【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第9分科会 都市(まち)のコミュニティを再生させる

 時間内食い込み集会に代わる組合の闘争手段を模索するなか、組合員の購買力を闘争力に出来ないかと検討し、さらに地元産米、地元商工会の商品券を一斉購入するという地域運動も複合させた取り組みを行った。
 その結果を踏まえ、組合が抱える問題を見つめ今後の課題を考察した。



購買力を新たなる闘争手段とする試みから
見えた組合の課題
 

北海道本部/増毛町役場職員組合 若林 利行

1. 全道に先駆けての賃金手当削減

(1) 賃金削減先進自治体
① 賃金削減のパイオニア
  三位一体の改革による交付税の減額、起債の償還額増加に伴う財政悪化に対応するためとして、増毛町では2004年度から職員組合の合意を得ずに基本給5%、一時金0.4ヶ月の賃金削減が行われました。
  当然ながら組合と理事者との交渉は行われましたが、残念ながら交渉決裂状態のまま議案が提出され全道自治体に先駆けた賃金削減が行われてしまいました。

② 地域給導入と組合離れ
  賃金の独自削減を行っている間は、マイナス勧告が出されても削減に上乗せしないということでしたが、2006年度からの地域給については、マイナス勧告ではなく制度の変更であるとして残念ながら導入されてしまいました。
  今振り返ると、このころから職場集会へ参加する人数が減少しはじめ、組合活動への無関心が組合員に広がってきていたと感じます。

(2) 新たなる闘争手段の模索
① 闘争手段、戦意の喪失
  では一連の削減において、組合側に問題はなかったかというとそうとも言い切れません。
  対抗手段を失い、闘争に背を向けた組合にも付け込まれる原因がありました。
  具体的には自分たちの労働条件よりも、地縁血縁を優先させてしまい町議会選挙において組合推薦候補を2期連続で落選させ、町職員の味方となってくれる議会議員を失ってしまっています。
  そして、職場集会においては賃金削減に対抗するために勤務時間食い込み集会が提案されても、施設入所者、医療機関受診入院者の対応についての懸念、そして、いわゆる町民の目が気になり後ろめたいという後ろ向きな意見が少なからずあり、それに代わる闘争手段も議論されはしましたが、一斉昼休憩以外はあまり効果が見られず、それについても窓口を所管する管理職のみが苦労するという限定的効果に留まっていました。
  このような闘争手段を失った状態におかれ組合役員も五里霧中となり、一般組合員についても怒る前に諦め、そして慣れ、思考停止、運動回避に向かい団結が綻んできてしまいました。

② 新たなる闘争手段の模索
  そのような状態にありましたが、新たな闘争手段を検討するなかで、組合員による灯油の共同購入が提案されました。
  より安価な業者からとなると、町外業者になることが想定されますが、賃金削減による購買力の町外流出は構わないという理事者の交渉での発言に対し、それを実践することによって起きるであろう外部からの理事者への圧力を若干期待しつつ、また組合員の購買力を闘争に結び付けることを狙いとしましたが、やはりこれも逆に町民を敵に回してしまうのではないかという結論に至りました。
  では組合員の購買力が目に見える方法で、しかも町の人を味方にする良い方法はないかと模索した結果、JA南るもい増毛支所を通じて、増毛産米を一斉購入するという運動を展開することになりました。
  運動に当たっては、増毛地区連合を窓口に産別の垣根を超え増毛町の労働組合員が一体となって取りかかり、増毛町を意識するために、町内産米に特化した共同購入を行いました。

(3) ホップ・ステップ
① ホップ 増毛産米の一斉購入

   組合員の購買力を闘争手段とする第一歩として、2007年2月に第1回目の増毛産米の共同購入を行っています。
  募集に当たっては組合員に限定せず、臨時職員、管理職も巻き込んでの取り組みとし、地産地消ブームも追い風となり、初回は58人、880㎏という結果となりました。以降は、2007年5月61人 1,010㎏、2008年5月46人 890㎏、2009年2月44人 1,000㎏という状況ですが、2010年においてはJA南るもい増毛支所の人員削減により、対応が困難となってしまったため本取り組みは休止となっています。
  しかしながら、JAのみならず地元農家からも好評を博し、地域運動としては一定の成果があったと考えています。


② ステップ 商工会商品券の一斉購入

  第二段階として増毛町商工会商品券の一斉購入を2008年夏の期末手当時に行いました。
  商品券は増毛町商工会加入店であれば、家からたばこまでなんでも購入でき、さらには活動の狙いである組合員の購買力の大きさを金額で計ることができるので、大いに期待したところですが、結果としては67人 622,000円分の購入となりました。
  この金額を多いとみるか少ないとみるかは計りかねますが、数人の大口購入者に買い支えられたという状態で、広く、そして深く組合員を巻き込んだ活動であったとは言い難いものでした。
  そして取り組み後の組合員の反応、感想は「増毛で買い物をしないので要らない」「今回は付き合いで買うけども次回からは……」「米を買っているから、こっちはいいっしょ」といったものが多く、残念ながら賃金削減の闘争手段としての運動ということを全く浸透させることができませんでした。
  これは非常に大きな反省点です。


(4) 組合活動にイノベーションを
① 組合員の望みとは
  一連の取り組みは時間内食い込み集会に代わる新たな闘争手段の確立を目指して行いましたが、ステップで躓きジャンプすることはできませんでした。
  しかし、振り返るとそもそも組合員がそれを望んでいるのか、押しつけの運動になってしまったのではないかと今となって考えてしまいます。
  最近流行りのマネジメントでいうと、顧客である組合員が何を望んでいるのかを組合役員が意識し活動すれば、組合は盛り上がるのかも知れませんが、果たして役員にそこまでの苦労を求めて良いものなのでしょうか。
  そして組合員が賃金アップを求めていたとしても、その対価(活動、闘争)を支払うのは御免だということであれば、当然それは不可能で、理事者のお人柄に任せるしか方法はありません。
  金がないという理由で行われた賃金の独自削減ですが、実質単年度収支がマイナスになったのは2005年度のみで、その後は現在に至るまでプラスとなり、確かにそれは賃金の独自削減の効果によるものでしょうが、2008年度においては1億2千万円を超える状態となっています。
  これは既に賃金の独自削減が財政上仕方なしに行われているのではなく、政治、政策として行われていることを意味しますが、これに対し組合員から怒りの声が上がり、闘争によって完全復元を勝ち取るゾという状況には残念ながらなっていません。
  粘り強い交渉の結果、緩やかに復元を勝ち取り現在は給与3%カットのみとなっていますが、定期大会などの参加率は残念ながら回復に向かってはいません。
  年に一度、これから向かって行く方向を決定する重要な場にすら顔を出さない組合員がいる状況は、組合としての本質が薄れてきているように思えて大変残念でなりません。
  独自削減により金銭面で失ったものは当然大きいのですが、組合の団結というとても大きなものまで徐々に失ってしまいつつあるような気がします。
   はたして組合員は組合を必要としているのか、執行部は空回りしていないか、活動の意義をしっかりと伝えているのか、本来の一人ひとりが意義を持って参加する組合を作るために、一度立ち止まり皆で考える必要があるのではないかと、今回の米、商品券の一斉購入運動を通じて痛切に感じました。
   米を買うだけ、商品券を買うだけ、それが目的ならばそれは労働組合の活動ではなく、親睦団体の地域活性化運動です。
  再度このような取り組みを行うことがあれば、その先にある意義をしっかりと伝え理解を深め、団結して取り組んでいかなければと総括します。