【自主レポート】 |
第33回愛知自治研集会 第5分科会 医療と介護の連携による安心のまちづくり |
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はじめに 地域医療の充足の可否は、住民の生命と健康に直接関わる問題であり、地域医療の水準を確保するためには行政が地域医療圏の策定や計画にとどまらず、常に関与していかなければならないことが明らかになってきた。 1. 茨城の公的病院の危機的状況 県内の医療従事者数(医師数全国46位、看護師数44位)は全国最下位の水準で推移し、県内の公立病院の医療体制はさんたんたる状況で、県立中央病院の小児科・産婦人科病棟の休止、北茨城市民病院の老朽化と医師不足、日立製作所日立総合病院「地域周産期母子医療センター」の医師不足による診療機能の休止、つくば市立病院の医師不足による診療科の休止、笠間市立病院は医師不足、東海村立病院・小川町国保病院は指定管理者へ移譲、茨城町国保病院は廃止、筑西市民病院は診療科休止など機能不全となっている。茨城県は医師不足対策として、医師養成の奨学金制度の創設、筑波大学、東京医大霞ヶ浦医療センターとの医療連携を促しているが、医師不足からの脱却の方向性がみえていないのが現状である。 2. 医療のリスク、施設の減少 2006年2月、福島県立大野病院で帝王切開の手術中に女性患者(当時29歳)が失血死し、産科医が逮捕された事件以降、少ない医師で激務の地域医療を担っている実態が明らかとなった。一方、この事件を機に産科医、小児科医、麻酔科医などリスクの高い診療科を希望する医師が少なく診療科の偏在が議論されてきた。 3. 地域医療を壊してきたもの 自公連立政権下で、総務省は2004年11月「地域医療の確保と自治体病院のあり方等に関する検討会」の報告で、二次診療圏単位に「基幹病院」は一つ、周辺の病院は「後方支援病院」や診療所にするという「サテライト構想」を発表、2005年4月に「自治体病院再編等推進要綱」を都道府県に通知している。 4. 笠間市立病院の医療充実にむけたシンポジウムの取り組み (1) 取り巻く医療環境と課題 (2) 経営形態の見直しの動き (3) 地域医療シンポジウムで求めた課題 |
(医療連携図)
5. 一次救急医療体制を市立病院がセンターで行う (1) 民営化を含めた「報告書」を棚に上げ、直営で市立病院を運営する (2) 4月から一次救急医療のセンターとして稼動
■平日夜間………………医師1人 看護師2人 薬剤師1人 医事1人 ■土・日曜日、休日……医師1人 看護師2人 薬剤師1人 医事2人 救急患者を断ったケースは、レントゲン及び検査が必要な患者、乳幼児、眼科です。一次救急医療で検査が必要な患者は中央病院で診療するとの機能分化が明確にされており、今のところ患者や市民から不満や苦情は寄せられていない。一方、一次救急医療を事業収支で見ると、収入に対して支出が大きく上回っており、平日夜間と日曜日あわせて毎月約200万円の持ち出しが増えている(もちろん医業費用として一般会計から繰り入れているので、市立病院事業会計として赤字が出ているわけではない)。休日・夜間診療を行っている他の自治体と比較すると、当市の持ち出しは決して高くはないが(常総市などに比べると低いくらい)、議会から一次救急の是非の意見が出てくることが予想される。 (3) 一次救急医療の今後の課題 6. 「質の高い」医療を病診連携・在宅医療で提供できる これまで県立病院をはじめとした大病院に受診すると、何でも診てもらえるので「安心」という患者の要望が病診連携を阻害してきた。今回、病診連携で医療の「質」が確保でき、在宅医療で生活の「質」が確保できるなら長期入院の弊害が減少し患者にとっても幸せであることを知っていただく目的でテーマとした。佐藤先生(医師会開業医)は「笠間地域では県立中央病院の呼吸器内科の連携が非常にうまくいっている」「医療側の効率的で質の高い医療を目指すには医療連携は必須で、ガン患者の在宅医療は綿密な連携を取ることで在宅療養ができる環境を目指している」「訪問看護ステーション、ケアマネージャー、ヘルパーと集まって在宅の患者さんを支える仕組みづくり」をはじめたと話された。病診連携によって、県立病院、地域病院、クリニックが相互に特徴を理解して連携した診療が行えるなら、病院は人材および医療機材の重装備化を避けることが可能であり、地域資源(訪問看護ステーションなど)のレベルアップにつながることが明らかとなった。また、市立病院は「開業医の先生方の訪問医療患者の病状悪化時には24時間バックアップ病床を確保している」ことが地域医療として重要であり市立病院の役割であることが確認された。山口伸樹笠間市長は「高齢化率が24%近くなっているので足の確保というのが一つの行政課題でありデマンド交通をスタートさせた」、より高齢者の医療アクセスができるようデマンドタクシーの経路・乗降の見直しをすすめると応じた。4月以降、運行コースの見直しが実行された。 7. 最後に (1) 公立病院には財政援助の必要性 (2) 市民の意識変化を促す |