【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第3分科会 わがまちの財政から、地方財政改革を展望する

今後の自治体運営と行財政改革・中期ビジョン
策定にあたって
 

大分県本部/由布市職員労働組合

1. 最近の経済状況から

 米国発の金融不安を端としてここ数年日本の国・地方の財政状況がさらに不安感・閉塞感を増している状況は皆さんの知るところですが、改めてこれまでの国の景気対策及び今後の中期ビジョンの策定の注意点をまとめてみました。

2. 地方自治体の経営状況

 もともと、小泉改革により地方財政は疲弊していたのに加え景気の低迷による税収が大幅に減じられていました。そのため、国は選挙対策ともとれる「定額給付金・子育て応援手当等」の大型補正を繰り返して、景気・地方財政対策を講じた結果、自民党から民主党へ政権交代がなされましたが、いまだ将来設計が見えていない状況です。同様に地方自治体の経営も方向性が定まっていない団体が多くみられます。
 由布市も同様に合併以後、小泉改革の影響から行財政改革の旗の下に職員人件費をはじめとして、様々な経費削減を行いました。

3. これまでの行革実施状況

由布市の行革の実施状況
 民主党の政治になって注目を受けたのが「事業仕分け」だと思います。国は無駄な事業を整理していますが、地方の経営が同様に「事業仕分け」を行うことは、直接顔が見える経営を行っているため、利害関係が如実に表れるという反面が存在します。
 結果、首長や財政当局として調整のしやすい、職員人件費に行財政の効果が集中したということではないでしょうか?

4. これからの政策提案

 昨年の報告(「由布市における財政分析~合併効果の検証と今後の財政推移~」)でも報告しましたが、大分県内でも多くの団体が合併したことにより、苦しいながらもなんとかやりくりしている現状ですが、今後の普通交付税の合併算定替終了を迎えたころまでに、どのような対策を講じていくかという問題に迫られています。(資料1参照)
 現に、平成の大合併として、兵庫県の篠山市では、合併時の財政計画から大きく変わる状況に、大幅な経営見直しを行っているようです。
 しかし、これまでと同じような改革の仕組みをつくろうとすると、結果人件費の抑制(職員数の削減・給与のダウン)につながりかねません。やはり、政策的な効果や必要性をしっかりと見定めていかなればならないと思います。

5. 将来的な自治体自立の実現に向けた職員組合の取り組み

~財政論は難しくない 自分の家計に置き換えて
 財政的な話は、専門用語や様々な制度を知っていなければすぐに興味のわく話ではありません。とりわけ最近では、財政論議=すぐに職員人件費の抑制 という話につながっていくので、「悪い・難しい」という固定観念が増大しつつあると感じています。合わせて財政論は、頭の片隅で「どうせ私のお金じゃないし」という感覚を持っている人も少なからずいるのではないでしょうか? そんな事は無いはずです。自分の所得から税金を納めているわけですから。
 由布市職員労働組合としては、行財政改革の実施にあたり職員に対して当初予算時・決算時において内容及び行革効果額の説明を執行部に求め行ってきました。その際の注意点として市の財政(とりわけ一般会計が中心ですが)予算(決算)額が大きく、通常私生活では考えられない金額が羅列されているため、金額をより身近な単位に変換して、初心者にもわかりやすい説明へ変えることで、多くの職員を対象とした自治体自立に向けた意識づけに取り組みました。(資料2参照)

6. 将来推計(中期財政計画)は、財政担当者の感覚だけではいけない。策定時の経済状況や総合計画との整合性を保った上で

 中期財政計画を策定する際に、当然未来を決定することはできません。しかしあくまでもその時々の状況から見込まれる数値(額)を予測しているので、「当たらずしも遠からず」という方向性が生まれます。(計画値と実績値がなぜ違うのかと尋ねますが、それは愚問では?)しかし、計画策定時にどのような予測をしたか? ということは必然的に問われる部分です。(具体的な注意点を参照

7. 最後に

 やはり実際の現場では理想どおりいっていないのが現状です。その理由はやはり自治体が自立するためには、国策が安定していなければなりません。とりわけ医療・年金・福祉等や国と地方の財政のあり方の根幹から変えていかなれば、そのためには地方が連帯した取り組みを継続的に行っていく必要性が問われていると思います。
 また、自治体が今出来る取り組みとしては、職員一人ひとりがその自治体の状況を大まかにでも把握し、危機感を共有すること、そのために、職員研修の重要性があると思います。また首長が行う政策のチェック機能として、組合側からの提案も今後は必要性が望まれるところです。

将来推計策定時の具体的な注意点

(全体論)
・将来的な全体像がどのような方向にあるのか? 現状維持を目指しているのか? 或いは景気動向等を勘案して、規模を拡大・縮小傾向と考えるのか?

(歳入面)
 税 収:景気の動向に左右される市(町)民税の予測(推計伸び率で判断)
    :固定資産税は評価替えの年に増減するので注意
 交付税:国が毎年(12月頃)策定する「地方財政計画」によって変更する。毎年度の計画策定時点では、推計伸び率で判断する。ただし合併団体は合併算定替え終了に注意
 国・県:大幅な制度改正が行われない限り大きく変動はしないが、普通建設事業(大型の工事)等で計画があれば、注意
 地方債:臨時財政対策債(普通交付税の振替分)の把握と、普通建設事業に対する管理

(歳出面)
 人件費:議員の報酬・職員の給与・手当・共済・退職手当に係るもの。人員の配置(採用)計画と照らし合わせて適正な金額が計上されているか確認。(政策的経費との度合をみる。)
 公債費:借金の返済額。歳出全体に占める割合が高い場合は過去の遺産(過去に行った普通建設事業等)があるので、今後の普通建設事業(設備投資)に影響を勘案
 投 資:投資的事業(普通建設事業)。計画的な設備投資なのか? 首長の判断による決定部分が大きいので、計画策定にあたっては、「本当に必要なのか?」という議論が必要
 繰 出:国保・介護等保険会計や上水・下水等の公営企業会計への財政援助。法的に定められた繰出(基準内繰出)となっているか?

(その他)
 基金残高:とりわけ財政調整基金の残高に注意。概ね標準財政規模の15%~20%程度が基準
 地方債残高:借金の残高。将来計画策定時から(歳入)借入見込と(歳出)返済見込みを勘案して、残高が増額傾向なのか否かを確認(多くなる場合、将来的に返済できる財源の確保は?)

(資料1) 普通交付税の推移見込
(資料2)
備 考
市   税 基本給
地方交付税 仕送り
繰 入 金 預貯金から
市   債 ローン
性質別1階層
備 考
人 件 費 食 費
物 件 費 電気・水道代
扶 助 費 医療費
普通建設事業 住宅建設等
公 債 費 借金返済
繰 出 金 子どもへの仕送り