はじめに
今回、活動レポートを作成したのは、元気のない大阪市職環境保健支部(※1)という組織を活性化することができないかということが発端である。
組織が活性化しないのは、いろいろなたたかいや運動を重ねてきた結果、魅力がなくなったからである。それでも組織として体裁を整えるため、14の職場があるので、14人の執行部を作るために、不公平感が出ないように議論を重ね、職場から1人を選出するシステムが選択され、2007年度からスタートした。活性化に向けて健康づくりをポイントにした取り組みを明確にすることや、組合員同士の交流もなくなっているので、人と人との流れを作ることからはじめた。
それまで活動をすること自体が停滞していたこともあって、春闘決起集会、中央委員会、年次大会など従来の労働組合の活動を行いながら、2008年度から実施される特定健康診断など保健・医療・福祉の制度がどのように変化していくのか、また、どこを目指しているのかといった課題を選択して、公衆衛生集会という名目で開催した。参加者については、支部の組合員を中心に他の支部の医療職の方も参加できるセミナー形式で実施した。(2008年5月「変革の今、改めて公衆衛生について考える」:講演、高知県保健所長)
1. 支部活動の選択
支部活動の閉塞感は、自治体にある労働組合の基本的な考え方である「すべてを網羅した取り組み」を続けることができなくなったことが大きな原因ではないかと気がついた。
春闘、人勧などの一連の賃金決定サイクルの取り組みや、要員闘争、政策闘争、原発、狭山などの課題に加えて、公衆衛生闘争などを議案書に掲載していた取り組みが十分にできない現実を直視して、2008年3月に2年ぶりに開催した支部の年次大会で、支部予算の確定や、健康づくりの取り組みと組合員同士の交流を軸とした方針を採択した。
2008年6月のセミナーで「保健福祉センターなどの行政機関が、中立性や公平性を活用することによって、地域におけるより精度の高い情報発信基地になる」というこれまでにない発想と、環境保健支部を「NPO」と位置づけると仮定すれば、「情報発信基地」的な役割も可能かもしれないが、イメージとしては具体的なものには至らなかった。
2. すこやかパートナー
大阪市では、2008年度から「すこやかパートナー制度」(※2)を、企業、団体などを中心に社会全体で健康づくりの機運を盛り上げていくことを目指していくことが重要との認識の下に創設された制度がある。
支部としても行政との「連携」ということをイメージして取り組みを進めていたのだが、「連携」よりも進んだ感のある「すこやかパートナー」という健康づくりを基盤に活動している団体と有機的に結びつける場があることに魅力を感じた。
すこやかパートナーへの登録については、支部という労働組合が行政に登録するという初めてのことでもあり、具体的な必要性(メリット)があるのかが、組合員の理解を得るキーになった。現状の支部活動を活性化できていないことは共有化されている。活性化するために支部活動を、シンプルにして「健康づくり」にこだわって取り組むことと、「市民参加」という大きな命題を検討することで、一定の合意を得ることができ、2009年3月に登録申請を行い4月に登録された。(※3)
すこやか大阪シンボルマーク
「いっぽくん」
|
|
支部が「すこやかパートナー」に登録されたことにより、次のステップである広範な健康づくりというジャンルに、「まず組合員、そして市民がここによってみたい」という気分になるような【健康づくりの分野でブランド】をめざす、という夢物語を持ってスタートした。
(1) すこやかパートナー(1)……これまでの運動を踏襲
これからは、未知の領域になるので、緊張感と期待感を持ちながら、まず、はじめの一歩としてすこやかパートナーの交流会から進めた。
パートナーの交流として、事務局よりカゴメ(株)大阪支店さんを紹介された。打ち合わせを行い、カゴメ㈱大阪支店が主催する「健康づくりのセミナー」という場をつうじて交流ができるようになった。
1年目(2009年)は、6月1日に支部健康づくり広場を開催し、支部の組合員30人が集まって、落語家による笑いと健康、カゴメ㈱大阪支店の健康応援セミナー、健康運動指導士セミナーの3つの柱を軸に、土曜日の昼から開催した。
まだ、組合的な発想が軸であったため、参加した組合員と作り上げていくセミナーを作ることより、参加させることに主眼を置いている運動になっており、加えて内容的にも盛りだくさんになってしまって、それぞれの課題を消化することも難しい状況だった。
しかしながら、カゴメ㈱大阪支店の健康応援セミナーは、乳酸菌飲料やトマトといった媒体を使いながら、スライドを見る、自社製品を試飲する、自社製品をお土産にする、という行動力溢れるセミナーで、内容も初めての経験だったこともあり、特にお土産を貰って帰るというのも好評だった。
それは、公務員労働組合としては「厚遇」「便宜供与」などといったきわどい言葉に抵触するのではないかと思うところだったが、逆に、そのことを通じて家という単位や地域という単位に、「こういう健康応援セミナーがあったで」と話すことも含めた戦略だと感じ、すこやかパートナー同士の交流を体験できたことは貴重な経験となった。
(2) すこやかパートナー(2)……戦略:健康な人を応援する
すこやかラン(スタート直後)
|
|
2010年1月23日(土)に、環境保健支部主催の「すこやか健康ジョギング・10kmラン」を大阪市東住吉区にある長居公園の第2陸上競技場と周回道路を使って開催した。
開催にあたっては、『すこやかパートナーつうしん』(情報誌)をつうじて、パートナーを募集したところ、カゴメ㈱大阪支店さん、JR西日本のランナーズプラスさんから問い合わせがあり、開催の趣旨を理解していただき、パートナー同士の連携を図ってきたところである。
大会の募集は、支部の機関紙、支部のホームページ、口コミを通じて行ったところ、大阪市の職員とその家族50人が参加した。
参加者50人は少ない感じがするが、運営する側の経験がなかったので、ぎりぎりの感じで運営していたことを思えば、身の丈にあった大会だったと思う。この大会は、参加した方からの評価を取っていないので、次回からはアンケートなどを実施すべきと感じた。
すこやかパートナーの紹介は、自社製品の紹介を中心にすることにして、カゴメ㈱大阪支店さんの健康飲料の配付、JR西日本のランナーズプラスさんの大阪城公園にあるランナーのための更衣スペースの割引券の配付を行った。
大会開催中に、「なんでこんなん貰えるん」という疑問に答えるために、すこやかパートナーの紹介などを行えるブースを設置してみるのも方法だと感じ、双方向の「協働」する仕組みの難しさも感じた。ただ、参加者からは、カゴメさんの健康飲料や割引券を通じて大阪城公園の近くにこんな施設があるのかなど、これまで知識として知らなかった健康づくりを紹介することができたことは収穫だった。
(3) すこやかパートナー(3)……行政との協働「ヘルスジャンボリー」
2010年5月14日にすこやかパートナーの交流会があり、そのなかで、大阪府公衆浴場組合の方の取り組みの報告があった。地域の銭湯を拠点にしてウォーキングを始める。さらに聞いてみると、着替える場所の提供とウォーキングの終了時にシャワーではなくお風呂に入る。そういう提案で、一挙両得(?)のイメージが沸いてきた。加えて、新しいパートナーの交流が実現できないものかと企画にはいった。
すこやかパートナーの交流会を通じて連絡を取り合ったので、大阪市の事務局も入って実現に向けて調整を図っていくと、10月16日(土)の大阪市東住吉区にある長居公園内植物園で開催する大阪市のヘルスジャンボリー(※4)とタイアップすることで検討している。
ウォーキング(長居公園)
|
|
具体的なパートナーとの交流は、6月に大阪府浴場組合から、長居公園周辺のお風呂屋さん4ヶ所を選定していただいた。参加者の集合場所の利便性を考えて、JR鶴ヶ丘駅にあるお風呂屋さんを第一候補にして、7月にウォーキングとヘルスジャンボリーに参加する具体的な作業に入ることにした。
ウォーキングのコースは、すこやかパートナーの社団法人日本ウォーキング協会近畿本部の方とも交流会のときに名刺交換をしていたので、7月に入りコースの選定を依頼して、作っていただいたコースを一緒に下見をすることができた。
実際に歩くと地図ではわからないことが出てきたので、地図上のコースの微調整を依頼しながら、ヘルスジャンボリーの企画と合わせることにした。
意外とスムーズに青写真ができた感じはあるが、この後は、機関確認を受けないと進まないため7月15日開催の支部中央委員会で「すこやか街歩きウォーキング」という取り組みとして議案確認をいただいた。
支部としても、初めて「市民参加」を中心にした募集を行うことに不安があるが、すこやかパートナーとの協力として「浴場組合」「日本ジョギング協会」「行政」という、新たな展開を進めていくことになる。
(4) すこやかパートナー(4)……健康な人を応援する
2011年3月26日(土)に2回目になる「すこやか健康ジョギング・10kmラン」を、開催する予定で準備を始めている。
市民参加も視野に入れると、すこやか街歩きウォーキングのノウハウが活きてくるので、健康な人を応援するポピュレーションアプローチにつながればと考えている。
最後に
元気のない環境保健支部を活性化したい思いからスタートしたのだが、すこやかパートナーではパートナーとして協働していく役割を明確にして受け皿的なジャンルを担うことができた。
また支部の活動として、めざすもののイメージを健康な人にはより健康を、健康を意識する人にはその情報を渡せるというスタイルを築いていくことが課題だと考えている。
健康づくりの素晴らしさを伝えることが役割だと位置づけをして「まず組合員そして市民がここによってみたい」という気分になるような【健康づくりの分野でブランド】的な分野に近づいていくことができれば、活性化をはかるという夢が夢でなくなるだろう。 |