1. これまでの経過
教育グループは2年前に「放課後子どもプラン事業」の実態把握のため、県内自治体を対象にアンケート調査を実施して、その結果を基に今後の方向性や課題解消に向けた取り組みを実施してきました。
しかしながら、現場ではさまざまな懸案事項が蓄積しており、思うような成果を得られず課題の解消に至っていないのが現状です。
今回、もう一度現状と課題を再考して検証したいと思います。
2. 放課後子どもプラン事業とは
近年、核家族、共働き世帯の増加により子どもたちをめぐる不可解な事件の続発や家庭教育力低下が叫ばれるなか、放課後等に子どもたちが安全で安心して過ごせる居場所づくりを確保するため、文部科学省管轄の「放課後子ども教室」と厚生労働省管轄の「放課後児童クラブ」の2つの事業を一体化あるいは連携して実施する事業です。
(1) 放課後児童クラブ
一般的に「学童保育」と認識されており、目的は親が共働きなどで留守家庭の児童の「生活の場の確保」とされています。
対象児童は主に小学校1年生から3年生。期間は週に5~6日で夏休み等の長期休暇中も対象となっています。
負担費用は月に4,000円から7,000円が主流とされています。
(2) 放課後子ども教室
目的は小学校の教室等を活用して「スポーツ・文化活動等の学びや体験の場の提供」と地域の同世代の子どもや大人たちとの活動を通して「社会性・自主性を育むこと」とされています。
対象児童は主に小学校1年生から6年生。期間は週に1~3日で、負担費用は原則無料(保険料等は除く)とされています。
3. 現状と課題
「放課後児童クラブ」は留守家庭の子どもの見守りを行っている事業で、子ども達の安全対策、共働き家庭へ支援といった役割を持っています。
しかし、現状は見守りだけで精一杯になってしまっていて、多様なプログラムを導入できないことや、長期休暇時に定員がいっぱいになり待機状態になってしまう等の問題点があります。
「放課後子ども教室」では、子どもの体験の場づくりや、地域人材が学校に集まることで学校を地域活動の拠点としていくことができ、地域力の向上も望める事業です。
様々な体験をしたり、色んな人と接したりすることで、子どもは考え、感覚を働かせ、心と体を成長させていきます。
子どもの健全な育成のためには、そういった場をつくることが重要になりますが、地域間の実施日数のばらつきや学習アドバイザー等の不足、保育を目的としていないため対象となる児童が限定されてしまうことが問題点として挙げられます。
4. 課題の解消にむけた取り組みについて
放課後安心して過ごせる場所のない子どもをどうするか?
課題の解消については行政内部の連携の強化や保護者の理解や協力が必要となることはいうまでもありません。
自治体の現状としてよく言われるように、「放課後児童クラブ」と「放課後子ども教室」の連携はあまりできておらず、現在行われている事業で手がいっぱいで手間をかけて連携することまでできないのが担当部署の実情であります。
こうした中、杵築市では、2010年5月より山香地区をモデル地区として「放課後児童クラブ」と「こども教室」が密に連携する事業を開始しました。
この事業は公民館(教育委員会)と各児童クラブが一緒に山香の各小学校で毎週1回行っています。
地域と密接に関わり、地元の人とのネットワークがある公民館(教育委員会)が、放課後児童クラブに関わることで、将来的に「放課後児童クラブ」は多様なプログラムの導入が可能になり、「こども教室」で行う内容をより広い子どもを対象に、より多い回数開催できることになります。
まだ、実際に運用が始まったばかりですが、将来的には放課後の学校を開放して、放課後児童クラブの指導員が教育委員会と連携し、児童クラブが主体となって各種こども教室を運営する技量を身につけて事業が展開されていくことが期待されます。
5. 「放課後子どもプラン事業」を実施していない自治体の今後について
大分市では、「放課後子ども教室」と類以した取り組みとして「地域子ども活動支援事業」があります。
(1) 地域子ども活動支援事業
子どもたちの身近な場所で、地域の指導者による子ども教室を開催することで、より多くの子どもが参加できる体験活動の場の提供を進めています。
「放課後子ども教室」の目的が放課後の安全な居場所の確保であるのに対し、地域子ども活動支援事業は、体験活動の場の提供を主目的としており、趣旨が異なっています。
2010年度からは、これまでの「地域子ども活動支援事業」を再構築し、「おおいたふれあい学びの広場推進事業」に取り組んでいます。
この事業は、地域住民や団体などが、自己の学習成果や経験を活かして、子どもの体験活動を中核とした事業に積極的に取り組む体制を整備するとともに地域住民との交流を通し、子どもの社会性を養うことを目的としています。
2010年度は地域公民館主体型(旧子ども活動支援事業)を54ヶ所、地域主体型(モデル地域)を6箇所で行う予定であり、今後は地域主体型の拡大を図ることとしています。
従来の「地域子ども活動支援事業」も本年度からの「おおいたふれあい学びの広場推進事業」も単独事業で実施されており、補助事業としていない理由については「放課後子ども教室」と趣旨が異なっており、補助基準に合った事業とするためには多くの縛りが出てくることと、中核市であるため、他市町のように県からの補助が受けられず補助事業として行うメリットが少ない等の理由があります。
今後の方向性については、これまで体験学習の場として構築してきましたが、市民ニーズから、今後は実施回数を増やして居場所事業としての意味を持たせたいと考えており、その段階で補助事業として実施を考えているとのことです。
6. おわりに
「放課後子どもプラン」事業は各自治体・地域の実情にあった形でどのようにでも発展させることが可能な事業です。
先で述べた、2つの事業(放課後児童クラブ・放課後子ども教室)の連携体制を確立することや事業成果を上げるためには保護者の意識改革が不可欠であり、あくまでも「自らの子育ての一環として子どもを参加させている」との認識を持ってもらい、限られた財源と人材(指導にあたる大人の確保や今後の児童数の減少等)が懸念されるなか、保護者や地域の理解と協力がないと事業を継続・発展していくことが困難であることを知ってもらうことが大切であり、いかに保護者からの理解・協力を得られる啓発活動を行えるかが、今後の焦点となるとして結論とします。
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