【自主レポート】自治研活動部門奨励賞 |
第33回愛知自治研集会 第3分科会 わがまちの財政から、地方財政改革を展望する |
「行財政基盤の強化・充実」や「住民サービスの向上」「広域連携」を大名目に、全国で市町村合併が進められましたが、今、合併効果を検証する議論が各地で行われています。田辺市でも合併5周年を迎え、その影響が徐々に顕れています。本レポートでは、合併前に想定された財政計画と実際の決算額との乖離などを通じて現状の分析を行うとともに、今後の見通しとそれに対する自治研活動の方向性を探ります。 |
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1. はじめに (1) 田辺市とは (2) 合併5周年を迎えて 2. 現状を分析する (1) 財政分析 |
【図1】
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【図2】
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このグラフからわかることは、田辺市では公債費比率が非常に高いということである。その原因は過去にハード事業を多く行ったことに他ならない。一方で、人件費比率は高くないということがわかるが、これは公債費が高くなっている分、人件費比率が下がるためであり、公債費が類似団体と同等の比率と仮定して、再計算を行った。それが【図3】のとおりであるが、再計算をした場合でも19.1%となり類似団体の人件費比率20.8%を下回った。比率はマジックであって、膨大な投資事業を行えば人件費比率は下がるので、この比率のみでの判断は過信できないが、少なからず人件費が問題となるほど過大であるとはいえない。 |
【図3】 |
【図4】 |
【図5】 |
【図6】 |
【図5】【図6】のとおり、扶助費と公債費は計画を上回っている。ましてや扶助費にいたっては年数を経過するごとに乖離が大きくなっている。扶助費については2点、田辺市の特徴を述べたい。 (2) 普通交付税算定替と合併特例債について |
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このような財政状況を見ていると、確かに現時点だけを考えれば、合併特例債もまだ活用でき、交付税の合併算定替のおかげで、新規事業を行う余力はあるように見える。特に、合併特例債については、事業費の95%が借入可能であり、元利償還金の70%が交付税措置されるので、他の起債より有利である。国や県が費用負担する事業であればなおさら、少額の市負担で大きな事業が行えるため、ここ数年だけのことを考えれば間違いなく“おいしい”といえる。しかし、本当にいいことばかりだろうか。特に、財政の健全化ということから考えれば、近い将来に単年度ベースで20億円以上の歳入不足が生じることは明白であり、大きなハード事業を行えば必ず維持管理費が発生するため、歳出額は必ず増加する。また、2008年度末の地方債残高は約562億円に達しており、現在でも償還に係る財源を生み出すことは大変な状況である。 3. 今後の田辺市を想定する (1) 人口推計からみた財政状況 (2) 合併特例債による新規事業について 4. さいごに とかく、国の事業だからやらなければならないと決めつけがちだが、田辺市の将来を見据えるなかで、何が最良なのかという判断が必要となってくる。行政の仕事に絶対解は存在しない。しかしより最良に近づけていく努力は為政者のみが行うことではなく、行政に携わる者が皆意識する必要がある。そして、それがある程度実効性のあるものでなければ、ただの批評に過ぎない。そのため、事業を検証する制度仕組みの構築が重要であると考える。田辺市職の自治研部では、政策提言ができるような体制を構築しようと準備を進めている。ただ、自分たちの給与を守るということではなく、将来の子どもたちの未来も含めた市民全体の生活をどのように守っていくのかを考え、大局的な見地に立った政策立案を行っていきたい。 |
※1 保護参考(2010年3月分)和歌山県福祉保健部福祉保健政策局福祉保健総務課保護班 |