【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第8分科会 地方再生とまちづくり

 函館市近郊5市町村が合併して、約5年半が経過した。この間、それぞれの地域の特色を生かしながら、市としてのさらなる発展を目指し市政運営を行ってきているが、一方で、長引く景気低迷や出生数の減少や人口流出による人口減少が続き、様々な課題に直面していることから、2006年、2008年に引き続き市民・組合員へのアンケートを実施し、これまでの結果との比較・検証により、今後のまちづくりの方向性を探るものである。



市町村合併後の住民意識の変化とまちづくりの課題


北海道本部/函館市職員労働組合 隼人 聖児

1. 調査概要

① 調査期間 組合員  2010年5月27日~6月18日
       市 民  2010年6月1日~6月30日
② 配布数  組合員  1,626人(※2008・1,844人、2006・2,081人)
       市 民  1,000人(※2006、2008・1,000人)
       ※市民のうち700人は電話帳・住宅地図から無作為抽出にて郵送。
        (旧函館・500人、旧戸井・40人、旧恵山・60人、旧椴法華・20人、
         旧南茅部・80人)
       ※残りの市民300人分については、地区連合傘下の組合員および家族へ依頼
③ 回収数  組合員  1,037人
       市 民   424人
④ 回収率  組合員  63.8%(※2008・66.2%、2006・66.2%)
       市 民  42.4%(※2008・48.3%、2006・51.0%)
⑤ 調査内容 別紙・アンケート用紙のとおり
       (調査項目については、2006、2008年実施時と同じもの)

2. 各調査項目結果

(1) 合併の感想(設問6)
① 組合員・市民双方とも、半数以上が「わからない」と回答。
  市民・組合員ともに、否定派が賛成派を上回っている。
② 地域別にみると、旧函館居住者は肯定派が否定派を上回っているのに対し、旧4町村の市民は、肯定派(6.1%)を否定派(57.6%)が大きく上回っている。

(2) 合併によるプラス効果(設問7)
① 組合員については、「地域の連帯感」、「経済・産業」の順に高く、その他はバラツキがある。地域別にみると、戸井・恵山では「公共施設」、南茅部では「行政サービス水準」が高順位。
② 市民については、「公共施設」、「環境衛生事業」、「地域の連帯感」の順に高い。地域別にみると、戸井・恵山では「公共施設」、南茅部では「経済産業」が高順位。

(3) 合併によるマイナス効果(設問8)
① 組合員については、「行政サービス水準」、「地域の連帯感」、「保健・医療・福祉水準」の順に高率。「行政サービス水準」については、旧函館11.8%に対し、旧4町村24.4%ととほぼ倍になっている。
② 市民については、「保健・医療・福祉水準」、「経済・産業」の順に高率。地域別にみると、旧函館、戸井、南茅部ではほぼ同様の結果であるが、恵山では「環境衛生事業」、椴法華では「行政サービス水準」、「地域の連帯感」が高順位。

(4) 設問7と8の総合検証
① 双方共に、無回答(Non Answer)がほぼ5割を超えている。特に、旧4町村地域のプラス効果の回答率が低い点が顕著。
② 地域の連帯感について、旧函館は組合員・市民ともにプラス効果に挙げているが、旧4町村では、組合員(プラス18.5%:マイナス30.5%)・市民(プラス13.4%:マイナス18.2%)ともにマイナス効果に挙げている率が高い。

(5) 市民の満足度(設問9)
① 組合員は市民の「満足:不満足」を17:59と回答。これに対して、市民は「満足:不満足」を42:45と回答している。
  旧4町村については、組合員・市民ともに10:73と回答しており、不満足の割合が高くなっている。
② 設問6で「合併しないほうが良かった」と回答した組合員の8割、市民の7割が不満足と回答している。

(6) 市民の満足点(設問10-1)
① 組合員・市民ともに、「自然・気候」がトップで、順位は異なるものの「公共施設」「買い物の利便性」が2・3位に位置している。
② 旧4町村においても、「自然・気候」がトップであるが、その他については、満足点についての回答が少なかったこともあり、横並びであった。また、設問6で「合併して良かった」と回答した市民の約3割が「文化・教育環境」を挙げている。

(7) 市民の不満足点(設問10-2)
① 組合員・市民ともに、「労働環境」をトップにあげているが、市民は「福祉・医療」、「余暇の場所・機会」が、組合員は「行政サービス」、「余暇の場所・機会」が2・3位となっている。
② 地域別にみると、ほぼ上記の4項目が上位を占めているが、旧函館の市民は、「公共施設を」を3位にあげている。
③ 設問6で「合併しないほうが良かった」と回答した市民の約5割、組合員の7割が「労働環境」を挙げている。

(8) 市政の課題点(組合員のみ・設問11)
① 7割が「ある」と回答し、課題点として「予算・財政負担」「市民ニーズとの不整合」の順に挙げている(約5割)。また、椴法華・南茅部では「合併による地域間バランス」を7割の組合員が挙げており、旧4町村総体でも58.5%と高率である。同様に、設問6で「合併しないほうが良かった」と回答した組合員の4割が「地域バランス」を課題として挙げている。

(9) 市の将来像(組合員設問12・市民設問11)
① 組合員・市民ともに「福祉都市」をトップに、順位は異なるが「国際観光都市」、「水産海洋産業」をその次にあげている。トップの「福祉都市」については、市民37.4%に対し、組合員45.5%と較差がある。
② 地域的にみると、旧4町村組合員は、「福祉都市:水産海洋」が51:35であるが、市民は38:44と水産海洋が上回っている。
  なお、「新たな合併」を選択したのは、旧椴法華地区市民の約13%以外は、市民・組合員ともに1割未満である。

(10) 今後のまちづくりの進め方(組合員設問13・市民設問12)
① 組合員・市民ともに、「予算規模にあわせた規模縮小」、「NPO等の活用」、「地域活動の発展」が上位を占めており、地域別でも順位は異なるが同様の結果であった。

(11) まちづくりと市役所の関わり方(組合員のみ・設問14)
① 「市民と協働してすすめる」が約過半数を占める。また、「小さな市役所をめざす」については、旧函館では31.0%、旧4町村では26.8%を占めている。

(12) まちづくり活動への意欲(組合員・設問15~16)
① 総体的には、性別・年代・職種を問わず、現在参加していない組合員が約6割にのぼる。
  一方、地域別にみると、旧4町村地域では過半数が参加しているのに対し、それ以外は7割が参加していない状況にある。
② 現在、活動に参加している組合員の約7割が、引き続き活動を継続する意思をもっており、性別・年代・職種・地域に差異はない。
③ 現在、活動に参加していない組合員について、総体的には今後の参加意欲ありと回答したのが41.8%で、意欲がないと回答した28.1%を上回った。特に、性別では女性、年代別では20代と50代、地域では旧4町村在住者の参加意欲が高い(過半数)が、それ以外の層においては「積極派:消極派」の割合は、男性はほぼ拮抗、旧函館は41:29となっている。

(13) まちづくり活動の参加状況(市民・設問13)
① 現在活動している市民は総体で約12%で、今後活動してみたいと考えている人は約35%、関心のない人が約50%で消極派が上回り、男女ともに同様の傾向にある。
② 年代別に比較すると、50代は活動に対し積極的である一方、その他の世代は消極派が上回っている。
③ 地域別の比較では、戸井・椴法華について参加率は4割以上と高く、両地区で活動に参加していない人の今後の参加意欲も高い。他の地域については、全体傾向とそれほど差異はないが、旧函館で活動に参加していない人の今後の参加意欲は積極派が上回っている。

3. 2006・2008調査結果との相違点

(1) 合併の感想
 市民の回答において、これまで肯定派が否定派を上回っていたが、今回は逆に否定派が上回り、肯定派の2倍以上であった。一方、組合員の回答において、これまでどおり否定派が上回っているが、今回は若干賛成派が前回と比べ増加し、その差が縮まった。

(2) 合併によるマイナス効果
 ワースト1にあげられたのは、従来と変わらず、組合員は「行政サービス水準」、市民は「保健・医療・福祉水準」であり、その割合も上昇している。

(3) 市民の満足度
 市民・組合員の回答において、ともに「市民の不満足度」が増加している。
 (市民44%→48%→56%、組合員49%→63%→73%)

(4) 市民の不満足な点
 市民・組合員の回答は、ともにこれまで「労働環境」、「福祉・医療」、「行政サービス」が上位であったが、今回、市民は「行政サービス」が、組合員は「福祉・医療」がともに「余暇の場所・機会」に代わった。

(5) 市政の課題点
 「ある」と回答した組合員の比率、課題点の「予算・財政」「市民ニーズとの整合性」を挙げた比率は前回からは減少した一方、職員不足は増加している。(15.5→16.3→22.7)

(6) 市の将来像
 上位3項目は変わりないが、市民は「水産海洋産業推進」が2位に返り咲き(2006・2位、2008・3位)、組合員は「国際観光都市」の比率が上昇し、1位の「福祉都市」にかなり接近した。

(7) まちづくり活動の参加状況
 前回上昇傾向であった「機会があれば参加したい」、「既に行っている」が、今回は減少し、「全く関心がない」が上昇(7.2%→16.3%)した。

4. 調査結果から推察される課題点

① 5年半が経過したが、大多数は合併の是非を判断できない人が多い。これは、合併により具体的なプラス面、もしくはマイナス面が生じていないと捉えてよいものか、さらに精査する必要がある。
  市民の回答において、「合併しない方が良かった」と感じている人が大きく増加している一方、組合員の回答において、合併に対する意識が前回と比べ若干良い方に改善している。何故、市民と組合員とでこのような違いが出たのかあわせて精査する必要がある。
② 旧4町村においては、「地域の連帯感が下がった」と感じている人が増加している。全市的に人口減少しているが、特に4支所管内から極端な人口流出があった訳ではないことから、合併に伴う要因なのか精査する必要がある。いずれにせよ、4支所地域がこのまま衰退するのではく、活力を感じられるような取り組みが必要である。
③ 現在の市政(市役所)に対し、約半数の市民が不満足と回答している。さらに、その不満足な点として、「行政サービス水準」が高位を占めていることは、市職員として真摯に受け止めなければならない。また、「余暇の場所・機会」に対する不満が増加していることから、そこの対策も進めていかなければならない。
④ 組合員は、今後のまちづくりの進め方について、「予算の縮小」に代わるものとして「市民との協働」を掲げているが、一方で現在のまちづくり活動への参加状況は、全体で3割弱にとどまっている。また、市民については現在の参加率が低いだけでなく、今後の参加意欲も低いことを考えると、まちづくり活動への意欲喚起が早急に必要である。

5. むすび

 今回のアンケート調査により、先述のとおり、当市のまちづくりを進めていくうえでの、いくつかの課題点が認識できた。また、2年前、4年前の調査時と比較して、項目によっては住民意識の変化も見受けられた。
 いずれにしても、今後、住民にとって住みよい、輝きのあるまちづくりを追求していくために、これら課題に対し職員組合として市政運営へ積極的に関わるとともに、単組としての独自運動を一層展開していく必要がある。このためには、日頃から地域住民と連携を強化し、お互いの協働体制を構築していくことが必須である。
 今後の取り組みに生かしていきたい。

アンケート調査項目