【自主レポート】 |
第33回愛知自治研集会 第3分科会 わがまちの財政から、地方財政改革を展望する |
常滑市は、2005年に中部国際空港が開港して以降、市税収入が増加し、地方交付税の不交付団体となりました。しかし、財政危機を理由に職員の給与削減が実施されました。税収が増えたのに、なぜ給与が削減されるのか、やめさせるにはどうしたら良いのか。組合の財政分析で、過去の行財政運営上の問題が明らかとなり、課題が見えてきました。市財政健全化のため、市民を巻き込んだ取り組みを行い、財政健全化の提言を行います。 |
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1. 常滑市の財政状況 (1) 優良な市税収入
歳入面では、同規模の自治体と比較して市税の割合が高く、国からの交付金に頼らない優良な自治体であるといえます。しかし、それも空港関連税収に頼る部分が大きく、空港の今後が市の財政に影響することになります。空港関連税収の中心は固定資産税であるため、年々償却していきます。また、不況で空港の経営不調が続けば、新規の設備投資がされない、空港関連企業の進出が進まないなど、税収の増加が見込めなくなります。人口増加や企業誘致を進めるなど、空港税収に左右されない体質をつくる必要があります。 |
(2) 激減した競艇事業収益 (3) 過去の行財政運営上の問題
常滑市では、これまで単年度で数十億円にも上る競艇事業収益を公共施設の建設や行政サービスの提供につぎ込み、人口5万人都市の身の丈を超えた大きな財政規模で保育をはじめとする手厚い行政サービスを実現してきました(表2)。その一方で、市民の行政依存を生み出してきました。また、計画的に基金に積み立ててこなかったため、基金がほとんどありません(グラフ2)。団塊世代の大量退職に備えて退職手当基金を積み立てるよう組合が再三求めても、積み立てを行いませんでした。その結果、退職手当債の借り入れをしなければ退職手当を支給することができない状態となりました。 |
② 多額の長期債務=借金
(4) 地方交付税不交付→給与カット (5) 中期財政計画 (6) 予算編成 |
(単位:百万円) |
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予算編成にあたって一番問題なのは、政策を取捨選択する判断基準がなく、手広く事業を実施しているということです。公共事業を大幅に減少させ、財政規模を縮小させる必要があります。
2. 財政分析の取り組み (1) これまでの取り組み
空港が開港して税収が増えたのに、なぜ私たちの給料がカットされなければならないのか。市独自の給与カットの原因となった常滑市の財政は一体どうなっているのかを把握し、このまま給与カットを続けさせないために当局に何を訴えていけばいいのかを検討するため、自治労愛知県本部と愛知地方自治研究センターの協力の下、組合での財政分析に取り組みはじめました。 ② 財政分析勉強会 愛知地方自治研究センターを通じて、講師として奈良女子大学の澤井名誉教授に遠方からお越しいただき、決算カードの見方から、市の財政状況の把握、行財政改革の計画、行財政における課題の抽出などについて話し合いました。 ③ 検証!! とこなめ 財政集会の開催に先立ち、財政問題に対する組合員の関心を高め、財政集会に興味を持ってもらうため、毎週1回、月4回発行している組合の機関紙に財政問題の特集記事を連載しました。 ④ 財政集会 それまでの1年間に取り組んできた財政分析の成果を報告したうえで、参加した組合員も含めて財政上の課題について討論しました。勉強会で講師を務めてくださっていた奈良女子大学の澤井名誉教授にコーディネーターとして仕切っていただき、当時愛知県本部の書記長だった植山さんの協力で岡崎市財政課の職員にパネリストとして参加していただいて、岡崎市の健全な財政運営について、予算作成における枠配分方式の考え方などを紹介してもらいました。 ⑤ もし、あなたが市長ならどうする? 財政集会までは10人弱だったメンバーを少しでも増やそう、一人でも多くの組合員に財政問題に関心を持ってもらおう、と財政分析のワークショップを開催しました。「堅苦しくなく、気軽に参加して楽しめる」をコンセプトに企画し、もし自分が市長だったら、今の常滑市の財政危機をどう解決するか、というテーマでグループごとに議論してもらいました。 ⑥ 常滑市の行財政に関するアンケート 提言に市民の意見を反映させて重みを増すため、市の財政状況や組合の取り組みを市民に知ってもらい、協力してもらうための取り組みとして、アンケート調査と財政集会を市民向けに行うこととしました。しかし、いざ作業に入ると市民向けの取り組みについてメンバーの理解がなかなか得られず、作業開始からアンケート配布まで2ヶ月以上かかりました。1,000通を無作為に市民に配布し、32%を回収しました。 (2) これからの取り組み 3. 組合としての課題 組合員の給料を守るため、窓口など行政の最前線で市民の批判を受ける組合員の負担を軽減するための取り組みであるにもかかわらず、組合員全体の関心は低く、中心になって取り組んでいる一部の役員にだけ負担が大きくのしかかっています。こうした無関心、他人任せの組合員の意識改革をしていくことこそが必要であると感じます。 |