1. はじめに
4年前、指定管理者制度により初めての指定が行われ、市の施設の管理運営について、民間企業が参入した。導入の前に危機感を募らせ、業務の体制を見直した団体もあったが、多くの場合、従前の業務に多少の見直しを実施した程度だったのではないか。2順目の指定を迎えるにあたり、指定管理者制度の検証を行わなければという機運はあったが、実現に至らなかった。
今回、2順目の指定が行われ、外郭団体や市に大きな衝撃が走ったことをきっかけに、指定管理者制度及び外郭団体のあり方について検証を行いたい。
2. 指定管理者制度・外郭団体の目的
(1) 指定管理者制度の意義
指定管理者制度の意義については、一般的には以下のようなものがあるとされる。
・利用時間の延長など施設運営面でのサービス向上による利用者の利便性の向上。
・管理運営経費の削減による、施設を所有する地方公共団体の負担の軽減。
① 利用者の利便性の向上について
利用時間の延長は、職員の勤務時間を早番・遅番とすることにより、職員でも外郭団体でも実施している。
その他のサービスの向上についてはどうであろうか。経費削減でサービスを減らしていないか。外郭団体は、「役所より役所らしい」という声を聞くが、市でできないことを外郭が民間という立場で実施するという基本スタンスは、失われていないか。これについては、多くの事例が出てくるのではないか。
② 管理運営経費の削減について
施設を所有する地方公共団体の負担を軽減することは、単なる経費の削減をいうのではなく、経費をかけてもそれ以上に利益が出れば、地方公共団体の経費は削減できる。
施設の運営を任せていた外郭団体に対して、経費を削減したら、外郭団体は、その経費の中で予算を組み、事業規模も削減していなかったか。また、市は、外郭団体に金を払い過ぎており、指定管理者制度を導入することにより、経営を合理化することが目的の一つ。
事例研究
コンベンションビューローについて考えてみると、
・市にとってのメリットは、市税収入を上げること。
市に多くの人に来てもらい、買い物、飲食等により、金を落としてもらう。
手段としては、観光だったり、会議だったり、買い物や飲食だったりする。
例えば、東山総合公園でも、数年前まで酒を出していた。
コンベンションビューローの収支バランスのみでなく、市の税収が上がればよい。
・実績を何で測るか。市税収入が上がることを数字として把握できるか。
ホテルを押さえる仕事をすれば、数字として出てくる。
旅行業者と同じようなコーディネイトを仕事としなければならない。
コンベンションビューローは、誘致活動をしているが、押しが弱い。
宣伝が下手。
旅行会社を上手く使えない。旅行業者にうまく使われている。
・組織の問題
組織の構成員…役員・職員は、市、県、民間からの出向と固有職員である。
組織と意思決定…役所の「事なかれ主義」
監督官庁の退職ないし現職幹部職員が外郭団体の役員、幹部職員となり、その団体の理事等に就任することが少ない外郭団体の生え抜き正職員(≒「プロパー」と言われる)との間に、幹部対一般職員間のヒエラルキー(階層制)が存在していると言われている。
監督官庁の退職・現役職員がその人脈を生かして外郭団体の業務が円滑に進むようにすることは有益かもしれないが、それ以上のものを成果として期待されているはずだ。
(ちょっと道草)
――今回の指定管理者の公募で、国際会議場の管理運営について、コンベンションビューローは、民間会社コングレに指定を明け渡してしまった。
ア 国際会議場の指定管理者になったコングレに対抗するには
コングレは、全国にネットワークを広げているので、全国のコンベンションビューローがネットワークを形成し、情報を共有し合うシステムをつくる必要がある。
コンベンションビューローの役目は終わっているという人もいる。
国際会議場をコングレに取られても、ビューロー本部で会議を誘致することは、業務としてすべきである。
イ 国際会議場の使い勝手が悪かった。
国際会議場でサービスを売ることをしなかった。
ウ 文化施設で、プロがいなくなった。
そのため、設備のメンテナンスができない。
音響設備は、ツアーする団体が自分で持ち込むので、不要になっている。
南文化小劇場には、プロ仕様の音響設備を設置した。設計する人や求める人がいた。
金がつくときに設置しないと、設置できなくなる。
(予算がつかない)→役所の論理 良いものを、ドンと入れる。
3. 2回目の指定の結果
第2回指定管理者の指定で、指定が変更になった施設の状況 国際会議場 (財)名古屋観光コンベンションビューロー から ㈱コングレ
公会堂 (財)名古屋市文化振興事業団 から 愛知舞台運営事業協同組合
東山スカイタワー (財)東山公園協会 から サンエイ(株)
白鳥公園白鳥庭園・庭園本館 (財)名古屋市みどりの協会 から 岩間造園・トーエネックグループ
緑スポーツセンター (財)名古屋市教育スポーツ振興事業団 から ㈱JPN
中村スポーツセンター (株)JPN から (財)名古屋市教育スポーツ振興事業団
4. どうすべきか
(1) 外郭団体の場合
① 職員のあり方
外郭団体の要職に就く者は、外郭団体の目的に沿った意思決定を行う必要がある。一般職員の積極的な意見に耳を傾け、有益と思われる事業の実施を積極的に行う。市からの事業委託を断るようなことは、言語道断。
・出向(派遣職員)をどうするか。
今までの考え方は、市のいいところを外郭の職員に伝える役目。
しかし、市の出向も3年を限度に交代となる。これでは外郭の運営にプラスにはならない。
出向者に外郭団体の事業をヒアリング、1年でワンサイクル、3年目に何とか主体的に動くようになる。でもここで市へ引き揚げ。
住宅都市局では、出向を引き上げ
市民経済局も、コンベンションビューローから役職を除いて引き揚げ。
この意義は? 出向経費の削減?
・派遣に出すときに、派遣する職員に「外郭団体の存在意義」を十分理解させ、「民間としての活躍」を期待することが必要。出す側としても、その理解が必要。
② 退職職員の受け皿
市の職員が年金を満額受けるまでの働けるところ。…市職員の再任用・再雇用との調整
勤務期間5年では出向職員とあまり変わらない?
民間向けの職員の再就職先
固有職員の退職後の受け皿 集積された知識・ノウハウの活用
③ 組織の体力強化が必須
固有職員の採用と育成 キーワードは、地元愛。出向は少ない方がよい。
④ 危機意識の共有
幹部職員等に組織の危機に対する意識がない。市からの補助金を左右できる幹部職員
⑤ 仕事に対する意欲
意欲あるアイデアの芽を育てられない幹部
民間という意識がなく、役所の意識がはびこっている。
⑥ 職員の不満を産まないための人事・給与
課長で辞めた人が、再就職でヒラの給料をもらっていれば、誰も文句を言わない。
理事になっても、それなりの仕事をしていれば、誰も文句を言わない。
⑦ 外郭団体を縮小・集約
市の行政のやりやすさから存在は残す。
合併・統合により、役職を削る。市職員の嘱託を削り、固有を残す。嘱託の固有化も考慮する。
役職の報酬を適正化する。
(2) 指定管理者の場合
① 評価制度により、指定を継続できる仕組みを模索
例えば、指定4年目に、過去3年間の実績を評価する。
その実績により、次の4年を任せても良いと評価できれば、公募せず、指定を継続する。
② 4年で公募を繰り返せば、派遣切りと似たようなもの
市とのコミュニケーションや意思疎通が図れない。
随意契約の波がやってくる?
③ 総合評価型の入札
「入札金額の差額」を「自治体側の安心」や「自治体側のリスク・事務量の増加」と秤にかけることが必要。このことは、通常の入札でも言えることで、入札することによる事務量の増加や、入札後業者が変わることによる事務量の増加・トラブルの増加・不安の増加を考慮した入札制度にするべきだ。
5. まとめに代えて
(1) 市の基本的な考え方
市の施設といえば、文化、教育、観光、憩いなどだが、これら施設の多くを指定管理者の公募にしている。こんなに多くの施設を4年に1回の公募で管理運営を任せている現状からみて、それぞれの分野についての市の基本的な考え方が定まっていないような気がする。
それは、各分野でのトップや管理職がコロコロと入れ替わる人事にも問題があるのではないかとも思われる。
特に縦の列が多く入れ替わるような人事が見受けられるが、このような人事が弊害を生んでいるような気がしてならない。
(2) 指定管理でも外郭でもない施設でも
指定管理者が管理運営している施設や外郭団体が管理運営している施設でなくても、見方を変えるだけで、考え方を少し変えるだけで、集客力を強くできるものと考えている。そうすることにより、職員の職域を確保していかなければならないし、市民に対してもアピールしていかなければならないと思う。
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