【自主レポート】 |
第33回愛知自治研集会 第12分科会 地域からのワークライフバランス |
政府は、ゴールデンウィークなどに集中している連休を、全国5地域ごとに分散化する案を示していますが、2010年度、当市(新潟県妙高市)をはじめ、全国8地域で休日分散化にかかる実証事業を行っています。 |
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1. はじめに ~新潟県妙高市(みょうこうし)のご紹介~ 新潟県「妙高市」(みょうこうし)は、2005年4月1日に、古くから自然・歴史・文化・産業などでつながりの深い「新井市(市街地)」「妙高高原町(観光地域)」「妙高村(農村地域)」の3市町村が合併し、誕生しました。 2. 休日分散化政策の概要 政府が示している「春(ゴールデンウィーク)と秋(シルバーウィーク)に集中する休日の分散化案」は、全国を「北海道・東北・北関東」「南関東」「中部・北陸信越」「近畿」「中国・四国・九州・沖縄」の地域ブロックに分け、5地域ごとに休日をずらして5連休を設けるという案です。 3. 政府が考える「意図」とは ~渋滞緩和でもっと旅行して! ~ 政府が提示している休日分散化案は、「ゴールデンウィークの地域別分散化」と「秋の大型連休創設」の二つから成っており、ゴールデンウィークの分散化とは、憲法記念日(5月3日)、みどりの日(5月4日)、こどもの日(5月5日)をひとまとまりにして地域ブロック別に割り振るというものです。割り振り方法として、月~水曜日に割り振る方法と、月~水もしくは水~金に割り振る方法が提示されていますが、いずれにしても、現行の祝日は記念日としては残りますが、「休日ではなくなる」ことになります。
観光庁がまとめた「平成22年休暇の取得・分散化に関する国民意識調査」によると、ゴールデンウィーク分散化について、「賛成」もしくは「どちらかといえば賛成」と答えた人は合わせて49.7%。その理由として最も多かったのは、「道路や交通機関の混雑緩和に期待するから」(約87%)です。 渋滞解消の根本である『時間と空間での車の分散』と言われる方法は、フランスではすでにかなり前から取り入れられています。東京大学先端科学技術研究センターの調査によると、1車線につき1時間に約2,000台以上の車が集中すると、どのような道路でも「確実に渋滞が発生する」ということが研究で明らかになっており、この「容量」を超えない仕組みを考えていかなければ、どんな渋滞対策も意味がないといわれています。 実際、渋滞だけを見ても、ゴールデンウィークの混雑ぶりは突出しており、日本バス協会によれば、2009年のゴールデンウィーク(4月29日~5月6日)における高速バスの運行の遅延時間は全国平均で約4時間34分。同年のお盆期間(8月6日~18日)の約3時間23分と比べても1時間以上も遅い統計となっています。 政府は分散化の効果の一つとして「交通渋滞や混雑の緩和による移動時間の短縮化」を挙げていますが、上で示した地域分割案の場合、例えば、千葉、埼玉、東京、神奈川の4都県は同時に連休に突入することになります。 これで、交通機関や道路の混雑は本当に緩和できるのか疑問が残ります。人口密集地帯である首都圏、中京圏、関西圏については、県ごとに休暇が分散するような処置を取らないと渋滞が緩和されない恐れがあります。つまり、旅行に出掛けた先での渋滞は緩和されるかもしれませんが、行き帰りの渋滞は解消されない可能性があります。 しかしながら、旅行需要が分散し、全国的に見れば渋滞はこれまでより少なくなる可能性があります。旅先での移動もスムーズになり、観光地で駐車場に入りやすくなる可能性もあります。実際、学校休業の分散化(学校の長期休暇を地域ごとにずらす政策)を行ったドイツで、アウトバーン(高速道路)の渋滞が減ったという報告もあります。したがって、交通集中に関しては、それなりの改善効果が望めるかもしれません。 |
4. 実施に向けた主な課題 ~本社稼働日に支社が休日? 単身赴任は?~ (1) 東京本社が稼働していて新潟支社が休めるのか? (2) 単身赴任のお父さんは子どもと一緒に休めない? 5. 実証事業に対する妙高市の取り組み ~家族の時間づくりプロジェクト~ 休日の分散化にあたり、観光庁が全国に実証事業への参加を呼びかけ、当市(新潟県妙高市)など全国8地域が実証事業を引き受けました。実証実験では、地域ごとに季節を分けて連休を設け、その実施について、実施校の保護者に対してアンケートを行い、「分散化」が家庭や学校、地域に与える教育的、社会的効果や課題などを検証する予定となっています。今回の実証事業では、特に「家族の過ごし方」という教育的観点に比重が置かれています。 |
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6. なぜ、妙高市が実証事業を引き受けたのか? なぜ、「受け入れる側である観光地」を抱えた妙高市が、この実証事業を引き受けたのでしょうか。 7. 実証校選定の理由と経過 本事業は、「家族の時間づくり」を主目的としていますが、その目的と同等以上に、我が国全体で、休暇取得を分散することで「観光地の繁閑の平準化による観光振興」に協力することを目的としています。 8. まとめ ~連休化と分散化も大事だけど「有給休暇の取得促進」も重要~ 企業などでの有給休暇取得は、100%消化しているところは少ないのではないでしょうか。理由は、人員削減等で仕事が忙しくなっていることが第一に挙げられますが、「休暇を取り過ぎると上司や同僚の目もあり気になる」、「のんびり休暇を取っていたら会社が潰れる」、「病気になった時に残しておきたい」等々が挙げられると思います。 |
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