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光ビスタライン実験風景 |
3. 光ビスタライン
(1) 「裾野を広げ、頂を高める」景観意識向上実験
ビスタラインは、本市を代表する景観資産である一方で、広く知られてはいないが、一部の人にはその存在や価値が認められている、いわゆる「知る人ぞ知る」景観でもある。保全策を検討するにあたり、「だれもが知っている景観」、「後世に継承すべく守らなければならない景観」という想いを多くの人々と分かち合うことで、よりいっそう、「市民共通の資産」であるとの共通認識や保全への理解が深まることを期待し、景観意識の「裾野を広げ」、「関心」→「理解(知る)」→「行動(守る)」と、景観意識の「頂を高める」機会を提供し、景観意識の向上のきっかけづくりの場とした。2009年1月31日(土)及び2月1日(日)の2日間(17:30~21:00)、『歴史的眺望を「知る・守る」ための景観意識向上実験』と題し、通常は大樹寺からしか確認できないビスタラインの空間領域を、眺望点の大樹寺より視対象の岡崎城へ向けて照射したサーチライトの光線(以下、「光ビスタライン」という。)として夜空に表現し、おおよその位置や高さ、存在感を、様々な場所から視覚的に体感してもらい、景観意識の向上を促す実験を実施した。
ライン上の大樹寺小学校、図書館交流プラザ・りぶら(2008年に開館。ビスタラインの保全のために建築物の高さを抑え、ビスタラインの軸線を施設内通路で表現するなどの建築デザインで、2010年、愛知まちなみ建築賞を受賞。以下、「りぶら」という。)及び岡崎城の3箇所を観察会場とし、ビスタライン解説パネル展示や、大樹寺三門のライトアップ、大樹寺小学校児童のカウントダウンによる点灯式「校歌の風景を見つめてみよう」や、りぶらでのシンポジウム及びワークショップ「歴史的眺望をみつめてみよう」、岡崎城天守閣の夜間特別入場のほか、アンケート調査や光ビスタライン写真コンテストを実施した。
観察会では、大樹寺小学校(約2,000人)、りぶら(約300人)、岡崎城(約800人)の計約3,100人が光ビスタラインを体感したほか、会場以外でも多くの人々が夜空に映し出された光ビスタラインを見ることができた。写真コンテストには、73点の応募があり入賞者3人を表彰した。
光ビスタラインは、光源から最も離れた岡崎城周辺では、市街地の灯りによって、おおよその位置や高さを表現する光のラインとして目視で確認することは難しかったが、様々な場所から、その存在感などを視覚的に体感することができた。
景観は分りやすいと同時に多様で多くの可能性を秘めており、光ビスタラインは、歴史的眺望を「守る」きっかけづくりであると同時に、新たな夜景を「創る」という側面もあった。ビスタラインという景観資産が市民、事業者及び行政の協働の取り組みによって、これまで守られてきているということを知る機会としては、十分な役割を果たし、保全への意識向上を促すこととなりえたと考える。
(2) 意識調査
観察会参加者とビスタラインの眺望空間領域にある町内(以下、「ビスタライン関係町」という。)世帯を対象に調査を実施し1,010の回答を得た。
① 回答者の属性
年齢は多い順に、「30・40歳代」が4割強、「50歳以上」が4割弱、「30歳未満」は2割弱。居住地は9割が市内在住、そのうち3割がビスタライン関係町在住であった。
② まずは「知る(見る)」ことから
7割がビスタラインを知ってはいるものの、「実際に見たことがある」は全体の5割にとどまるなど、「だれもが(実際に見て)知っている景観」としては、認知度はそれほど高くなく、「初めて知った」が3割あり、社会実験がビスタラインを「知る」きっかけとなった。
③ 「知識」よりも「感動」を
多くが「守りたい」との印象を持ち、社会実験がビスタラインを「知る」、そして、「守る」意識への動機付けとなった。
④ 「感動」から「行動」へ
多くが「景観保全」のための行動の取り組みとして、第一に「景観を守るためのルールづくり」が必要であると考えている。
特筆すべきは、社会実験がビスタラインをはじめて知るきっかけとなった市民等も少なくないことから、今後の取り組みとしては「景観を守るためのルールづくり」に加え、「もっと多くの方々に知ってもらう活動」や「観光資源として活用」することを通じて、知ってもらい、守っていこうとする意識の醸成のための機会の創出も、「保全」同様、必要であると考えている。
⑤ 現在及び将来にわたる「市民共通の資産」として
「あの光が何を表しているかを知る意義は単なる景観だけでなく市の生い立ちや歴史を知る上で市民にとっては大切な意義を持つもの。」、「ビスタラインに触れるという一つのきっかけから、歴史・景観について考える機会が生まれ、子どもたちにも自分の住んでいるまちを大切にしていこうという意識が芽生えてくれると嬉しい。」、「ルールづくりが重要。まだビスタラインの言葉すら知らない人が多いと知り、市民として考えていくことではと思う。」、「壊すことは一時でできるが、郷土の歴史とともに守っていくことが重要である。」などの意見が寄せられた。
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