【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第6分科会 自治体から子育ち支援を発信する

 いづみ保育園は「同和」地域の中に位置し、1976年に地域の女性達の要求で「就学前教育の保障」と「就労保障」のために開園しました。現在は地区、地区外の子ども達の混在保育園となっています。子ども達や家庭を取り囲む環境の変化などにより、人とのふれあいがうまくできなくなってきたため、2001年から異年齢児保育を実践し、成果をあげてきました。このレポートでは、その実践の報告をします。



異年齢児保育を通じての仲間づくり


京都府本部/井手町職員組合・いづみ保育園 横田加代子

1. はじめに

 井手町は木津川の右岸地域に位置し、国道24号線が併走する古都、京都と奈良の中ほどに位置しています。井手町は自然にも恵まれ、春には町を東西に流れる日本六玉川のひとつである玉川の両岸に桜と町の花の山吹が咲き乱れ、町内外から訪れる人々の目を楽しませてくれます。夏には清流に源氏ボタルの涼やかな光も見られ、四季折々に咲く草花は井手の里山や野を彩ります。
 井手町の人口は8,591人(2007.10.1現在)。この内の約3分の1が「同和」地区で、いづみ保育園は井手町南部住宅街の「同和」地域の中に位置し、1976年に地域の女性達の要求で「就学前教育の保障」と「就労保障」のために開園しました。現在は地区、地区外の子ども達の混在保育園となっています。

2. 園児数と職員構成(2008年4月現在)

クラス名
年齢
在籍数
担任
ひよこ
1歳
6
2
うさぎ
2歳
13
3
きりん
3歳
18
1
合 計
37
6
職員構成
園 長
1
担任保育士
3
家庭支援推進保育士
1
非常勤職員
5
給食調理師
1
給食非常勤調理師
1
園務員
1
合  計
13

 いづみ保育園では保育目標を次のように掲げ、日々保育をしています。
  ・基本的生活習慣を身につけた子ども
  ・よく観てよく聞き自分の考えを表現できる子ども
  ・豊かな感性を身につけた子ども
  ・友だちを大切にし仲間作りのできる子ども

3. 子どもをとりまく現状

 井手町においても、子ども達を取り巻く環境は核家族化・少子化が増加し、子ども達や家庭を取り囲む環境の変化などにより、早くからビデオやテレビゲームなどの遊びが生活に入り込み、自然とのふれあいや親子間・地域とのつながりなど、乳幼児期から体験させたい深まりのある人間関係も確立しにくくなってきています。子ども達にも、手をつなぐことを嫌がったり、午睡時保育士にとんとんと触れてもらうことを嫌がったり等、人とのふれあいがうまくできなくなってきている姿がみられるようになってきました。
 このような現状の中で、子ども達に同年齢の仲間作りだけでなく、異年齢児の仲間作りを通して人とのふれあいや思いやりややさしさを感じてほしいと思い、2001年から異年齢児保育を実践してきました。

4. 2008年度異年齢児保育の取り組み

① あそびの広場 ― いちご・パイナップル・ポテトの3つのたてわりグループにわかれ、週1回一緒に活動する。
  <ねらい>
   ・人とのふれあいを大切にする
   ・思いやりの心を育てる
   ・やさしさを感じる
  <おもな活動>
   ・リズム遊びを中心としたふれあい遊びをする
   ・行事に応じた製作をする
   ・グループに別れ自由遊びをする
② じゃれあいタイム ― 毎朝9:00より10分程度
  <ねらい>
   ・保育士や友だちとのふれあいを楽しむ
   ・豊かな感性を育てしなやかな体づくりをめざす
  <おもな活動>
   ・わらべうたに合わせスキンシップをはかる
   ・表現遊びをする
③ 菜園活動
  <ねらい>
   ・食に対する感謝の気持ちや命の大切さを培う
  <おもな活動>
   ・保育士と一緒に野菜を植える
   ・収穫する
④ ランチルーム
  <ねらい>
   ・「いただきます」「ごちそうさま」のあいさつを大切にする
   ・楽しく食事をする
  <おもな活動>
   ・2、3歳児が給食やおやつをランチルームで一緒に食べる
   ・あそびの広場の日、誕生日会は1歳も加わる
   ・三原色のタペストリーに、毎日給食で食べた食材(フェルトで作ったもの)を
    保育士と一緒につける
⑤ クッキング
  <ねらい>
   ・収穫の喜びをみんあで味わう
  <おもな活動>
   ・野菜を洗う、皮をむく、ちぎる、折る

5. 次世代交流

  ・老人クラブとの交流―さつま芋の苗植え、芋掘り、焼き芋パーティー
  ・児童館との交流―映画会、お餅つき、クリスマス会など
  ・大正琴クラブとの交流―解放文化祭合同発表
  ・中学生との交流―ボランティア体験学習に来園
  ・子育て支援センターとの交流―おでかけ広場参加

6. おわりに

 子ども達の発達段階を大切にしながら、楽しく遊べるふれあい遊びの場を繰り返し続けてきたことで、年齢の低い子ども達でも仲間とふれあうことが楽しく感じられるようになってきました。ふれあい遊びを経験することで、異年齢児とのつながりもでき、また保育士も自分のクラス以外の子ども達に関わることで、多くの保育士が子ども達のいろいろな面に気づき、話をすることで保育士間の連携も深まりました。ふれあい遊びを通して、日々の生活の中にも異年齢児との仲間意識ややさしさが自然に育ってきているように思います。
 また、地域の人たちとの交流をさらに深め、人とふれあうことの心地よさを経験させていきたいと思っています。今後も異年齢児が一緒に過ごして楽しいと思える取り組みを続けて行きたいと思います。