【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第9分科会 都市(まち)のコミュニティを再生させる

 八王子市職員組合では、「誰もが地域の中で安心して暮らしていける仕組みつくり」をめざし、八王子自治研究センターと共同で、多様な市民の活動と交流・協力しながら、「高齢者の地域ケア」や「子ども・家庭支援」、「環境保全」などを中心テーマに市民講座や学習・交流活動を実施してきました。
 取り組みの一環である、学校を拠点とした「環境教育」を通じた、子どもと地域の大人をつなぐ取り組みを報告します。



子どもが地域で安心して暮らせる仕組みを
学校における環境学習の取り組みを通じて

東京都本部/八王子市職員組合・自治研センター・事務局長 笹川 勝宏

地域社会の再生・新たなコミュニティの創出をめざして
小学校における「リサイクルの取り組み」を通じた環境教育

 児童虐待が深刻化する中で、八王子市職員組合と自治研究センターは、保育所・児童館・子育て支援センター等の職員と研究者も加わり、地域における気軽で有効な相談支援体制の構築をめざして、子どもや家庭の支援に関するテーマを中心に様々な市民集会を開催してきました。
 今年も6月に「子ども・地域・環境」をテーマに、①学校での環境学習を実践している環境部職員の取り組み、②児童館職員と地域住民が子どもとともに行った「みんなの広場」つくりの取り組み、の二つの実践報告を通じ、「子どもが希望を持って暮らしていくために今何が必要なのか」、「地域の大人が自然に地域の子どもを見守ることができる環境をどう作るか」を考えるパネルディスカッションを行いました。
 八王子市環境部は小学校と連携し、「ごみの分別・食循環の体験を通じた子どもへの環境学習の取り組み」として、小学生による「ごみの分別作業、収集車を使ったごみ投入体験」、学校給食の廃食を利用した「バイオマス燃料製造と収集車への利用」などの“環境学習”や、小学校と地域の農場の連携による「給食調理の残菜による堆肥つくり、育てた野菜をもう一度小学校の給食で使う」“食循環”の取り組みを展開してきました。

1. 地域と取り組んだ生ごみを使った「食循環」の取り組み

(1) めざしたことは
・地元で生産された安全な農作物を学校給食に使用することで、健康な食生活を培う。
・有機物(生ごみ)の再資源化を図る(家庭系ごみのうち43%、事業系ごみのうち34%)
・優良な堆肥の農地還元により、自然生態系に即した土地つくりを行い、安全な農作物を作る
・子どもたちに食べ物の大切さを学ばせる

(2) 小学校に「生ごみ処理機」を設置して食の循環
① 小学校と協力して、学校に生ごみ処理機を設置し、給食から出る野菜くずなどの生ごみを「生ごみ処理機」に入れ、「堆肥の素」作りをはじめました。
② 保護者に関心を持ってもらうための啓発活動を行い、家庭の協力を得て、登校時に子どもたちが家庭から出る生ごみを学校に持ち込み、実際に子どもたち自身で処理機へ生ごみを投入する。
③ 「生ごみ処理機」でできた「堆肥の素」を、二次発酵させて、堆肥を完成させます。
④ 地域の農園と連携し、できた堆肥を野菜農園に利用してもらい、収穫された野菜を、学校に納入する。
⑤ 小学校では、栄養士・調理師が協力して、学校給食に活用する。
⑥ 調理過程でできた野菜くずなどは、再度、生ごみ処理機に投入し堆肥の素つくりを行う。

2. 学校での収集・分別体験教育や地域の集団回収

 小学校における環境教育の一環として、実際に、収集車を校内に配車し、環境部の職員の指導による、子どもたちが直接「ごみの分別」や「収集車への投入」を行う体験学習を行っています。
 また、地域におけるリサイクルのための資源物の集団回収の取り組みは、地域の大人が資源物を持ち寄ることを通じ、日常的には希薄化しつつある地域の大人同士のつながりや子どもとの共同作業を行ってきました。


3. 廃食用油を原料とした「バイオ車」の運行

 2007年、環境部及び教育委員会の現場職員による「廃食用油資源化検討委員会」が設置され、BDF(Bio Diesel Fuel)導入について検討を開始しました。
そこで確認された内容は、
・小学校給食の廃食用油を原料に、バイオディーゼル燃料を製造し、副産物としての固形石鹸を製造することで、廃食用油の資源化を図る。
・地球温暖化対策として、BDFをごみ収集車の代替燃料として使用し、COの削減を図る。
・教育現場での、環境教育に位置づける。
  翌年、小学校10校から、給食の廃食用油を回収し、清掃事務所に設置したBDF精製装置を現場職員が操作し、廃食用油を原料にBDFを精製しました。
 製造されたバイオ燃料による「バイオごみ収集車」を2台配備し、子どもたちにより関心を持ってもらうために車体に「バイオディーゼル車」であることをラッピングし、市民宣伝を行いました。
 副産物の石鹸は、清掃車の洗浄や学校の調理室の床清掃等に活用しました。

4. 地域での、見守り・支え合いの仕組みづくりに向けて

 「地域・環境・子ども」をつなぎ合わせていく取り組みをめざしてきましたが、「地域と環境」や「環境と子ども」はつながっていますが、まだまだ三つの要素がうまく結び付いていないのが現状です。
 もう少しうまく結び付けていくためには、地域の人が参加できる仕組み作りが必要ですが、急には新たな仕組みができないので、現在取り組んでいることを発展させていくことが大事です。
 当面、地域の人たちが参加できる仕組み作りに向け
・地域の人たちと一緒に学ぶ環境学習
・食循環モデル事業を地域の人たちと一緒に行う
・学校職員・地域住民・子どもたちと、堆肥作りを通じ学校菜園や緑のカーテン作り
などに取り組んでいきたい。

 この取り組みを発展させていくことにより、学校周辺の里山の手入れ、休耕田の管理・手入れ、湧水・用水の管理、河川の保全、公園管理・公園作りなどの活動にもつながってくる。
 今後、学校を地域のリサイクルの拠点にしながら、地域の人たちと一緒に「ごみ減量、環境保全、食循環」などの取り組みを通じて、子どもの人格形成や見守り、高齢者の地域での絆作り、防災・防犯など、「共助の街作り」につなげていきたい。