【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第4分科会 「官製ワーキングプア」をつくらないために

 大阪における、委託清掃の雇用と権利、生活と職場をまもるたたかいの内容と取り組みについて、報告します。公契約基本法と公契約条例の制定をすすめることは、安心して働ける職場をつくり、結果、公共サービスの質を向上させることにつながると考えます。



随意契約から突然の指名競争入札導入
による職場と雇用危機
 

大阪府本部/全国一般大阪地方労働組合 道脇  清

1. はじめに

 2009年1月、自治労と全国一般の完全組織統合がスタートし、共同行動を展開しています。全国一般評議会は青森から鹿児島までの地方労組で構成し、多業種・職種の中小の仲間が結集し、多くの地方労組が産別機能を維持しながら、①春闘、②組織強化・未組織労働者の組織化、③反戦平和の課題に粘り強く日常不断の取り組みを展開しています。ほとんどの地方労組は、1960年前後に地本を結成しており、半世紀にわたり地域に根ざした中小労働運動を展開し、労働相談活動を中心に中小・零細に働く仲間の結集をめざして取り組みをすすめてきています。
 こうしたなか、世界的な新自由主義路線の流れは国内においても、自公政権による新自由主義、弱肉強食の市場万能主義や規制緩和が怒涛のごとく席巻してきました。同時に、政府の厳しい財政状況のなかで小さな政府論や規制緩和・官から民への流れが加速し続けています。
 こうした流れは市場化テストや指定管理者制度の導入とともに、各自治体においても民間委託の流れが加速度的に進行してきています。
 今日の規制緩和・構造改革問題は、1980年前後からのいわゆるサッチャー・レーガンをはじめとする新自由主義路線から国内においても小泉構造改革へと引き継がれ官から民へとともに、1995年の日経連の「新時代における日本的経営」など正規労働者から非正規労働者(派遣・パート)への動きや不条理を正す中坊公平などの連合評価委員会の最終報告・提言(2003年9月)に対して労働組合がこうした期待に十分に対応できていない実態があります。
 今こそ、民間大手労組や官公労などの本工主義を克服することが求められ、連合・地方連合が非正規労働センターを設置したが具体的な活動を展開・強化しなければならないと思います。今次の派遣切りなど非正規労働者問題は、官民を問わず正規労働者自らの問題として捉え、組織化を含め生活・雇用・職場確保の取り組みが喫緊の課題となっているといえます。

2. 全国一般大阪の取り組み

 全国一般は自治労との完全統合を昨年1月からスタートさせています。大阪における具体的な取り組みを紹介します。
 清掃・ビルメン労働者関係の交流は自治労大阪市職・府職、全港湾などとの間でナショナルセンター総評時代から連合結成以降後も学習・交流を深めてきました。
 規制緩和・構造改革、官から民への流れのなか規制緩和は緩和すべき課題と強化すべき課題があるなかで、委託清掃(ごみ収集)などの民間委託問題は基本的には直営堅持しつつ随意契約を維持すべきと考えています。
 私たち全国一般大阪が取り組んできた清掃労働者(ごみ収集)の組織化と生活と権利、雇用と職場確保のたたかいの経過を報告します。
 全国一般大阪地方労働組合(全国一般大阪)はこの間、自治体関連ごみ収集(し尿含む)、ビルメン(設備、警備、清掃)関連労働者の組織化を図ってきました。全国一般大阪は、大阪府堺市(美原町と2005年2月に合併;83万人、2006年4月1日、全国15番目の政令指定都市としてスタートしている)において1970年代初めに、清掃労働者の組織化に着手し、委託清掃(ごみ収集)労働者の生活と権利、雇用と職場を守るたたかいを取り組んできました。
 私たち全国一般大阪は、40年近くの委託清掃労働者の組織化とたたかいを通じて、随意契約を維持し、対市交渉や市議団との連携を強めながら雇用・生活・職場を確保するため粘り強く取り組んできています。もともと直営から民間委託する時に委託料の減額があり、さらにこの間10数年間で堺市の委託料の値下げ(20%以上;40億強から30億強へ)などの結果、契約社員などの非正規労働者の増加が余儀なくされたが、正社員化のたたかいに取り組み前進をはかりました。また、2008年の私鉄総連・広島電鉄労組の契約社員の正社員化のたたかいの取り組みは、私たちに勇気と今後の取り組みに示唆を与えるものであるといえます。規制緩和の嵐がふきあれ、官から民への大合唱のなか市場化テストや指定管理者制度の競争入札導入が強められてきています。他方で、ビルメン関係においても、過当競争による入札価格のダンピングは経営基盤の存続さえ危うい実態となりつつあります。

3. 随意契約から競争入札導入による職場と雇用問題が深刻化

 こうしたなか、千葉県流山市では随意契約から競争入札制度が導入された結果、2007年3月、40人近い清掃関係労働者が解雇を余儀なくされました。
 本年6月、大阪・柏原市において委託清掃(ごみ収集)の職場へ、突然に随意契約から指名競争入札が導入され、雇用と職場確保に向けて労働組合(全国一般大阪・柏原委託清掃労組)を結成し、柏原市に対して以下の申入書を提出し交渉をすすめています。

「雇用と権利・生活と職場を守るたたかい(申入れ内容)」

 さて、貴市(柏原市)において40~50年の長年にわたり一般家庭ごみ収集に従事し、市民・住民サービスの向上に向け奮闘していたところ、貴市は本年6月、現在の4業者に新規3業者を加えた7業者で指名競争入札を強行しました(実施は2011年4月1日)。この入札の結果、新規3業者で全世帯数(30,601件)の7割超の21,484件(大紀は8,278件、蓬莱谷清掃は8,886件、近畿クリーンは4,320件)を確保しています。しかし、長年にわたり一般家庭ごみ収集業務を行ってきた4業者の収集件数(世帯数)は、浜浦クリーンが16,500件から3,117件と8割超減少し、橋本清掃は4,750件から4,000件へと750件減少、畑中清掃は3,850件から2,000件とほぼ半減しただけでなく、カツミ商会は6,200件がゼロ件となり、4業者全体で9,117件と現在の3割以下になっています。そのため、現在の4業者は事業の維持・継続はもとより、各業者の下で働く私たち労働者の職場確保と雇用問題に重大な影響を及ぼす事態を招いています。
 本来、一般廃棄物処理は、地方自治法で“自治体の固有の事務”と定められており、直営(公務員)がすべき業務であります。そのため、一般廃棄物処理に従事する業者は自治体の一部門的存在であり、その業者の下で働く労働者は準公務員的な地位にあるべきであります。
 そのことは、近隣の堺市や羽曳野市、大阪狭山市などにおいて、一般廃棄物処理に関わる労働者については準公務員として位置付け、随意契約が維持されていることでも明らかであります。とくに堺市では、市と業者の協議はもとより、市と委託清掃労働組合との間でも毎年数回の協議や情報交換を行い、家庭ごみ収集業務の遂行と市民・住民サービスの向上をはかっています。
 貴市においては、1960年頃、地方自治法に則り貴市直営で一般家庭ごみ収集を行っていましたが、直営だけでは収集が間に合わず、市民から多数の苦情が寄せられていた状況がありました。そうした状況を打開・改善するため、1961年頃より浜浦清掃(現・浜浦クリーン㈱)が貴市のお手伝いとして一般家庭ごみ収集業務を行ってきたのが、民間業者によるごみ収集業務参入の始まりでありました。その後、貴市の直営によるごみ収集業務は減少の一途を辿り、2000年頃以降は、市民生活や環境問題に直結した一般家庭ごみ収集業務はすべて現在の4業者(浜浦クリーン、カツミ商会、橋本清掃、畑中清掃)に任せきりでありましたが、一方で貴市は4業者に対し、一般家庭ごみ収集業務以外の事業を禁止する等の行政指導(圧力)を行ってきました。私たちは、柏原市のこうした行政指導は少なくとも、貴市が4業者の事業継続及びそこに働く労働者の雇用保障を前提としてなされたものと確信しています。それ故、貴市には現行の4業者の保護(事業継続)とその労働者の雇用保障の責任と義務が伴うと考えます。従って、私たちは長年にわたりごみ収集業務に従事してきた労働者の雇用保障を無視した貴市の今次の指名競争入札を断じて容認することはできません。
 地域新聞(柏原新聞)によれば「寡占状態の是正」、「年間約1億円の削減」の見出しの中、市の担当者は「『設計(最低制限)価格は人件費、車両価格、ガソリン代など十分考慮し、安定して事業を継続できる額とした』と話し、決して業者泣かせでない」旨の報道がなされています。この報道が事実とすれば、私たちは重大な疑問を持たざるを得ません。

 その第一に、同市は今次の競争入札導入に際し、過去数十年にわたり貴市の一部門的位置で一般家庭ごみ収集業務を遂行してきた業者及びその労働者の存在(貴市に対する貢献含む)をどのように評価していたのか明確にする責任があります。特に40数年にわたり貴市の一般家庭ごみ収集業務を行ってきたカツミ商会は落札に至らず、事業継続及び労働者の雇用保障が不可能な事態となっています。浜浦クリーンにおいても収集件数が8割超の削減で雇用問題を惹起させる事態を招いています。貴市はこのような事態を生じさせた責任をどのように考えているのか明確にする義務があります。しかも岡本市長は議会のなかで、長年にわたる収集業務の実績をもつ労働者の雇用保障(救済)についての質問に対し、「全く考えていない」と答弁する等、極めて無責任かつ不誠実な対応に終始しています。こうした岡本市長の態度は断じて許されるものではありません。

 第二は、今日、大阪府下の自治体はもとより全国的にも政策入札(総合評価方式=基準は価格、公正労働、環境、障害者雇用、男女平等等)を採用している自治体は広がっています。ところが、貴市は今次の指名競争入札において、入札参加資格(指名業者の資格及び選定基準等)を何ら公開していません。指名業者の資格及び選定について、いつごろ、どのような機関で、何を基準に決定されたのか、公表(公開)すべき義務があります。
 とりわけ、ごみ収集業者の入札参加資格いわゆる指名業者は、最低限でもごみ収集車の一定台数の保有が前提であるべきです。しかし、今次入札に参加した新規業者はいずれもごみ収集車を保有していない業者であると言われています。それ故、貴市の担当者は設定価格の中に車両価格を考慮しているとされていますが、一方で長年にわたりごみ収集の実績を持っている業者を結果として排除していることをみれば、これは全く無駄な経費であり、今回の競争入札の矛盾を浮き彫りにしていると言わざるを得ません。

 第三は、貴市の入札事業に関わる関係者らからも問題があると指摘されている(多くの一般市民ですらその噂は聞いている)棒によるくじ引きに拘り、他の方法を採用しなかったのか、公正・公平性、透明性を担保するためにも、当然、その理由を明らかにする責任と義務があります。

 第四は、区域割りと最低制限価格についても、貴市は、どのような基準で決定したのか明確にする責任があります。一般的に家庭ごみ収集業者が労働関係法令等を遵守し、正常な事業を遂行するためには、少なくとも収集件数は6,000~8,000件が必要であるとされています。何を根拠に、どのような理由・基準で7区域・平均4,000世帯前後にしたのか、また最低制限価格の積算基準、とりわけ一人当たり収集世帯をどのように設定しているのか、区域による価格差は何を基準に設定したのかなど、公平性・透明性を確保するためにも明らかにする義務があります。
 私たち柏原委託清掃業務に従事する労働者は、貴市との長年にわたる随意契約の維持により、賃金と労働条件、職場と雇用が安定・確保されることによって市民サービスを維持・向上につとめ今日まで懸命に奮闘、努力してきました。
 こうした長年の実績に基づく関係は今後とも維持・継続し続けていくべきであると確信しています。
 そのため、私たち柏原委託清掃労働組合は、貴市に対して今回の入札に至った経緯を明らかにするよう求めるとともに、入札を撤回し、随意契約の継続を求めます。
 ついては、私たちごみ収集業務に従事する労働者の生活・職場・雇用を守るとりくみについて、格別のご理解とご協力頂くよう要請しますとともに、本年9月17日までに貴市と当組合との協議の場(団体交渉)を設定し、その席上で下記の事項について、本年9月13日までに文書にてご回答・説明されるよう申し入れます。

1. 従来の随意契約から今回の指名競争入札に至った経過および指名業者の資格や選定基準を明らかにすること。
2. 家庭ごみ収集運搬業務に従事する労働者については、準公務員と位置付けること。
3. 現在の4業者に家庭ごみ収集業務以外の事業を禁止する行政指導を行ってきたことに責任を持ち、業者の保護(事業継続を可能とすること)及び労働者の雇用を保障すること。
4. 上記2及び3を基本に市民サービスのより向上をはかるため、指名競争入札が無かったものとして随意契約に戻すこと。

以 上

 以上の申し入れを行うなかで、困難なたたかいが予測されますが、全国一般大阪は職場の仲間の団結はもとより自治労府本部との連携を強化し、雇用と職場確保のたたかいに全力をあげて取り組みをすすめています。

4. 公共サービスの質の維持・向上に雇用の安定は不可欠

 他方で、東京都国分寺市では、自治労国分寺市職労が公契約条例制定運動の結果、公契約に関する「国分寺市の調達に関する基本指針」を2008年7月策定や千葉県野田市の公契約条例制定(2009年9月)など前進した取り組みを行っています。
 また、大阪段階においては、自治労府職などとともに、政策入札問題の学習会・集会や大阪府へ総合評価方式の導入要請行動などの取り組みをすすめてきました。全国一般大阪は、委託清掃関連やビルメン関連労働者の生活と雇用を守る具体的なたたかいとして、契約社員の正社員化のたたかいなど当該関係労組と連携を強めて取り組みをすすめてきました。
 民間委託や入札問題に関しては、社会的に随意契約は悪の温床のように言われていますが、橋や道路作りと違い委託清掃(ごみ収集)などは指名競争入札や一般競争入札にはなじまないのではないかと考えています。
 先ほども記述したように、ごみ収集などの委託問題では直営堅持を基本としつつ、民間委託する場合でも少なくとも随意契約とすべきであり、そのことによって職場で働く労働者の生活と権利・雇用と職場を守ることにより、公共サービスの質の維持・向上につながると考えます。
 最後に生活と権利、雇用と職場を守るためには随意契約の維持・継続が必要不可欠であると考えていますが、入札導入問題に備えて、公契約基本法・公契約条例・政策入札問題学習への取り組みをすすめていきたいと思います。