1. はじめに
本園は京都府の南部、八幡市に位置し、園周辺は田畑に囲まれ、近くには神社や木津川の流れ橋、公園などが整備され、四季折々の美しい景色が一望できる環境の中にあります。
1986年4月より、園児数の減少などにともない隣接する幼稚園と統廃合し、それ以降、幼保一元化施設、通称「有都幼児園」として開設しています。3・4・5歳児は保育園児と幼稚園児がクラスに混在し、保育士と幼稚園教諭が同じ職場で保育にあたっています。
1998年までは60人程だった園児数が、近くの宅地開発の影響で、2006年には2倍近くまで増加しました。
0歳~2歳児は、保育園児のみで、児童福祉法に基づき長時間保育を実施しています。
3歳~5歳児は、幼・保合同のため、児童福祉法に教育要領を取り合わせた保育内容で、短時間・長時間保育を実施しています。給食は全園児完全給食です。
2. 園児数
|
保育園児 |
幼稚園児 |
0・1歳児 |
8 |
|
2歳児 |
11 |
|
3歳児 |
13 |
16 |
4歳児 |
16 |
13 |
5歳児 |
20 |
15 |
計 |
68人 |
44人 |
|
|
ゆり
ホーム |
ひまわり
ホーム |
すみれ
ホーム |
さくら
ホーム |
3歳児
|
保 |
3 |
3 |
3 |
4 |
幼 |
4 |
4 |
4 |
4 |
4歳児 |
保 |
4 |
4 |
4 |
4 |
幼 |
4 |
3 |
3 |
3 |
5歳児 |
保 |
5 |
5 |
5 |
5 |
幼 |
3 |
4 |
4 |
4 |
計 |
23人 |
23人 |
23人 |
24人 |
|
3. 本園の教育(保育)方針
〈目標〉心身ともに健康で、生き生きと活動し、自分らしさが表現できる子を育てる。
〈基本方針〉
・子どもたちが主体的、意欲的に取り組む保育環境の工夫と援助をする。
・異年齢交流が活発にできる環境と援助の在り方を工夫する。
・地域の人々との触れ合いを大切にする。
〈望ましい園児像〉
・素直で明るい子ども
・健康で生き生きとした、たくましい子ども
・自分で考えて行動する子ども
・思いやりのあるやさしい子ども
4. テーマ設定の理由
近年、コンピューターや携帯電話等の普及により、人と人とが会って話をせずに物事が進む非常に便利な時代です。反面、人との関係は希薄化しつつあります。
園の子どもたちを見ると、言葉で思いを伝えられなかったり、親や祖父母がすぐに手を貸し、世話をやくためか、指示待ちの姿が多く見られたりします。そこで、自分の思いを言葉で表したり、人に思いを伝えたり、人の話を聞いて理解する力を育てるためにはどうすれば良いのか考えました。互いの思いを伝え合い友だちとのつながりを育てるため、園の恵まれた自然環境を生かし子どもたちの「育ち」を捉えていくことにしました。
5. 内 容
身近な自然を通して、感動体験ができる環境の年間計画を見直す。
・飼育・栽培活動をする中で友だちと力を合わせ、世話をしたり収穫したりする楽しさが味わえる環境作りを考える。
・思いを伝え合い、つながりを持って遊びを進められる環境を探る。
・収穫物を使ってのクッキング活動をする。
・保育のカンファレンスをする。
|
栽 培 活 動 |
そ の 他 |
3歳 |
4歳 |
5歳 |
園内外の活動 |
4 |
|
とうもろこしの種まき |
散 歩 |
5 |
プチトマト |
つるなしいんげん |
ピーマン |
青虫を育てる・草花つみ・ひまわりの種まき・メダカ・カブトエビとり |
いちご摘み・えんどう豆収穫・とうもろこしの苗植え |
6 |
・たまねぎ抜き・じゃがいも掘り
・さつまいも苗植え・田植え |
蛙捕り・小動物飼育
(蛙・カブトムシ・かたつむり等) |
7
|
夏野菜収穫
(とうもろこし・きゅうり・とまと・ゴーヤ)
|
⑤ザリガニつり・せみとり |
|
枝豆収穫
|
|
8 |
とうもろこし・ゴーヤ収穫
|
|
9 |
|
だいこん・にんじんの種まき
|
バッタとり
(かなへびの赤ちゃん育てる) |
10 |
枝豆収穫 |
稲刈り
|
どんぐり拾い・市民体育館まで行く |
さつまいも収穫
|
|
11 |
えんどう豆種まき |
たまねぎ苗植え
|
|
チューリップ・クロッカス
|
|
12 |
水栽培・ヒヤシンス・だいこん抜き
|
|
1 |
|
|
にんじん収穫 |
霜・氷遊び・凧揚げ |
2 |
|
じゃがいも
種芋植え |
|
雪遊び |
3 |
|
|
|
ウォークラリー(春探し) |
3歳児 ぱんだ1組 「友だちと一緒にできた喜びを味わった」事例
10月28日、ぱんだ1組・2組で枝豆の収穫に出かける。畑に着き、枝豆を皆で確認し合うと興味を持ち、「よーし!」とやる気満々な姿があった。1人で枝豆を引き抜けない事に気付き、友達と一緒に抜き始めた。「先生、無理」とすぐあきらめる子、「よいしょ、よいしょー」と根気よく友だちと頑張り「ぬけたー」と喜ぶ子と様々な姿がある中、2本なかなか抜ききれない。1人2人と抜ききれない枝豆に手を添える子どもたち、保育者も加わり皆で「よいしょ、よいしょー」と力いっぱい頑張り抜けた。「ぬけたー、よかったなー、すごいなー」と皆で喜び合い、それぞれ枝豆を持って園にかえった。 |
<考察>
・一人で出来ないことも、友だちと協力しできた喜びを味わうことができた。
3歳児 ぱんだ2組 「友だちを頼り、頼りにされる嬉しさを味わった」事例
10月末、ホーム(異年齢クラス)で、異年齢児と手をつないで畑へ行き、さつま芋を掘りはじめる。4・5歳児は経験もあるのでどんどん掘り「大きいのがとれた」「こんな小さいのもあった」「もう5個もとれた」等口々に言う。
3歳児は、なかなか芋が出てこない為、傍にいる4・5歳児の様子を見ていた。自分の分を掘り出せた4・5歳児が、まだ掘り出せていない3歳児に気づき「手伝ったげよか」「うん!」といって一緒に掘りはじめる。次々と芋が出てきて嬉しそうに袋に入れた。 |
<考察>
・ホーム保育(異年齢保育)をする事で、異年齢の関わりが自然と持てるようになっている。
・年少児を手伝い喜んでもらったことで、人の役に立てた事に嬉しさを感じた。
4歳児 くま組 「人の役に立てた嬉しさを感じた」事例
10月、Aが父と捕ってきたザリガニをバケツに入れ園に持ってくる。飼育ケースに入れ替え見やすくする。小動物が好きな子の数人は興味を持ち観察するが、Aだけが触ることができた。ある日、Aがザリガニ3匹の名前を決めたいと言ったので皆で考えて、名前を付けた。その日を境に世話をしたがる子が増え、クラスで当番活動が始まった。
ある日、Bがテラスの手洗い場で世話をしようとするが怖くて触れない。何度か触ってみようと挑戦するが触れず、部屋で遊んでいたAを呼んできた。「ザリガニつかまえて」「これはどうやってするの?」と教えてもらい、力を合わせて世話する事ができ、2人で仲良く部屋に持ち帰った。AはBに頼りにされ、とても嬉しそうにしていた。 |
<考察>
・ザリガニの世話をする事で、友だちを頼りにしたり、頼りにされたり、友だち同士で何かをする事の嬉しさを味わう事ができた。
5歳児 ぞう組 「幼虫の飼育を通し、友達関係が広がった」事例
7月、アゲハの幼虫がいる金柑の鉢植えを保育室に置き、その成長を見ることにした。毎日鉢植えの前に立ち、友だちと幼虫の数を数えたり、触ったり日々大きくなっていく様子を見ていた。登園する度「ウンチいっぱいやな」「ウンチ大きいな」などと会話しながら交代で自発的に掃除する姿が見られた。
ある朝、幼虫が1匹いないことに気づいた子が保育者に知らせに来る。それを周りで聞いていた子も「えーほんま?」と数えだし、「ほんまや、いいひん」「どこいったんやろ」「たいへんや」「さがさな!」とクラス中に伝わり、皆で捜し始める。以前ロッカーの隅で、さなぎになっていた事を皆知っていたので、少し離れた所や隅まで友だちと楽しそうに捜していた。窓の所に張り付いていたボードの端にいる所を見つけ「あっ、いた」の声に「どこどこ」と次々集まり「こんなとこまで、きたんか」「すごー」「よかった、よかった」「すごいなー」等と発見出来た事を次々伝え、喜び合っていた。 |
<考察>
・飼育ケースではなく、大きな鉢植えその物を部屋に置く事で、保育室全体が飼育の場となり幼虫が何処に移動し、何処でさなぎになるかわからないワクワク感が子ども同士の共通の話題となり友だち関係が広がった。
6. 成果と課題
・いろいろな飼育・栽培活動に取り組む中で、友だちと協力したり助け合ったりする気持ちが育ってきている。
・野菜を栽培、収穫し、クッキングをして、一緒に会食する事で話がはずみ子ども同士のつながりを持てる場となった。また、作って、食べるという共通の感動体験ができ、友だち同士のつながりが広がる活動となった。
・子どもの心をゆさぶるような、感動体験が経験できる環境や援助の仕方を考えていきたい。
・これからも、友だちとのつながりを持てるような自然体験を工夫し、一人一人の育ちを丁寧に見ながら援助を考えていきたい。 |