1. はじめに
① 目 的
砂川市立病院は、中空知における地域のセンター病院として、様々な指定を受けて地域に根ざした医療を提供しています。2008年からは、災害に強く高度医療に対応した病院を目指して、2011年10月の開院に向け改築工事が進められています。
また、2007年の財政健全化法の制定により、健全化の判断比率に病院事業会計などを含む連結実質赤字比率の考え方が盛り込まれることとなり、市立病院の経営が、まさに当市の生命線とも言える状況となっています。
市民にとっても、市立病院の改築を含めた経営状況について注目されていることから、本学習会を通じて市職員として市立病院についての基本的な事項について認識を高めるため企画いたしました。
② 対 象
砂川市役所職員、教育委員会職員(管理職を含む)
③ 開催日時
平成21年6月23日(火) 17:45~
④ 講 師
砂川市立病院 医事課医事係長 朝日 紀博 氏
⑤ テーマ
「砂川市立病院を知ろう!」
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中央奥 講師の朝日氏 |
学習会の状況 |
講演を真剣に聴く参加者たち |
2. 講演の概要
(1) 砂川市立病院の現状
① 砂川市立病院の概要について
診療科 ~ 18科 病床数 ~ 521床 職員数 ~ 732人 医師数 ~ 77人
② 主な指定の状況
・中空知地域センター病院
地域センター病院とは、プライマリ・ケア(初期診療)を支援する第二次医療機関であり、かつ、第二次保健医療福祉圏の中核医療機関をいいます。(道内では21圏域に分かれています。)
第一次医療圏のサービスの提供機能を広域的に支援するとともに、比較的高度で専門性の高い医療サービスを提供し、おおむね、入院医療サービスの完結を目指す地域単位となっています。
・へき地医療拠点病院
へき地における医療活動を継続的に実施できると認められる病院として指定されています。
・災害拠点病院
指定の要件および運営方針は下記のとおりです。
1) 24時間緊急対応可能な体制が確保されること。
2) 災害発生時に、被災地からの傷病者の受け入れ拠点となること。
3) 航空法上の基準を満たすヘリコプター離着陸場を有すること。
4) ヘリコプター搬送に同乗医師の派遣ができること。
5) 災害発生時には、消防機関(緊急援助隊)と連携した医療救護班の派遣体制が確保されること。
6) 医療救護チームの派遣に必要な医療資機材を備え、地域の医療機関へ応急資機材の貸し出し機能を有すること。
・そのほかに、第2種感染症指定医療機関、地域周産期母子医療センター、臓器の移植に関する法律に基づく臓器提供施設、地域がん診療連携拠点病院、病院機能評価認定施設、臨床研修指定病院の指定をうけており、特に地域がん診療連携拠点病院の指定は、全国どこに住んでいても質の高いがん医療が受けられるように厚生労働大臣が認定する施設であり、北海道空知支庁管内では当病院しか指定されていません。
③ 中空知医療圏の状況
・人口(2009年3月末)
圏域全体 126,401人 砂川市 19,562人
・高齢化率
圏域全体 38,565人(31.0%) 砂川市 5,819人(29.7%)
④ 医療圏内の医療機関の状況
一般の病床数のうち、自治体病院が担っているのは、1,206床のうち1,034床(85.7%)であることから、自治体病院の重要度は高い状況である。
⑤ 砂川市立病院の患者数の推移と状況
・推 移
区 分 |
2004年 |
2005年 |
2006年 |
2007年 |
2008年 |
1日平均患者数
(2008) |
入 院 |
161,550 |
161,418 |
153,207 |
145,954 |
139,659 |
382.6 |
外 来 |
279,580 |
281,060 |
266,596 |
257,468 |
255,672 |
1,043.6 |
合 計 |
441,130 |
442,478 |
419,803 |
403,422 |
395,331 |
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・状 況
入院患者の砂川市民の構成比は28.6%であり、外来患者の構成比では40.0%となっている。どちらも半数以上が市外からの患者であることから、地域センター病院として重要な役割を担っている状況です。
⑥ 収益的収支の状況
2004年度から2005年度に黒字が減少している。要因は次のことが考えられる。
・診療報酬のマイナス改定
・患者数の減少
・物価の上昇
・人件費・材料費の増加
⑦ 一般会計負担の状況
砂川市の一般会計より、地方公営企業法の基準に基づき、繰り出し金が支出されている。
2004年度から2007年度においては、平均年間約6億円が繰り出されている。
(2) なぜ市立病院の改築が必要か
① 病院経営の背景(諸計画)
・国の動き
1) 地域医療の確保と自治体病院のあり方等に関する検討会報告書(2004年11月)
2) 自治体病院改革ガイドライン(2007年12月) → 2008年度に改革プランを策定
3) 公立病院に関する財政措置のあり方等検討会報告書(2008年11月) ・北海道の動き
1) 北海道周産期医療システム整備計画〈改訂版〉(2007年12月)
2) 小児科医療の重点化計画(2007年12月)
3) 自治体病院等広域化・連携構想(2008年1月)
4) 新・北海道保健医療福祉計画(2008年3月)
5) 北海道医療計画(2008年3月)
6) 北海道医療費適正化計画(2008年3月)
7) 北海道がん対策推進計画(2008年3月)
8) 北海道感染症予防計画〈第4版〉(2008年3月)
② 公立病院改革ガイドライン(2007年12月~総務省通知)
「経営効率化」「再編・ネットワーク化」「経営形態の見直し」の3つの視点に立って、公立病院改革を推進し、各自治体においては、改革プランを策定し、地域医療を確保しなければならないこととされている。
③ 自治体病院等広域化・連携構想
上記ガイドラインによる改革プランを受けて、北海道では自治体病院等広域化・連携構想を策定(2008年1月~北海道保健福祉部)した。
その構想の中では、道内すべての市町村立病院を対象とし、全道を30区域に分ける設定となっている。
中空知は2分割されており、その一つが砂川市を含む4市3町で区分けされ、各区域において協議・検討を行うこととされている。 ・広域化のメリットとデメリット
メ リ ッ ト |
デ メ リ ッ ト |
医療提供体制の継続性、安定性 |
地域住民の利便性の低下 |
良質、安全な医療の提供 |
通院に要する経費負担の増加 |
病院経営の健全化 |
医療機関の規模縮小による住民の不安感 |
救急医療体制の確保 |
中核的病院への患者の過度な集中 |
医師の労働環境の改善 |
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④ 病院改築の必要性
・大規模災害へ対応できるような災害拠点病院である。
・砂川市立病院が担うべき医療への対応として、様々な指定病院となっている。
・安全・安心・快適な医療環境を提供するための対応が必要。
⑤ 新病院(改築後)の計画概要
2008年に事業着手し、2010年10月に開院、2012年夏に事業完了予定。
・延べ床面積 本館(地上7階/免震構造) 35,297.21㎡
南館(地上6階/免震構造) 6,201.40㎡
立体駐車場〈地上4階〉 14,918.42㎡
・診療科目は18科、病床は506床(うち一般病床408床)を計画。
・未来像(目指すべき医療)
1) 北海道医療計画に基づき、4疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)と5事業(救急医療、災害医療、へき地医療、周産期医療、小児医療)を計画。
2) 質の高い総合的・全人的医療の提供を目指し、救命・救急医療(救急外来、救命集中治療センター、ICU、HCH)、急性期医療(重症病室、各種医療機器整備)、がん診療(外来化学療法室、無菌病室、ケミカルハザード室、PET-CT)、周産期医療(小児・周産期センター、MFICU、LDR、NICU、GCU)、災害医療(免震構造、屋上ヘリポート、備蓄倉庫、DMAT隊員)、高齢者認知症対策(重症病室、専用病棟)を計画。
⑥ 地域医療連携による医療の確保
地域医療連携とは中核病院・かかりつけ医療機関などが、それぞれの役割分担を明確にして、お互いが協力し地域医療を支えていく必要がある。
⑦ なぜ今、医療連携が必要なのか
・圏域内の医師が不足している。(特に勤務医が不足している状況である。)
・「自己完結型医療」から「地域完結型医療」へ変化してきている。
・圏域内にある医療資源を最大限に有効活用するべきである。
・医療を中心とした保健・福祉〈介護〉等が一体的になったケア体制を確立しなければならない。
・地域医療連携に関する主な取り組み
1) 病院連携(自治体病院同士の医療連携)
2) 地域医療連携室の設置
3) 医師派遣事業
4) ITによる地域医療連携
5) がんと地域医療連携
6) 認知症と地域医療連携
・医療には市町村の境界線は存在しない。
・市町村合併の破綻 → 地域医療連携を進めるためには、市町村合併に見られる「地域のエゴ」を払拭しなければならない。
(3) 今後の砂川市立病院のあり方
~地域に必要な自治体病院として~
住民から本当に残ってほしいと思われる病院とならなくてはならない。そのためには、「利潤の追求」と「公共性の発揮」を両天秤に掛けながら、バランスのとれた公民共同体制で「民がなすべきは民に」「公がなすべきは公に」「民と公でなすべきは共に」を目標に掲げ、病院長のリーダーシップはもとより、開設者とのパートナーシップ、職員のプロフェッショナルシップ、住民とのフレンドリーシップの向上が必須であり今後のカギと思われる。
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