1. はじめに
「仕事と生活の調和」(ワーク・ライフ・バランス)への取り組みについて、2007年12月、厚生労働省が「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」を策定したことで、各自治体でも憲章に伴う形でさまざまな施策が実施されていると思われます。
松本市は、2005年4月に4村と2010年3月に1町と合併し、人口約24万3千人、市職員約3,000人、正規職員約2,000人、組合員数1,622人(市職労1,399、水労98、病院労185)という規模の市で、ワーク・ライフ・バランスに関する事業に対しては県と協力しながら、「仕事と家庭(子育て)の両立促進事業(ワーク・ライフ・バランス促進事業)」として取り組んでいます。
○ 長野労働局「ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた取り組みの提言」
① 年次有給休暇の取得推進 ~連続休暇にプラス1~
② 所定外労働の削減 ~家庭のために週1回はノー残業~
③ 仕事と家庭の両立 ~もう常識だね、女性も仕事、男性も家庭―育児・介護休業で就業継続―~
○ 仕事と子育ての両立促進事業 2009年度の実施事業
① ワーク・ライフ・バランス推進セミナー 2回開催
② ワーキングマザー支援セミナー 2回開催
③ 再就職準備のためのグループ・ディスカッション 2回開催
○ 労働教育講座 2009年度中信地区労働フォーラム開催
① 「『ハラスメント』対策講座~もしあなたが当事者になったらどうしますか?~」
② 「もう一度見直そう『働く』ということ」
③ 「こんな時どうする? ~労使トラブル・ケーススタディ~」 等々 |
また、松本市では、2003年に交付・施行された「次世代育成支援対策推進法」による「特定事業主行動計画」の策定から5年が経過し、あらたに策定された「第2期松本市役所次世代育成支援特定事業主行動計画」が策定され、2010年度~2015年度までの計画期間の達成目標は下記のように挙げられました。
達成目標
仕事と子育ての両立に関しては「家庭も職場も笑顔でいっぱい 育てようみんなの子ども」という副題にもあるとおり、単に父親・母親が自分の子どもを育てるだけでなく、職場全体がみんなの子どもを育てるという意識をもって支援していくことが何よりも重要です。
そのため、松本市役所では前述の基本方針に基づき、出産及び子育てをする職員に関する事項とそれをバックアップする環境整備(支援事業の推進)に関する事項の二つの体系にのっとり、具体的な行動項目を設定しています。
具体的な行動項目の実施により、すべての職員が「次世代の子どもたちを育て、見守る意識」を持ち、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」が実現され、誰にとっても「働きやすい職場環境」となることをこの計画の達成目標とします。職員一人ひとりが行動計画の内容を自分自身に関することとしてとらえ、次世代を担う子どもたちを育成する必要性を再認識し、職場内でお互いに助け合い、支え合っていきましょう。
行動計画の展開
第1節 出産及び子育てをする職員に関する事項
1.親となる意識の自覚 3項目 2.休暇制度の充実 5項目 3.福利厚生事業の充実 3項目 4.妊娠中・育児休業中におけるフォロー 6項目 5.円滑な職場復帰への対応 3項目
第2節 支援事業の推進に関する事項
1.職員への情報提供と意識の高揚 9項目 2.休暇取得の推進 5項目 3.職場環境及び勤務条件の整備 7項目 4.施設整備 3項目 |
さて、そこで働く市役所の仲間の実態はどうでしょうか。年々厳しくなる行財政改革による人員削減等があるなかで、行政サービスのさらなる拡充に対応するため長時間労働となる傾向は非常に高く、心身ともに疲れ、メンタル等様々な理由で休職する仲間が年々増加、職種によっては、定年まで働き続けることができず、早期退職が増加している傾向にあります。
○ 行政改革大綱による要員の削減
区 分 |
第3次大綱('00~'02) |
第4次大綱('03~'05) |
第5次大綱('06~'09) |
目標人数 |
△100人 |
△100人 |
△112人 |
実施人数 |
△100人 |
△ 90人 |
△132人 |
差 |
0人 |
△ 10人 |
20人 |
○ 2010年度休職者数(産・育・専従除く)……9人 |
2. 松本市のワーク・ライフ・バランス ~休暇取得状況から~
「第2期松本市役所次世代育成支援特定事業主行動計画」では、育児休業制度や休暇制度等の情報提供、ワーク・ライフ・バランスや性別役割分担への意識改革等を図るための各種研修等が盛り込まれています。計画に記載されていた、松本市職員の休暇取得状況は下記のような結果でした。(数字は2008年度のものです。)
① 「年次休暇」取得状況
・年次休暇平均取得日数……9.2日
・5日以上取得率……73.8%
・連続3日以上の長期休暇の取得率……1.4%
② 出産・育児に関わる休暇の取得状況
・妻の出産時における男性職員の配偶者出産休暇の取得率……47.7%、
・妻の産前・産後休暇期間中における男性職員の育児参加休暇取得率……4.5%
・男性職員の育児休業取得者……3人
・短時間勤務制度取得者(2010年4月~)……2人
③ 家族たすけあい休暇……同居家族(事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)及び別居である配偶者若しくは1親等の血族で負傷・疾病・老齢等により日常生活を営むのに支障がある者を看護及び介護する場合。
松本市職員の勤務時間及び休暇等に関する条例
第11条 特別休暇は、選挙権の行使、結婚、出産、交通機関の事故その他特別の事由により職員が勤務しないことが相当である場合として市長が規則で定める場合における休暇とし、その期間は市長が規則で定める。
松本市職員の勤務時間及び休暇等に関する規則
第9条 (1) 有給休暇
14 |
負傷、疾病若しくは老齢により日常生活を営むのに支障がある同居家族及び別居である配偶者若しくは1親等の血族を看護し、又は介護するため勤務しないことが相当であると認められる場合 |
1年につき10日を超えない範囲内で必要と認める期間 |
|
家族たすけあい休暇取得状況
年度 |
取得率
(%) |
取得延べ
日数 |
取得
人数 |
1人あたりの
取得日数(日) |
取 得 理 由 |
2005 |
3.61 |
226 |
65 |
3.48 |
1.子 2.同居親 3.配偶者 |
2006 |
7.13 |
441.5 |
127 |
3.48 |
1.子 2.同居親 3.配偶者 4.別居親 5.同居祖父母・孫 |
2007 |
7.04 |
419 |
124 |
3.38 |
1.子 2.同居親 3.配偶者 4.別居親 5.同居祖父母・孫 |
2008 |
7.60 |
444.5 |
130 |
3.42 |
1.子 2.同居親 3.配偶者 4.別居親 5.同居祖父母・孫 |
2009 |
9・80 |
503.9 |
165 |
3.05 |
1.子 2.同居親 3.別居親 4.配偶者 5.同居祖父母・孫 |
※ 2005年度は創設時で、対象は同居家族の看護及び介護まで。
なお、嘱託職員に関しては、2010年9月1日より、国に準じた形の「子の看護休暇」及び、「短期介護休暇」(ともに無給)が導入されました。
3. 考察 ~松本市職労として~
出産・育児に関する休暇や家族たすけあい休暇等の活用により、取得しやすい休暇が、有休の基本となる年休の取得が難しい状況にあります。実際、第2期計画作成するために当局が行った第1期実施状況調査職員アンケートでは、下記の結果がみられました。
第1期 特定事業主行動計画の実施状況調査(結果)の中から
○ 各所属長(75課)対象の調査
|
計画の中では、「管理監督者は職員の業務内容はもちろん、年次休暇の取得状況を定期的に把握し、職員が家族の記念日やこどもの参観日などにも積極的に年次休暇を取得できるような支援体制を整え、すべての職員が年次休暇を取得しやすいと感じるような職場の雰囲気を作るようにしましょう。」とあります。ですが、実際は管理監督者と職員の年休に対する考え方の違いの大きさがはっきりするものとなりました。
そのギャップを埋めるためには、また、ワーク・ライフ・バランスが実現されるためには、業務の把握だけではできません。職員の休暇取得に対する意識改革だけでは足りません。各職場が正常に機能するための人員確保や、業務量・内容の見直しが必要だと組合は考えます。そのためには、働く仲間一人ひとりの働かされ方ではなく、働き方への意識改革が必要です。
松本市職員労働組合として働きやすい職場づくりを目指すための基となるものは現場で働く仲間一人ひとりの声です。どんなに小さな声にも応え、ワーク・ライフ・バランスが保障される職場環境の構築を目指して組合活動に取り組んでまいります。
|