1. エコ・省資源・地球温暖化防止に係る考え方
環境問題については、さまざまなメディアが報じており、学術的にも見解が多く出されているところである。地球温暖化の要因の一つであるとされる炭酸ガスの発生についても、二酸化炭素は海から自然発生する比率が最も高く、人為的な発生は僅かであるという説もある。
また、エコという名称がついたような製品は、全てが環境に配慮しているように思えるが、エコ、省エネ家電など新たな製品が増えることによって、処分時に新たな廃棄物も増加する懸念も指摘されており、物を大切に扱うことよりも、エコ製品に買い替えることが環境に配慮している、といった誤解を与えかねないような事例もある。また、エコという言葉自体の使われ方が本来の意味とかけ離れていると感じる場面も多くある。
エネルギー使用の形を大きく転換するためには、経済面での理由、自然エネルギーの利用、ライフスタイルの変化といったことが求められる。石炭から石油へ転換となったこととは背景が異なる部分があるが、将来的には、環境面での配慮から、例えば車ではガソリンから電池へとシフトしていくことも予想されている。
また、科学技術の進歩によって実現される要因も大きい。徐々に一般家庭にも導入され始めてはいるが、ソーラーパネルの設置、ハイブリッドカーの購入などは、初期投資に何十万、何百万と費用がかかり、環境に対する配慮ということは大事であるが、個人で設置する場合には経済的な負担が影響してくる。そのため、どのくらいの期間使用すると、経済的に元を取ることができる、といった考え方が環境行動を後押しする要因となっていることは否めない。そのため、LED電球のように一般家庭でも負担が少なく取り組めるような製品も普及し始めている。また、交通については、徐々にエコカーなどの普及が進んできているが、二酸化炭素を全く発生しないような、燃料電池車の市販が実現されるようになるなど劇的な変化があると、一気に普及する可能性がある。
後世にツケが回っていくことになることを防ぐために、地球環境を守っていく取り組みは、現代人が早急に対応しなければならない問題の一つで、多くのテーマが議論されている。
このような現状を踏まえ、環境問題は地球規模でする話であり、国レベルでの取り組みが大切、ということを認識しつつ、高所大所での議論も重要であるが、縦横に広がりを見せている諸課題の解決のためには、今、地域でできること、個人でできること、そのいずれもが重要であるとの視点に立ち、今回、グループでの検討を行った。
2. 自治体・公的機関での取り組み
現在、環境行動を社会的に認識させるために、自治体や公共機関、企業での取り組みが重要な役割を果たしている。数年前から始まった、夏季には冷房温度設定を上げるクールビズ、冬に暖房温度設定を下げるウォームビズの取り組みは、一般的に浸透してきている。
自治体によっては暖房の温度設定を低くして、数千万円の予算節減を図っている例もある。ただ、施設によっては温度が低いことで高齢者から苦情がある事例もあり、画一的な取り組みではなく、柔軟な対応が求めらている。
また、役所の庁舎にソーラーパネルを設置するといった試みもあるが、これは、電気料節減という経済効果を狙ったものであると同時に、公的機関が人目につくところで実施することにより、住民に対しての環境意識についての啓発という、二次的な効果も期待できる。
道内では約9割の自治体で家庭ごみ有料化が実施されているが、札幌市で、2009年7月から家庭ごみ収集の有料化が始まったこともあり、グループ内の議論の中では、ごみ処理に関する話題について多くの意見が出た。
行政としての課題、住民としての感じ方について、札幌圏の各自治体が発行している、ごみ分別のパンフレットやマニュアルの内容を比較検討してみた。自治体が、ごみとして回収して処理するのは、大きく分けて、燃やせるごみ・燃やせないごみ・危険ごみの区分であることは概ね統一されていた。
その一方、資源物の回収やリサイクルについては、自治体によって行う、行わないなど、地域間での差異が見られた。
自治体作成の分別マニュアルによると、紙類、缶、ビン、ペットボトルについては、収集するのは市町村、自治会、学校、企業と異なるものの、民間でも自治体でも共通して、リサイクル物として対応している。ただし、紙類といっても、その中では、幅広く種類が分かれるため、リサイクルの内容について自治体間で差異があった。
特殊な事例としては、食品の発泡トレーや繊維類をリサイクル物として取り扱う自治体もあった。一方、紙類は燃やせるごみとして扱うため、自治会などの資源物回収を利用するようアナウンスをする例、携帯電話、家庭用食用油の廃油といったものを回収する民間企業を紹介しているところもあり、地域ごとの特色が現れていた。
処分の方法については、廃棄、焼却、埋め立てといった、統一的な取り扱いがなされているが、リサイクルの取り組みについては、各地域でのごみ有料化の取り組みと並行して進められているためか、地域ごとで異なっている印象を受けた。
分別やリサイクルについての意識をより高めていくためには、受け皿を広げていくために、行政として直接回収などの業務を行わないまでも、他の自治体や民間企業の動きなど、より多くの情報を共有化して地域住民に対して発信を行っていく必要性があると感じた。
情報の偏在によって、ある地域では「資源物」として回収されている物が、別な地域においては「ごみ」として処理をされてしまうことも想定される。
自治体におけるごみ処理能力や、地域の民間事業者の回収ルートの範囲など、地域の実情に応じて対応が異なることは止むを得ないが、距離的にも隣接した札幌圏エリア内では、通勤や通学などの移動も圏域内であることから、職場や学校、家庭でごみ処理、リサイクルの方法を統一するような、一定程度共通した認識での取り組みが求められる。
また、民間事業者が行っているリサイクルに係る業務についても、地域的に無理なくカバーできる範囲であることから、一自治体に留まらない、広域的な情報の共有が必要となってくると推測できる。
国際的な動きでは、税制の取り扱いについても先進的な取り組みを進めている国もある。環境税などはいろいろな手法があるが、炭素税、廃棄物税などがあり、地球温暖化防止、CO2削減に効果があるのは海外で多く導入されている炭素税方式になってくると考えられる。ただし、炭素税方式の中でも様々な手法があるので、導入に向けてはより効果的な手法を検討すべきである。
また、政治的な意図や経済対策の側面もあると思われるが、国内でも実施された、エコカー減税、エコポイントという制度自体についても、環境に配慮した施策を進めていくという視点で、幅広い層へ啓発を行ったという意味では、一定程度の効果は認めることができる。ただし、暫定的な実施であったため、広がりを持たせるという点では疑問が残る。国策として進める上では、恒久的に続くもので、社会に浸透する取り組みを実施すべきである。
3. 家庭でのエネルギー使用状況と課題
2008年度にグループ討議を行った結果、「エコ生活実践 やってみよういしかり2008」という待機電力の節電についての実践を行い、2008年全道自治研集会で発表を行った。
この際に、「世間で騒がれながら、まだまだ意識が実践へと向かっていないことも浮き彫りになったのではないだろうか。この温暖化の問題は、地球全体のことであることもさることながら、一人ひとりの意識の問題でもあり、ローインパクトな、エコ生活を実践していくことが大切だ」とグループ報告を行っていたが、現在でもなお基本的な考え方は変わっていない印象を受ける。
環境についての意識は高いものの、単純に節電や省資源というだけの取り組みでは効果が薄い。エコ活動の推進については、政策的な理由などの要因で従前の常識が覆ることや、科学技術の進歩により新たな製品が開発されることなど、社会的な変化などによって、大きく前進する可能性を秘めている。
石狩地方本部自治研推進委員会・地球温暖化防止検討グループでは、家庭での現状を把握するために、グループメンバーを中心に、家庭での燃料消費状況の調査を実施し、2009年11月から3月までの、灯油・ガス・電気・ガソリンの消費について調査を行った。 |