<凡例の設問内容>
<図1>
⑥ その他
⑤ ほとんど参加農家がいない
④ 一部で評価されているが概ね評判よくない。
③ 地域により受け止め方が違う
② 概ね良好だが、様子見の農家が多い
① とても評判よく、多くの農家が参加意向を示している。
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<図2>
⑤ その他
④ 補償単価(15,000円/10a)では魅力ないので申し込まない
③ 受託農家からの貸し剥がしや、集落営農からの脱退が発生している
② 農業共済加入が義務なので申し込まない
① 米の生産調整が義務なので申し込めない。 |
<図3>
③ その他
② 新規需要米を取り組みたいが需要が少なくてできない
① 交付金単価が落ちたため転作作物の作付けが減少した。 |
イ 自由記載の意見
制度の本質に関わる主な意見を以下に整理した。
・これまで生産調整に非協力的だったが生産調整を実施する人がかなり見られた。
・水稲、水田営農の担い手育成につながらずバラマキと感じる
・戸別所得補償制度は国民に扶養されているようで後ろめたい。
・地域水田協議会の事務が膨大で業務に支障来している。
・国が責任を持ってやる体制のはずが、市町村・JAに依存の状況になってしまった。
・交付金が支給されることにより、業者が価格を安く買いたたこうとしている。
・集落営農や法人化の動きが減退している。
・農地の貸しはがしを心配する声はあるが、実際に発生した事例は聞いていない。
・新規需要米は個々の農家が業者などと契約を結ぶのは難しい。
・新規需要米は、面積に対して交付するため、捨てづくりによるモラルハザード発生の危険がある。
・(戦略作物が全国一律に指定されたので)地域独自の特色のある作物が作れなくなる。
・集団、地域ぐるみの取り組みに配慮がなくなったのは問題だ。
・交付金単価の高い品目は次年度以降継続されるのか不安だ。
(3) 農業者戸別所得補償関連制度の課題と提言・要求
① アンケート調査から見える課題
ア 制度内容の説明不足。
イ 制度の趣旨の理解不足。(単に農家のもうけを増やす制度ではない)
ウ 市町村段階の推進体制が手不足。(国がどのように役割を果たすか)
エ 全国一律(補償単価、転作物の対象品目・交付金単価)への不協和音にどう対処するか。
オ 新規需要米(えさ米、米粉用)の需要拡大方策と国・地方の役割。(生産調整の義務との調和)
カ モラルハザードへの対応(捨て作り、新規需要米の横流し、個別補償を理由にした値下げ圧力)
キ 麦・大豆に対する戸別所得補償を入れないと生産縮小の危機。
② 直面する課題に対する政務官・審議官の考え方 (10.5.14農林水産省幹部意見交換から)
自治労農業改良普及評議会で、全国の意見を元に我々の提言も含めて要請書を提出し、意見交換を行った。
※ 注:回答は、必ずしも農林水産省の見解として整理されたものではない。(個人の見解を含む。)
No |
課 題
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回 答 内 容
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回答者
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イ
イ
カ |
・ばらまき批判がある。
・所得補償をもらうのが後ろめたい
・頑張れば何か得られるというものがないと推進は難しい。 |
・意図的に宣伝している人もいる。前の政策で対象を絞ったことにより農村がどうなったか検証すべき。
・自給率を上げて国民の食料を提供することを国民が理解してのこと。
・国民に支えられていることを考えれば、自分たちで努力する部分がないと困る。
・収量や品質向上などの要件をつけようと考えたが、よりシンプルにという政務三役の意向。
・戸別所得補償は規模拡大、コスト削減した農家ほど厚く補償を受けられるようになっている。 |
政務官
審議官
審議官
審議官
政務官 |
ウ |
・農水省が責任をもって推進するはずが、市町村に負担が。 |
・制度推進には現地の推進体制が要だ。JAではなく市町村主体にやることで自給率アップにつながる。 |
政務官 |
イ
エ |
・交付金単価の下がる転作作物に地域の裁量拡大必要。(全国一律の品目、単価設定に対して) |
・この制度は自給率アップが目的だ。これまで地域の裁量認めすぎたために自給率が動かなかった。地域特産の推進は地域振興策として別途手当てすべきと考える。 |
政務官 |
オ |
・新規需要米の需要拡大策について (転作割り当て達成しないと所得補償受けられない水田に米を作ることで転作推進) |
・全農のスキームで販売することは可能だ。しかし、流通コストのこともあり、地域の耕畜連携で需要開拓した方がよい。 |
審議官 |
キ |
・米に続いて麦大豆についても早急に戸別所得補償を入れないと目的に反して、麦大豆の生産が縮小してしまう。 |
・今は米でスタートしたばかりだ。米のモデルで学習し、次につなげたい。(麦大豆の制度設計は余り進んでいない模様だ。) |
審議官 |
(4) 政策への提言・要望の反映
① 主要要求課題項目に対応する次年度概算要求の内容
課 題
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2011年度概算要求の内容
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・農水省が責任をもって推進するはずが、市町村に負担が転嫁されるのはおかしい。 |
・今後は、国・都道府県、市町村が連携し、行政が主体性を発揮する仕組みを検討。
(関係機関、団体、実需者等で組織する「農業再生協議会」を設置する。→既存の協議会組織はこれに一本化する)
・制度推進事業等として都道府県、市町村等に対し必要な経費を助成する。 (116億円) |
・戦略作物の一律設定で地域特産物振興ができなくなる |
・戦略作物以外にも都道府県の判断で対象に加えられるようにする。 |
・米に続いて麦大豆についても早急に戸別所得補償を入れないとねらいに反して、麦大豆の生産が縮小してしまう。 |
・麦、大豆、てん菜、でん粉原料用ばれいしょ、そば、なたねについても対象を拡大する。(畑作物の戸別補償2,129億円) |
・頑張れば何か得られるというものがないと推進は難しい。 |
・畑作物の所得補償交付金は、面積払い(1,500円/10a)に加え数量払いを併用する。(面積払いで営農継続に必要最低限の所得を保証し、生産量を上げればその分だけ所得が上がるしくみ)
・畑作物では数量払いに品質に応じた単価増減加味する。 |
・前制度に比べ交付金単価の下がる転作作物に地域の裁量拡大必要。(全国一律の品目、単価設定に対して) |
・2009年度に交付単価の下がる品目に対して交付してきた「激変緩和措置(調整枠260億円)」を発展的に解消し、その他作物への助成(204億円)と一体化して地域特産物の振興等を支援する「産地資金」を創設する。 (400億円程度) |
2. 制度推進のためにやるべきことと地方の責任
(1) 基本的な考え方
食料自給率向上による食料の確保は極めて重要な国政課題である。一方で、それを支える地域の生産体制・生産力の維持・向上は地域(地方)の役割でもある。国による制度の管理と、地方による制度の推進を基本として展開する。なお、地方の推進体制については国、都道府県、市町村、JA等関係団体の連携のもと組織されるが、国による財源の措置と、財源を伴った人材の移管等により地方の財源不足の影響を最小限に抑える必要がある。
(2) 推進のキーワード、そして国がやるべきこと、県がやるべきこと
国と都道府県の役割分担のもとで県がすべきことを明確にしつつ、国はやらないが地方が必要と判断するものには財政出動することの合意を得つつ独自に実施する覚悟が必要。
新政権のもと、自給率向上を担う国内農家に対して戸別に税金投入することに舵を切った。税金投入の価値有りと政府が認めたことを国民及び農家自身が積極的に評価できるかに制度の浮沈がかかっている。
キーワード
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背 景
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国のやるべきこと
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都道府県のやるべきこと
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① バラマキ批判と農家の誇り |
・国民の命の糧を供給していることへの理解と自負が不足
・大規模農家集中の従来の要求有り |
・制度の趣旨を国民に対して積極的に伝える
・国産国民運動の推進
・マニフェストに基づいた担い手の再定義が必要 |
・農家に対する趣旨の啓発
・農村における価値の再発見、発信支援
・都市と農村の交流コーディネート |
② 低湿水田と転作作物 |
・転作が進まない背景に、排水不良がある。 |
・条件整備の財源措置
・低コスト基盤整備の技術開発
・耐湿性品種の開発 |
・栽培技術の実証・普及
・地域ぐるみの取り組みによるブロックローテション化の支援 |
③ 新規需要米の需要創出
※エサ米
米粉用米 等 |
・ここに厚く助成することで米による転作を誘導。
・新規の需要開拓が課題 |
・大口の流通ルート開拓
・低コスト生産技術の開発
・地域の流通システム開発の財源確保 |
・地域内の耕畜連携による流通システム構築
・栽培技術の改善
・給餌技術の改善
・商品開発 |
④ 全国一律と地域振興策 |
・戸別補償の単価が全国一律
・転作の戦略作物の指定が全国一律 |
・地方の自由度拡大
・地域特産物振興の財源措置 |
・地域振興作物に重点支援することの合意形成 |
⑤ インセンティブ
※ やりがいの醸成 |
・面積に対する交付等捨てづくりの懸念
・大規模農家に集中すべきとの従来の主張も |
・一定の底支えをしつつ、数量支払い、環境支払い等加算措置制度必要。 |
・独自の担い手育成、地域特産振興策方針をたてて、交付金の加算制度実施の価値有り。 |
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