1991年に開館し、入館者は延べ75万人を超え、今年度中には80万人に達する見込みであり、本年3月末現在で28,820点の収蔵品を保有するに至っている。
施設としては、3つの常設展示室・図書室・映像コーナーと常設展示室の附帯施設としての特別展示室・講堂・会議室を有している。特に、特別展示室においては常設展示を補充するため、時宜を得た企画展を開催し、講堂では展示の理解を深めるための映画上映や見学者のガイダンスを行うとともに、こうした自主事業の運営に支障のない限りにおいて、府民・市民のために貸出を行ってきた。
展示の特長
ピースおおさかの展示の特長は、事実をもって語らせることを基本姿勢として、第二次世界大戦で廃墟と化した大阪の被害や惨状に加え、「15年戦争において、戦場となった中国をはじめアジア・大平洋地域の人々、また植民地下の朝鮮・台湾の人々にも多大な危害を与えたことを忘れず」(設置理念)、戦争を被害と加害の両面からとらえている点にある。1998年には、第3回世界平和博物館会議を開催するなど、戦争の悲惨さと平和の尊さを訴え続け、現在、国内外から高い評価を得ているところである。
1月23日の集会
2000年1月23日の集会は、その申請に際しての開催趣旨としては「東中野修道亜細亜大学教授等が長年の歳月をかけた研究成果『南京大虐殺の徹底検証』を学び平和の尊さを考える」というものであり、当館の管理規程に基づき講堂の使用を許可した。
我が国が戦争への道を辿った過去の歴史に照らしても、集会・言論等の表現の自由は最大限尊重しなければならないと考える。
南京大虐殺についてのピースおおさかの基本認識は、B展示室における展示によって示しているところであるが、結果的には「『20世紀最大のウソ 南京大虐殺の徹底検証』ビデオ上映」という行事名の集会がピースおおさかで実施されたことをもって、ピースおおさかの事業と同一視され、或いはピースおおさかが当該集会の内容を容認したと受け取られるなど、様々な誤解が生じたものである。
ありかたに関する基本的考え方
今回の検討に当たっては、単なる貸出の可否の検討ではなく、「大阪府民・市民と国内外の人々との間の相互交流を深めることを通じて、大阪が世界の平和と繁栄に積極的に貢献する」という設置理念の結びの文言がもつ意味を再認識した上で、設立当初の原点に立ち返ったピースおおさかのあり方の検討から始めた。
我々は、基本計画及び設置理念等を踏まえ議論を重ねた結果、ピースおおさかが、名実ともに「大阪における平和の発進基地」となるために最も重視すべきことは、今以上に、主体的に、より責任を持って、戦争による被害と平和の尊さに関する情報発信を行うことにあるとの結論を得た。
このためには、展示をメインとした自主事業の充実、調査研究活動の強化や収蔵品の拡充・調査・活用など、博物館機能の充実が不可欠である。また、来るべき21世紀に向かって、未整備のインターネットやDVD、ハイビジョン等、これからの博物館機能の一部を担う最新情報システムを活用した国内外への情報発信・展示の充実にも力を注ぐべきである。
講堂等の利用
講堂等諸施設についても、以上述べてきた、主体的に、より責任を持った情報発信を行うという観点からの活用を図るため、当面、貸出を行わず、自主事業の積極的な展開を図ることとする。
具体的には、特別展示室においては、これまでどおり常設展示を補完する企画展を開催することとし、講堂では、これまでの映画上映や見学者のガイダンスに加え、①目録作成に向けた収蔵品の整理とともに常設的な収蔵品の展示を行い、②ガイダンス機能を充実させる意味から常設展示・企画展の補完のため、映画・ビデオの定時上映及び講演・シンポジウム等の催しを行うこととする。
なお、開館から10年を経て、現在、博物館機能を一層、整備・拡充するためのリニューアルが検討されている。講堂等の諸施設については、狭いスペースに多くの情報が詰まっている展示室の一部移転や平和追悼モニュメント建設も含め、リニューアル作業の中で、その利用形態を再検討することか望ましい。
以 上 |
今後、『ピースおおさか』の本来の役割を再度、確立・発展させるため、労働組合としてのこの間の取り組みの遅れを真摯に受け止め、市民団体とも連携を図りながら取り組みを強化したい。
また、新ガイドライン関連法が制定され、自治体に対して戦争協力の強制が予想されるなか、大阪市における平和施策を明確にさせていく取り組みを強化していく必要がある。
そのひとつに、歴史事実の歪曲を許さず、大阪港の再軍事利用に反対する取り組みの一環として、「大阪港における中国人強制連行」の事実の掘り起こしと、亡くなった方々の追悼碑の建立を求めて、現在、活動をされている「大阪中国人強制連行受難者追悼実行委員会」などの市民団体の運動と連携し取り組んでいきたい。
また、大阪市には在日韓国・朝鮮人をはじめ、多くの定住外国人が居住しており、その歴史的な経過を踏まえ、今後の共生社会実現に向けた施策を進めることが、行政の役割として求められている。
1つ1つの問題の解決を図りつつ、「過去を改め、現在を問い、未来に向かう」ための『平和ビジョン』の確立にむけて運動を推進していきたい。
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