1. 県内における指定管理者制度の導入状況について
(1) 新潟市と上越市の2市で全体の3分の1以上を占める
① 自治総研における県内調査
2006年度における指定管理者制度の導入実態について、自治総研における県内調査概要を基に、県内各自治体における指定管理者制度導入施設数を中心とした傾向について一定の考察を行ってきた。
② 指定管理者制度の導入状況
指定管理者制度の導入状況については、県内10,334施設に対して1,306件(12.6%)であり、新潟市が250件(19.1%)、次いで上越市が233件(17.8%)と、2市で全体の3分の1以上を占めている。
また市町村別での導入率では妙高市が128件(72.7%)と大きく突出している状況である。
(2) 導入施設や指定団体、公募の状況について
① 指定管理者制度導入施設の種類
指定管理者制度導入施設の種類としては、福祉関係施設が328件(25.1%)、次に市民利用施設315件(24.1%)で全体の約半数となり、スポーツ・レクリェーション施設255件(19.4%)、労働・産業・保養施設215件(16.5%)となっている。
② 指定管理者団体の種類
指定管理者団体の種類としては自治体・町内会が437件(39.1%)占め、社会福祉法人208件(18.6%)、財団・公社144件(12.9%)、株式会社143件(12.8%)と全体の8割を越える状況となっている。
③ 指定管理者指定時の公募状況
指定管理者指定時の公募の有無については、公募331施設(25.3%)、非公募975施設(74.7%)となっている。
(3) 従来の管理形態と指定期間の状況について
① 指定管理施設の従来の管理形態
指定管理施設の従来の管理形態としては管理委託が1118施設(85.6%)、自治体の直営が148施設(11.3%)、新規施設での開設時指定管理者40施設(3%)となっている。
② 指定管理者の指定期間
指定管理者の指定期間については、3年が512施設(39.2%)、次いで5年が332施設(25.4%)、10年が323施設(24.7%)となっている。
③ その他指定管理を受けた後に撤退した施設
指定管理を受けた後に撤退した施設について、新潟市での老人福祉施設の中で1件、魚沼氏(旧入広瀬村)での1件、計2件が指定先の会社状況や中越地震の影響から指定管理契約解除となっている実態がある。
2. 新潟市における指定管理者制度の現状について
(1) 2巡目公募に向けてスポーツ関連施設を一括りに
① 個別施設を対象とした指定管理者制度から、関連施設を一括りとした指定管理者変更
新潟市における指定管理者制度の活用(運用)方針及び2巡目公募に向けた現状・課題について(スポーツ関連・マスコミ資料より)議論を深めようとしたが、十分な事前準備が出来なかったことから、今後改めて問題整理をしたい。
ただ、従前は個別施設を対象とした指定管理者制度の導入であったが、今回2巡目公募に向けては、各区でのスポーツ関連施設を一括りとした変更を行ったことから、改めてこの変更の経緯と、このことがそこで働く労働者や施設を利用する市民にとって、旧来の施設運営を行っていた時と、指定管理者が入った一巡目の施設運営状況、さらには2巡目の運営状況等を比較検証することが必要と考えている。
② 新潟市職を中心として議論の豊富化を
今後、新潟市職を中心として問題点の検証を行い、議論の豊富化と他の市町村で一括指定管理者制度を考えている自治体当局や当該する自治労単組に対してたたかいの道しるべとなるような取り組みを進めていかなければならないと考えている。
3. 公立図書館における指定管理者制度の現状について
(1) 県内の6自治体で図書館の指定管理者制度移行
① 三条市職労連を中心に指定管理者制度移行図書館の中間検証
公立図書館における指定管理者制度については、三条市職労連で昨年の北海道自治研で「指定管理者を導入する立場」での問題点について報告を行ってきている。
今回、県内の公立図書館における指定管理者制度の導入状況と、既に導入された6自治体での2005~2008年度における図書館経費について取りまとめ、とりわけ指定管理者制度が導入された2007~2008年度における検証を行った。
② 図書購入費等の動き
図書購入費を含む資料費は長岡市で約900万円の減があるが、妙高市・南魚沼市・見附市・刈羽村の四市村においては現状維持、三条市においては約200万円の増となっており、市民サービスを低下させない基本的な考え方がうかがえた。(長岡市については別途詳細な調査が必要)
その他経費については、刈羽村がゼロ円であり、改めて今後の調査が必要であるが、長岡市で約2,300万円、妙高市と見附市で約100万円の増となっている。しかし反対に三条市では約1,700万円の減となっている。このことから、各自治体における図書館経費におけるその他経費のさらなる詳細な調査が必要と考えている。
③ 今後の検証作業
今後の検証作業としては「市民サービスは向上したのか」という観点で資料費の変化、委託内容の検証、職員の体制、委託費の推移、来館者数の変遷の5項目を考えている。
また「職員の雇用状況はどのように変化したのか」という観点では、職員体制の内訳、委託費における人件費相当額(一人当たりの年収)、勤務時間の負担の3項目を考えている。
4. 柏崎観光レクリェーション振興公社及び柏崎市議会の現状について
(1) 2006年から指定管理者制度導入
① 公社による管理委託から指定管理者制度移行
柏崎市にある自治労加盟の柏崎観光レクリェーション振興公社労働組合の組織において、これまで管理委託されていた各種施設の一部について、2006年から指定管理者が導入されている。
指定管理者制度導入時には、職員給料がこれまで公社給料表で決まっていたものが平均12%カットされ、勤労意欲の低下や将来的な雇用・昇給不安が上げられている。また勤務時間については各施設就業規定における変更はないが、施設利用者からの要望で「市民サービス向上」の目的のために施設開館時間の延長を試行した結果、時間外労働が増えている。
② 施設の運営状況
施設の運営状況については、2007年に発生した中越沖地震の影響で閉鎖した施設(1施設)や仮設住宅建設用に施設利用を中止した施設(4施設)がある。そのため、当該施設担当職員の5人が柏崎市に派遣研修として約6ヶ月の出向を行ってきた
(2) 労働組合の取り組みについて
① 指定管理者制度導入を契機に組合結成
指定管理者制度が入る前後における労働組合の取り組みについては、指定管理者制度が導入されるのを契機に雇用の確保と労働条件を守るために2005年に柏崎観光レクリェーション振興公社労働組合を結成し、自治労新潟県本部にも加盟した。
② 柏崎市職員労働組合や自治労新潟県本部とも連携
そして柏崎市職員労働組合や自治労新潟県本部とも連携し、公社当局に要求書を提出するとともに、柏崎市当局に対しても指定管理における非公募による選定、安定雇用、指定期間の見直しをするよう協議するよう要望してきた。
ただ組合側からのアプローチが弱く、今後は柏崎市における自治労組織内議員と更なる連携を行い、公社当局と柏崎市そして市議会での取り組みをあわせて組合員の雇用の安定を求めていくこととしている。
(3) 利用者への取り組みと次期公募に向けて
① 利用者アンケート等による運営改善
利用者(地域住民・柏崎市民)への取り組みについては、利用者アンケートやご意見箱を設置し利用者の意見や苦情等を集め、運営改善に努めている。また柏崎市の広報誌を利用して広く市民にイベントや自主事業(各種教室・講習会等)の情報提供を行い、施設の利用促進をはじめ市民の健康増進やスポーツ振興につとめている。
② 次期公募に向けて
柏崎観光レクリェーション振興公社については、すべての施設が指定管理されたわけではないので、残された施設の運営や公社組織の現状及び今後の将来展望についても考察を行うとともに、第2期指定管理公募に向けた課題等についても問題提起を行ってきた。
(4) 柏崎市議会での議論状況
① 柏崎市議会での指定管理者制度による財源縮減効果
指定管理者制度による財源の縮減効果は、2008年ベースで総額91,785千円(単年度)があり、柏崎市観光レクリェーション振興公社で57,739千円、総額の62.9%となっている。またこの他の財源縮減施設としてはシルバー人材センター、社会福祉法人ミニコロニー、社会福祉協議会、で指定管理を行っている4施設が報告されている。
② 公募改選選定の不安視と人材確保の難しさについて
柏崎市議会において指定管理者の公募改選選定の不安視と人材確保の難しさを質問したとき、市長答弁としては質問議員と同じ認識(見解)を示すとともに、次期選定に向けて単にコスト削減の追及だけでなく、提供されるサービスの質や施設管理の安定性も含め総合的に検討することを答弁している。また地域の活性化への制度選択と柏崎市の関連団体に配慮した次期選定方法に対する質問については、市の施設運営のみに設置された法人がほとんどであり、事業が他の手にわたった場合は法人そのものの存在意義が無くなると答弁している。
③ 「指定管理者制度導入・運用ガイドライン」の一部の改正
柏崎市としては2009年2月に「指定管理者制度導入・運用ガイドライン」を策定し、その年の8月に一部ガイドラインの改正を行っている。その骨子としては「市直営に戻す」こともありうると明記したことと、「公募によらない候補者の選定」の明記を行った。このことにより、今後は応募資格者の制限の緩和と非公募とする場合の要件、そして指定管理料基準額の適正な算出への道が開かれた。
5. 十日町市では第三セクターを活用した指定管理者制度
(1) ㈱まちづくり川西を中心とした現状報告
① 指定管理者制度を利用した民間委託を進める受け皿としての第三セクター
十日町市では指定管理者制度を利用した民間委託を進める受け皿として第三セクターがその一翼を担っている。市内の第三セクターで指定管理制度で施設の管理等を行っているのは㈱松代総合開発(市100%出資)、㈱なかさと(市81%出資)、㈱まちづくり川西(市56%出資)など6事業所がある。
② ㈱まちづくり川西の設立経緯と事業実施経過
㈱まちづくり川西の設立経緯については、1996~2005年度の「第5次川西町総合開発計画」に中心市街地の活性化を図る必要があるとうたわれたことから始まる。1999年に「川西町中心市街地活性化基本計画」、2000年に「川西町タウン・マネージメント(TMO)構想」が策定された。その中で「公共施設管理運営事業の受託及び賑わい空間施設の管理運営を自ら事業主体となり整備する」受け皿として第三セクター㈱まちづくり川西を設立することとした。
㈱まちづくり川西の事業経過としては、2001年に「千手温泉千年の湯」管理運営、2003年に長屋型共同店舗兼「まちづくり川西」事務所開設、2004年に「川西町総合緑地公園」「川西健康増進施設ひだまりプール」管理運営、2008年に「川西学校給食センター」の管理運営を担ってきている。
㈱まちづくり川西の特徴的な動向として、会社設立以降に法律や制度が変わり、運営する施設数が増加する中で、施設の維持管理に追われ企画・提案業務に力がそそげない現状があり、住民からもっと企画を行ってほしいとの要望があがっている。また「農と商の連携」として温泉施設単独の食堂は設けず、地域の飲食店からの出前で対応したり、温泉プールの燃料を地域の商店組合が納入組合を組織し他の温泉施設と同様の料金で給油している。併せて学校給食においても給食の食材納入組合が地元食材を納入し、地元の食材比率は39%となっている。(市内の他の給食センターでは10%台となっている)このほか、温泉の排熱を利用したビニールハウス3棟を農業法人と連携し、イチゴの栽培を取り組み、温泉を核とした新たな試みを始めています。
③ 今後の課題
今後の課題としては、目先の短期の経費節減に労力が割かれ会社設立時の地域の役に立つ第三セクターの役割が実行できる状況づくりが求められます。また安さだけの入札ということになると黒字が見込まれる温泉施設だけの入札となり、他の施設は入札ができなくなり、そのことから、地域外からの燃料納入や会社社員の解雇等へとつながっていくことが懸念されるところです。そのため、今後指定管理者の公募を行う場合は、地元からの物資の調達を高め、地域経済の貢献度を加味した公募が求められます。
6. 社会福祉協議会(新潟市)における指定管理者制度の導入現状
(1) 雇用の確保と指定管理者を入れさせない手法について
① 新潟市社会福祉協議会における施設管理状況等
新潟市における社会福祉協議会管理の施設総数は180施設あり、その内指定管理施設は102施設あり、また委託施設は10施設となっている。
昨年9月時点での職員総数は1,836人(正規職員243人12.8%)で、内訳としては事務局・地域福祉部門192人(正規職員70人36.5%)、放課後児童健全育成(学童保育)614人(正規職員0人0%)、介護関連事業(老・障)1,030人(正規職員164人315.9%)となっている。
② 指定管理者制度にならず引き続き委託契約となった職場
「北区老人デイサービスさわやか」と「南区老人福祉センター白寿荘」が引き続き委託契約となった。これらの施設は建物の一部または全部が社会福祉協議会の持ち物であったことから、指定管理者の対象とならなかったとの報告であった。今後、指定管理者制度を導入させない手法としては、300万円を超える一定の預貯金を不動産として取得する制度の活用が具体的に示された。
③ 指定管理者制度の公表と問題点
現在新潟市のホームページで指定管理を受けている福祉関係事業所25施設が公表されている。その評価項目としては1サービス、2事業、3施設管理、4歳入歳出の4項目がA~Dの4段階で評価されている。この評価においてD評価を受けると次回の指定管理は受けられない評価内容である。またこの他に総合評価コメントと所管課が公表されている。
福祉施設の観点から指定管理者制度の問題点を挙げると、指定管理期間の長さ(短さ)により期限付きの雇用職員を生む土壌を形成することから、将来の展望を考えにくい職場環境となり、優秀な人材確保や定着化に大きな問題があります。また利益幅がほとんどなく、反対に指定管理委託料の予算削減で経費の持ち出しが当たり前になりつつある現状となっています。これらのことから、経費の縮減により行き過ぎた指定管理者事業については、具体的な問題点を洗い出し、断る勇気やそれをとめる市民としての行動や義務が上げられました。
7. 上越市においてはNPO法人を活用した指定管理者制度
(1) 「大池いこいの森ビジターセンター」を中心とした現状報告
① 行政改革経費の縮減の手法としての指定管理者制度導入
2009年4月の上越市の施設は987施設あり、指定管理者使節は263施設(24%)であり、その中でNPO法人が6施設管理している。
その中でこれまでの管理委託から指定管理施設となった「大池いこいの森ビジターセンター」について施設の概要、NPO法人の概要、指定管理移行時の動向、現在の指定管理の実情等が報告された。具体的な課題や問題点としては、行政改革経費の縮減の手法としての指定管理者制度導入であることから、予算が頭打ちとなっている。また民間としてのノウハウを生かそうとしても法令に縛られている。また行政が関与せずに共同での活動ができず、切迫した経営状況で積極的な集客活動ができず、契約更新の保証がないことから長期的な計画が遂行できない状態となっています。そして行政による検証がほとんど行われていないことから、行政と指定管理者双方での検証が早急に必要であり、その実施を働きかけることが求められています。
8. 自治労新潟県本部としての今後の取り組みの視点
(1) 労組の有無、労組の構成員に対応した総括的な取り組みが必要
① 一般論としての各種取り組み
・自治労市町村単組と当該施設職員組合又は労働組合との連携
・自治体当局及び市町村議会への課題・問題点是正に向けた交渉や意見反映行動
とりわけ自治労組織内議員及び組織内準議員との連携強化
・指定管理者責任者への課題・問題点是正に向けた交渉や意見反映行動
・指定管理者導入施設に対するモニタリング及びモニタリングの検証
・当該施設のあるべき姿について内部討論および施設利用者・一般市民との協働作業の追及等
・当該施設職員で労働組合が未結成の場合、労働組合の結成または基礎自治体への組合加入に向けた取り組み支援
・場合によっては、指定管理者施設から自治体直営に戻すための必要な取り組み
② 労組の有無及び構成員等の観点からの具体的な取り組み
・当該施設職員が自治労市町村単組組合員(自治体職員組織)の場合
・当該施設職員が自治労組織組合員(自治体関連組織)の場合
・当該施設職員が自治労以外での労働組合の場合
・当該施設職員が労働組合未結成の場合
これらの組織の実状に応じた具体的な取り組みについて上記一般論と組み合わせを行いながら、自治労自らの課題として具体的な取り組みを求めていかなければなりません。
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