【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第11分科会 地域における教育コミュニティづくり

 学校給食の食育の役割は、子どもたちが食の大切さや楽しみを実感することであると考え、八幡市では特色ある給食として、鍋給食や松花堂弁当給食、栄養バイキング給食などの手作り給食を単独校直営方式で実施しています。また、給食室から発信する食育の取り組みとして、調理員が手作りで「魚の模型」や「旬の野菜を紹介した掲示用資料」等を作成したり、地場産物を給食室前に展示して、直接、子どもたちに食に関する指導を行っています。



給食室から発信する食育の取り組み


京都府本部/自治労八幡市職員労働組合 桂  智美・大野 久臣

1. はじめに

 八幡市は、京都府の南西部、木津川・宇治川・桂川の三川が合流して淀川となる地点に位置し、人口は約7万4,000人(2010年4月)で大阪府との境に接しています。市内には石清水八幡宮や松花堂庭園、流れ橋など貴重な歴史・文化資源がたくさんあります。
 市内には8つの小学校と4つの中学校があり、小学校で直営・単独校方式・自校炊飯の学校給食を実施しています。

2. 八幡市学校給食の運営について

(1) 給食の形態
 週5日完全給食(米飯4回・パン1回)

(2) 実施学校と給食数・職員数

(2010年度、単位:人) 
学 校 名
給食数
栄 養
調理員
嘱託員(内再雇用)
八幡小学校
547
1
2
2
くすのき小学校
691
1
2
3
さくら小学校
599
1
2
3
橋本小学校
802
 
2
3
有都小学校
161
1
1
2(1)
中央小学校
338
 
1
3(1)
南山小学校
459
 
2
2
美濃山小学校
724
 
2
3
合   計
4,321
4
14
21

 

3. 特色ある給食・食育の取り組み

(1) 地産地消の給食
 八幡市では、学校給食に地元八幡産の食材を使いたいという希望から、2005(平成17)年、地元のNPOが地元で取れた米と大豆で作った味噌を学校給食で使い始めました。
 その後、2007(平成19)年からは、米飯給食に八幡産ヒノヒカリを、さらに野菜や果物(梨)も学校給食で使用することができるようになりました。
 今では、給食で使用する野菜の15~20%を地元産で賄っています。

(2) 松花堂弁当給食(6年生)
 江戸時代初期に、石清水八幡宮の社僧であった松花堂昭乗が、農家の種子入れに使われていた十字に仕切られた箱を、たばこ盆や絵の具箱などに利用していました。料亭「吉兆」の創業者がそれを見て、料理の器にしたらどうかと考え、懐石料理を盛つけ、出されたのが「松花堂弁当」の始まりです。
 八幡市の学校給食では、八幡の歴史を学ぶ給食の取り組みとして1996(平成8)年に黒塗りの弁当箱を50個購入し、一部の学校で「松花堂弁当給食」をスタートしました。その後弁当箱を150個買い足して、2003(平成15)年からは市内全校で3月に卒業お祝い給食として6年生を対象に実施するようになりました。
 松花堂弁当給食は、献立内容が弁当に合う和食の日に設定し、基本献立に煮物や揚げ物、果物等をプラスした内容にしています。
(調理員の取り組み)
 調理員は、当日全児童分の給食を作りながら6年生用に松花堂弁当を作っています。
 さらに、給食室からのお祝いメッセージとして、6年生の児童一人ひとりに調理員手作りのメッセージカードを弁当箱に添えている学校もあります。
 黒塗りのお弁当箱と蓋付きの吸い物椀を目の前にした6年生は、ちょっぴり大人になった気分で弁当箱の中を覗き込んでいます。

(3) 栄養バイキング給食(6年生)
 6年生の家庭科と関連した食に関する指導として、栄養バイキング給食を実施しています。
 栄養バイキングは、自ら管理していく能力を身につけることを目的としており、事前授業で家庭科の時間に、栄養バランスを考えて料理を選択する方法を学びます。
 バイキング給食当日は、事前授業で選択した料理を主食(3種類)・主菜(3種類)・副菜(3種類)・果物(3種類)からそれぞれ選んでいきます。
(調理員の取り組み)
 栄養バイキングは、料理ごとに栄養量が定められているため、決められた分量のごはんをおにぎりにしたり、カップに小分けしていきます。
 調理だけではなく、飾り付けや子どもへの声かけも忘れません。

(4) 鍋給食(主に5年生)
 楽しい給食の取り組みとして、冬になるとテーブルにカセットコンロを置き、班で1つの鍋を囲んで鍋給食を実施します。
 当日の基本献立に合わせて、ちゃんこ鍋やキムチ鍋、カレー鍋などいろいろな種類の鍋給食を実施します。各班には校長先生や事務の先生、調理員など、日頃一緒に食べることのない教職員の方に入ってもらい、体も心も温まる給食を楽しみます。
(調理員の取り組み)
 鍋給食用に食材を大皿に盛付けるなど、鍋給食の下ごしらえをし、栄養教諭と連携して、給食時間までに準備を整えます。
 給食時間には、調理員も交代で班の中に入り子どもと一緒に鍋を囲みます。

(5) パーティー給食(主に4年生)
 主に4年生を対象にパーティー給食を実施しています。大皿に子どもたちの好きな「からあげ」や「エビフライ」、「とうもろこし」や「ブロッコリー」などを色取りよく盛付け、班で大皿料理を囲みながらパーティー気分でいただきます。
(調理員の取り組み)
 子どもたちの喜ぶ料理を色取りよく大皿に盛付け、手作りのカードを添えて出します。

(6) ランチルームでの特別給食
 教室で食べる給食とは違い、ランチルームでは栄養教諭からマナーや栄養について学びながら楽しく食べています。
(調理員の取り組み)
 ランチルームで食べる時のお楽しみとして、調理員が、当日の給食の「ごはん」を「おにぎり」にしたり、パンにクリームを挟んで「クリームサンド」にするなど、楽しい給食の取り組みを行っています。

(7) 調理員が作る食育資料
 2005(平成17)年に食育基本法が施行されてから、八幡市では、給食室から発信する食育の取り組みを始めました。夏の研修会で掲示用資料の作り方を学び、各給食室オリジナルの資料ができあがっています。その資料を給食室前に掲示すると、給食を取りに(返却しに)来た子どもたちが興味をもって、調理員に声をかけてくれます。
① マグロの手作り模型
  昔と違い、加工された切り身の魚がよく出回っていることから、何の魚のどの部分を食べているのか、名前や形を知らない子どもが増えています。そこで、赤身やトロなどの部位が一目でわかるようなマグロの模型を作り、子どもたちに説明しました。
② 旬野菜のしりとり
  9月の旬の野菜や果物を知ってもらうため、しりとり形式のクイズを掲示用資料として作りました。
  色紙を切り抜き、トウモロコシや梨を作って貼り付け、梨には幸水や20世紀などいろいろな品種があることもわかりやすくのせています。

(8) 献立の公開
 八幡市では、給食の献立を市のホームページと各学校の携帯メールで公開しています。
 ホームページには、家庭に配布しているその月の予定献立表(基本献立)を掲載しており、毎月たくさんの方に見ていただいています。
 また、各校の携帯メールでは、その学校の献立が見られるようになっています。携帯メールだと何時でもどこでも見ることができるため、保護者が買い物に行った時、夕食のメニューと重ならないように確認してもらうことができ便利です。

4. おわりに

 学校給食の調理業務の外部委託が増える中で、直営の単独調理場方式でなければできない学校給食とは、手間暇を惜しまず、子どもたちに喜んで食べてもらえる、美味しい、手作りの給食を提供することが第一であると考えました。さらに、調理員が直接、子どもたちと関われる特色ある取り組みとして、手作りの掲示用資料を作り給食室に掲示し、給食を取りに来たとき、食器を返却しに来たときなどに声かけをして、子どもたちに指導しています。
 これからも、児童・教職員・保護者等から評価してもらえるような取り組みについて研究を進めていきたいと考えています。