(2) 地域における役割
納税協力会は設立当初から町会との関わりが非常に強く、町会とともに金沢市の地域コミュニティを構築する重要な組織として現在に至っている。納税協力会の第一の目的は「期限内納付推進」と「納税思想の高揚」であるが、それとは別に地域に密着した組織であるということが挙げられる。納税協力会長が納期ごとに地域の会員宅を訪問して税を集金するシステムは、地域住民の密接な信頼関係に支えられたものといえる。そして、納税協力会活動を通じてそのような密度の高い地域コミュニケーションを維持していくことが期待されている。
また、納税奨励金は使用用途が限定されていないため、町会単位で組織している納税協力会については、各種の町会活動に使用されている場合も多く、町会の貴重な財源となっているとも聞く。額自体は多くはないが、納税奨励金が町会活動の一助になっているものと思われる。
[納税協力会の構成表] |
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協力会数
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協力会員数
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年間取扱税額
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地域協力会
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276件 |
13,368人 |
3,971,904千円 |
職域協力会
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10件 |
195人 |
283,771千円 |
その他協力会
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21件 |
761人 |
577,758千円 |
合 計
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307件 |
14,324人 |
4,833,433千円 |
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2. 金沢市納税協力会が抱えている課題
(1) 市民アンケートから見る課題
金沢市納税協力会も外の地域組織と同様に組織の弱体化と会員の高齢化問題を抱えている。前頁の[納税協力会の推移]を見ても、1974年に比べて協力会数・会員数とも半減している。また、2000年に納税奨励金の額が大幅に減額となったことも、協力会が減少した要因として考えられる。
2002年に金沢大学文学部社会学研究室と金沢市が「市民のコミュニティに関する意識・行動調査」についてアンケート調査と結果報告をしているので、その結果を基に現在の地域コミュニティが置かれている現状を分析してみる。(調査対象は主に「町会活動」であるが、納税協力会についても同様の問題点が存在すると考えられるため、当該データをもとに分析を行う。)
① 町会活動の問題認識について
「役員任せになっている」(78.9%)、「活動に変化がない」(70.5%)、「特定の人に業務が集中している」(67.2%)、「参加が自主性に欠けている」(57.3%)、「若者等が参加しにくい雰囲気がある」(54.2%)
との順で問題点が認識されている。そのうち、納税協力会にも当てはまる問題点としては、「役員任せになっている」・「特定の人に業務が集中している」・「若者等が参加しにくい雰囲気がある」が考えられる。
② 町会の運営実態の分かりにくさについて
世代別にアンケート結果を集計した結果、「分かりにくい」と認識しているのが50代以上は半数以下であるのに対して、30代以下は約6割が「分かりにくい」と認識している。納税協力会についても、同等の認識であるものと考えられる。
③ 好ましいおつきあいの程度について
「よくつきあう」(8.7%)、「ある程度つきあう」(83.0%)となっており、9割以上がある程度以上のつきあいが好ましいと考えている。この結果は、一見すると良い数字に思われるが、逆の見方をすると9割以上が緊密なつきあいを望んでいないということになる。納税協力会の活動は緊密な地域コミュニティが必要となることから、厳しい現状であると考えられる。
(2) 金沢市の行政評価
金沢市では事業の見直しを行っており、納税協力会に交付する納税奨励金ついても見直し対象となっている。
年度
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評 価
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方向性
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理由等
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評 価 コ メ ン ト
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09年度
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見直し
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内 容
見直し
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納税意識の啓発と納期内納付率の向上に対する効果を検証したうえで、奨励金について、納税協力会の活動を踏まえ、算定基準を見直す必要がある。 |
08年度
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見直し
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終期
設定
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納税意識の啓発と納期内納付率の向上に対する効果を検証したうえで、終期を設定する必要がある。 |
行政評価の結果は、納税奨励金の縮小・廃止を求めているものと見ることができる。しかし、2000年に納税奨励金を減額して以降の協力会の減少幅は大きくなっており、さらなる縮小は納税協力会の減少傾向に拍車がかかるものと思われる。また、納税奨励金の廃止については、納税協力会の存続が困難なものとなることが容易に想像できる。
3. 金沢市納税協力会の将来像について
納税協力会を今後とも地域のコミュニティツールとして活用していくには、前述の課題を克服していく必要がある。まず、第一に30代以下の若年層の取り込みが急務となっている。アンケート結果でも若年層は約6割が「分かりにくい」と答えており、若年層に対して様々なアプローチを行い、多様な人が参加しやすい環境にしていくことが組織の活性化につながっていく。
次に、個人情報の問題である。近年個人情報に対する関心が強くなっており、納税協力会長に納税通知書を預けておくことに不安を感じる会員も少なくない。その点については、自治体と個人情報に関する検討を行い、個人情報のあり方を整理することにより、会員の不安を解消していく。
また、金沢市の行政評価については、納税奨励金の交付目的は「期限内納付の推進」であるが、それだけでなく、地域コミュニティの構築に重要な役割を果たしていることもアピールするべきである。
最後に、金沢市では地域コミュニティを再構築するために、様々な新しい試みを行っている。その一つにマンション単位の町会設立の支援事業がある。納税協力会についても、これまでの既存組織だけでなく、マンション単位で協力会を設立するなどの新しい取り組みを進めていくことが求められる。歴史と伝統だけでなく、時代に適応した組織作りを行うことにより、地域住民に受け入れられる組織として変化していくことが、地域コミュニティとして今後発展していくために重要なポイントとなる。そのためには、自治体も地域コミュニティに対して制度・財政面で積極的に支援していくことが必要である。 |