【自主レポート】自治研活動部門奨励賞 |
第33回愛知自治研集会 第8分科会 地方再生とまちづくり |
住み慣れた地域で最後まで自分なりの生活を続けたい願いは、人が生きる当たり前の「願い」でしょう。でも私たちの住む山間の過疎地で高齢化が進行し続ける地域では、介護が必要になれば直ちに施設入所の選択をせざるを得ない状況にあります。地域に助け合い制度を再構築する「介護と福祉でまちづくり」の取り組みが求められています。自治労組合員がリードし地域住民とともにNPO活動に取り組む重要性を提起します。 |
|
1. 「最期まで住み慣れた地域や家で暮らしたい」市民の願いをどう受け止めるか (1) 過疎地移送サービス事業に取り組む
② 過疎地移送サービスにかかる課題 この事業は、収益を上げる事を目的にする運営は望めないことがネックとなっています。また、高齢化とともに身体の不自由な住民の利用申し込みが増えています。個人借り受けの乗用車には、福祉仕様の車両はなく、利用者の乗り降りには、運転手の介助で対応していますが、そうした車両の必要性に迫られNPO一番の悩みである資金調達に努めています。自らの介護が必要になっても可能な限り住み慣れた環境の中でそれまでと変わらない生活を続け、誕生から最期までその人らしい人生を生き生きと暮らせる地域づくりに、この過疎地移送サービスは欠かせない取り組みとなっています。公共交通機関で網羅できない地域、わずかな年金暮らしで高額な移送料金が支払えない人々にとって、低額な運行が求められています。過疎地で通常に生活をするに当たって買い物を自分でしたい、病院へ行きたいなどの願いを支える事業である、この事業の資金調達が課題となっています。 ③ 市民は、期待を込めて私たちの行動を見つめています 私たちが住む地域は、65歳以上の人が2人に1人という高齢化率になろうとしている所です。「限界集落」と言われる地域で、つまずいて転び起き上がれない状況で新聞配達の人に発見され、病院に運んでもらったとか、人と話をしない状況が三日も続いているなど、一部の地域では、一人暮らしができない実態にあります。 こうした状況であることを把握しない限り、市民の側に立った行政の執行など、ほど遠いことですし、市民の信頼を得ることができない公共サービスとなってしまいます。地域に出かけて市民と接して、課題を聞き取ることから始めなければなりません。自らの仕事を見直すことの重要性を提起します。 一人では、決して生きていけないことを一番よく知っているのは、そのことを体験している高齢者です。「最期まで地域で住めるような取り組みにカンパをしてもいいし、寄付を知り合いに呼びかけます」と言う訴えに応えていける行政施策の展開が求められています。 住み慣れた地域で最期を迎えたい、この究極の思いを支えるのは、公共サービスを提供する責任を持つ自治体でもあります。高齢者が発想する「ともに生きたい」思いは、具体的な行動も提起してくれますし、市民は期待を込めて私たちの行動を見つめてます。私たちは、行政職員であるとともに自治労組合員として「一組合員一NPO」活動を展開することをもって応えています。 (2) 「あいの家デイサービス」事業所を開設して
家屋面積174㎡、畑130㎡そして山林を借り受けて開設をしたばかりです。 旧伊勢街道が庭先を通っていることや昔ながらの「おくどさん」を復元させ、昔ながらの番傘の置き場が並んでいること、年代物のピアノを使わせて頂いているなど、利用者が自然と昔話に花を咲かせる雰囲気をもった施設となっています。 ② 「あいの家」スタッフは、公共サービスユニオン組合員 あいの家デイサービスの理念は、「よかった、会えて」です。一人暮らしの中で久しぶりに出会えたことに喜びを感じるデイサービスの場にしたいと話し合っています。また、最期のときには、良い出会いがあったと心静かにつぶやき目を閉じることができる「場」としてのデイサービス事業所を目指しています。 こうした話は、スタッフ研修の場で出てきた内容です。そのスタッフの労働条件は、ヘルパー、介護福祉士、保健師、ケアマネージャーなど、一律の時間給とし、一時金無し、但し、年度決算収支をもって黒字財政時に一時金支給あり。資格手当は介護福祉士以上にあり。年齢給、能力給は導入せず、定年制無しの雇用契約としています。 一方、収入収支のバランスは、一日利用者6、7人、利用登録者30人前後を確保する必要がありますが、開設3ヶ月目で6人の登録者です。 労使の目的は、利用者の「よかった、会えて」をどこまで支える介護ができるか、デイサービスの時間帯に止まることなく、在宅介護のありようについても議論しています。こうしたことを自治労の中で議論したいとスタッフ7人中5人が公共サービスユニオンに加入しています。 2. 「福祉と介護でまちづくり」事業の展開に取り組み (1) 「まちづくりサポーター」の募集 (2) まちづくり講座の開催 まちづくりは、地域でサポートする人々の力量によって成功するか、挫折するか決まるととらえています。 まずは、人づくりを制度化し、併せて事業展開を行っていくことを目指します。高齢者に視点を当てた介護 保険制度の関わりでデイサービス事業や訪問介護事業、小規模多機能型介護事業に結びつけることを目指します。それにも増してこの事業を継続する重要性は、地域の文化や助け合い制度を復活させ、地域に住み続けたい基本的な生活基盤が再編されていくことにあります。 人と人のつながりのある地域社会実現に向けて事業の継続をリードするサポーター集団の育成は、若者に引き継いで行く財産となると確信しています。 ② 効 果 この事業は、独立行政法人福祉・医療機構の「社会福祉」振興助成事業」(助成金額200万円)によって、実施するものであり、景気動向の悪化で沈滞ムードにある山間僻地の東吉野村を人と人をつなげる地域づくりを通して元気にしていくきっかけづくりになると考えています。孤立した高齢者の方々に接触することは、人権尊重の課題でもあり、人とのかかわりの重要性を浮き彫りにする取り組みです。そして、何かしたい、何かができるはずと考えている団塊世代の方々個々の思いを制度化する事で地域を元気にしていく効果が必ず出せると確信しています。
3. 東吉野村議会議員活動を通したまちづくりの取り組み (1) 市民の声を行政に反映させるために (2) 政策提言と条例づくりに 2010年4月25日、奈良県東吉野村議会議員選挙において、地元の方々の運動と自治労奈良県本部、各単組、連合奈良などの支援を受けて、私(辻本恵則)は当選を果たすことができました。自治労運動で培った自治研活動を地方自治体議員として政策提言を行い、条例づくりに取り組んでいます。行政として取り組まなければならない政策は、地域の暮らしの中に存在しています。地域の中に入ってこそ、政策提言ができると考えています。 |