1. はじめに
本レポートで紹介する3団体は、いずれも新潟県の北端に位置し日本海に面した山紫水明で有名な村上市の岩船地区に所在しています。
岩船は古代「日本書紀」に記され「磐舟柵(いわふねのき)」の推定地とされ、古い歴史を持つ港町です。また岩船の町は南北朝時代の文書に「岩船宿」としてみられ、中世には日本海側の主な港湾都市の1つとして発達しました。江戸時代になると港は村上藩の管理下に置かれ、村上地方はもとより出羽・米沢方面への物資流通港としても活発な経済活動が行われました。明治~大正時代には小中型の船舶による交易がなお盛んとなり、港は商港・漁港として最も賑わいをみせました。現代は鉄道などの陸送に流通が逆転され漁業の漁獲高も減少の一途を辿ってきており、少子高齢化が拍車をかけて人口・産業とも年々下降ぎみで歯止めがかからず元気がでない状況です。
しかしながら町全体の産業が停滞していても、文化・産業の歴史を色濃く残してくれた先人たちの功績を糧に、岩船町の人達の子どもたちに対する意気込みは非常に強く、何かにつけて優先的に考えてくれます。そのせいか、地域活動を通して子どもたちの育成に何らかのかたちで関係する団体は28にも及びます。
特に小・中学校との係わり合いが強く、児童・生徒の健全育成や地元産業の担い手の育成に力を入れている団体があります。前述にもありますように、行政からの援助も協力もできるだけ得ずに事業を企画したり、資金を工面したり、集めた浄財で子どもたちの活動の一助として寄与したりと物心両面で支えます。しかも無理することなく等身大のスタンスで異色な活動をしているのが『岩船体育協議会』・『健民少年団岩船地区隊育成会』・『新潟県漁業協同組合岩船港支所』の3団体であります。
この3つの団体の年間活動を紹介しながら、地域・学校・子どもたちとの関係の位置づけや今後抱える問題などを検証しつつ、スポーツや地域産業とのワークショップを通して岩船町の活性化を図り、明日の青少年リーダー養成や協働のまちづくりの一環として提言します。
2. 各団体の活動の取り組み
実際、『岩船体育協議会』・『健民少年団岩船地区隊育成会』・『新潟県漁業協同組合岩船港支所』の各団体はどのような活動しているのか単体ごとに列記します。
(1) 岩船体育協議会の独自性
岩船地区民からは通称「体協(たいきょう)」と呼ばれ、1975年に発足以来35年もの長きにわたり、岩船町の青少年の体力向上とスポーツに気軽に参加してもらうこと、健康で明るい町づくりをねらいとしています。
構成人員は44人で、岩船地区在住の20~40歳台の自営業や会社員などいろんな業種の人がメンバーとなっています。年間事業は図2にあるとおり、10以上ものスポーツイベントを主催もしくは共催しています。
最近では子どもの参加するイベントや大会に力を入れて小学生が参加しやすいように、また運動不足にならないよう配慮して、サタディキッズ岩船と冬季スポーツ教室を開催してキンボールやユニホックなどの軽スポーツで岩船小学校の児童とのふれあいを大切にしています。
他にもバレーボール大会・駅伝大会なども主催しますが運営費などは行政からの助成は無く、企画から運営・資金集めまで全て自前でやっています。資金の調達は会員の年会費と各商店による広告料によって賄われるものでありますが、決して余裕があるものではないです。この成功は、会員の情熱と商店主の地域の子どもを思う気持ちが後押ししている表れだと確信しています。
全国を探せば何処かの地域でも同様な事例があると思いますが、35年も前から自分たちの手で毎年回数を積み上げてきた団体はそう無いことでしょう。 |