【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第2分科会 「新しい公共」を再構築する

 心身障害者リハビリテーションセンター職員が、小学校・中学校・地域に出向き、障害のある方への理解をさらに深めるため、車いすを使った体験型講習会を企画・実施。車いす体験を通じて、障害のある方への介助方法や人への思いやりなど受講者の理解と知識を高めることによって、地域福祉やボランティア活動に対する認識を深め、地域リハビリテーション及び地域支援システムの構築に寄与することを目的としています。



車いす体験講習会
乗ってみよう、押してみよう、押されてみよう
車いすの方が安心して出かけられる不自由のない社会をつくろう

大阪府本部/大阪市従業員労働組合・市民生活支部

1. 概 要

 車いす体験講習会は、2005年から試行的に、平野区・東住吉区の小学校を主に実施、2006年より市内を3つのエリアに分け開催をしてきましたが、2008年度からは大阪市24区全区で展開していくことになりました。また、学校だけではなく地域の団体や、ボランティア団体からも要望があり実施してきました。2009年度には民間企業からも要望があり、体験講習会を実施してきました。今後の目標として、さらに車いす体験講習会を広めるためのカリキュラムや内容の見直し、スタッフのスキルアップも含め、さらに充実させていきたいと考えています。

(1) 各年度実績
 2005年度 11校 1,834人   2006年度 39校 4,568人   2007年度 70校 6,000人
 2008年度 120校 9,000人   2009年度 130校 10,000人(申し込み数)

2. 実施内容

(1) ワークシートの活用
① 事前にワークシート(テーマはバリアフリー)を取り組むことで、児童・生徒の学習意欲を高める効果を期待しています。
② 表面ワークシートの質問には、それぞれ意図があり答えを求めるもの ではなく、クイズ形式とすることで気付きを促す内容としています。
③ 裏面には、体験してもらう内容を詳しく説明しています。当日体験する講習会がより記憶に残るようにとの思いがあります。


(2) 車いすの安全な取り扱いを体験して学ぶ
① 「車いすの取り扱いはこうしなければならない」ではなく、知っておかないと危険なことや日常使用している人の気持ちを考えた取り扱いについて説明しています。

(3) 自走体験で「障害」について理解する
① 10センチの高さのスロープ(車道から歩道へあがることを想定したセクション)
② カラーコーンで作ったスラローム(左右の曲がり方の体験セクション)
③ 跳び箱を使って狭い道を表現(車いすが通過するギリギリの幅を体験するセクション)
④ 高さ2センチの木の板を取り付けた仮想段差(少しの段差での簡単には乗り越えられない、街中では車いすでは困る場所がとても多いことに気づくセクション)

(4) 介助体験(乗る体験と押す体験)をして介助に思いやりが必要なことに気づく
 介護体験では「乗る人の気持ちを考えて押してください」と説明をしていますが、介護される側体験をしたほとんどの児童は「怖かった」と言います。こうしたことから、介護は思いやりが必要であると気づきます。

(5) 車いす講習会のまとめ
 まとめでは、体験を通じて学んだことや、思いやりが必要なことに気づいてもらった内容を基に、日常生活でどう活かしていくかについて話します。
 体験講習会では、体験したあとに児童が感じていることを、もう一度噛み砕いて説明をしています。こうしたことにより、より理解でき記憶に残ると考えています。

(6) 体験者の感想
 車いすに乗っている人が、押されているのを見て楽しそうだなあと思ったけど、実際に乗ってみるとすごくこわかった。
 介助体験では、いつも通っている廊下がすごくこわかった。反対に車いすを押す側になると、相手の気持ちを考えて押さないと、乗っている人がびっくりするので「右にいきますよ」「進みますよ」というような小さな心がけが大事だと車いす体験で分かりました。
 私は、今日の体験で、車いすの方はもちろん、目や耳の不自由な方や障害をもっているひとはすごく大変だなと思いました。私に出来ることがあれば何かしたいなと思いました。

3. 今後について

 私たちが啓発しているバリアフリー社会(人への思いやり、やさしさ)を実現するためには、障害のある人や介護を要する高齢者などを特別視することなく、家庭や地域、職場において共に生活し行動する仲間としてとらえ、日常生活・社会生活を営むうえで、安全で快適に利用できるまちづくりなどが必要であると考えます。
 これらの取り組みの一つとして小学校・中学校の児童や生徒の心に残る啓発活動を、私たちの車いす体験講習会として実施していますが、特に小学校3年生、4年生を中心に分かりやすく理解してもらえるような体験学習の内容をさらに充実させていくことにより、高齢者や障害のある方へのお手伝いの仕方や人への思いやりなど、心のバリアフリーとして受け止めてもらうことが出来ると思います。
 今後も車いす体験講習会として、地域福祉や市民啓発事業などの一層の充実に向けて取り組みを進めていきます。