【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第13分科会 温暖化ガス25%削減 地域での可能性を模索する

 群馬県内では、大型外来雑草が農地のみならず河川敷、農業用水利施設など公共水域に繁茂している状況が見られる。また、水生植物についても外来性のものの観測事例が報告されている。このような外来雑草の群落形成は、地域固有の生態系を崩壊させるばかりでなく、地域が培ってきた「生物多様性」を失う恐れがあるため、地域を守る観点から何らかの手段を講じるべきであると考える。



公共水域における帰化雑草類の分布と駆除方法の研究


群馬県本部/群馬県職員労働組合・外来雑草研究会

1. 外来雑草による「地域侵略」

(1) 事例調査
 昨年度の調査研究により、本県内でも在来固有種を駆逐する勢いで大型の外来植物の繁茂する区域が拡大していることを確認した。
 外来植物は輸入粗飼料や穀物に混じって侵入し、静かにその生息域を拡大しており、赤城山麓や榛名山麓の畑地帯や山林界付近、耕作放棄地周辺などでの増加が進んでいる。
 このような外来植物は、本来の植物よりも大型で成長も早いことから、周辺の植物を駆逐して成長することが多く、代表的な外来植物である「アレチウリ」の群生場所においては、ほぼ単一の植物相を形成してしまう。
 本県を流れる利根川流域においてはこのような事例は確認されていないが、長野県の千曲川流域では河川敷をアレチウリが占拠し、立木まで枯らしてしまうような事態に陥っている。
 このため、長野県では毎年7月の最終日曜日に全県一斉の「外来植物駆除日」を設け、アレチウリの退治に向けて県民挙げての作業を行っている。
 本研究会では、当初「全県一斉駆除日」に長野県の取り組み状況調査を行う予定であったが、当日は都合がつかなかったため、千曲川流域におけるアレチウリの繁茂状況と水辺環境の確認調査を実施した。
 調査場所は、長野県小諸市の千曲川支流河川及び東御市内の下水処理場付近から海野宿にかけての千曲川右岸で、いずれも地域住民のボランティア活動により駆除が行われている地域である。
① 小諸市内
  調査場所は小諸市文化センターに隣接されている乙女湖公園脇に位置する千曲川支流の小河川で、右岸側は水田、左岸側は公園に隣接している。この付近では2001年頃から駆除が継続されており、現在では在来植生の復活にむけての再生が進んでいる。
  また、公園に隣接していることもあって親水護岸なども施工されているが、手入れが行き届いておらず、アレチウリとは異なる外来雑草の繁茂も見られる。
  やはり、こういった河川敷については、頻繁な草刈り、維持管理作業が必要と思われた。
  なお、アレチウリは数本が確認されたが、駆除作業後に発芽したものとみられ、大きく成長しているものではなかった。
  このほか、下流の千曲川河川敷周辺を調査した結果、道路隣接地や耕作放棄された農地などで、外来雑草の繁茂を確認した。

② 東御市内
アレチウリに覆われた立木。
  調査場所は、長野県上小地方事務所が主催して駆除作戦を展開している千曲川河川敷であり、2009年7月15日に実施されている。
  しかしながら、河川敷全体の駆除とはならず、堤防部のみを作業区域としたためか、駆除作業区域外の部分は、ほぼアレチウリに覆われ、立木も押しつぶされた格好となっていた。
  また、アレチウリの駆除を行った部分においては、すでに他の外来雑草が芽吹いて結実しており、こういった駆除活動の難しさを改めて確認した次第である。
 


  駆除作業後に再生した雑草の様子
 アレチウリの駆除と草刈り作業を行った堤防部。発芽して結実しているものは、同じく外来雑草の「イチビ」である。

搬送される輸入粗飼料
 このような状態から様々な植物の種子が飛散し、生息域を広げていることも考えられることから、シートで覆うなどの工夫が必要と思われる。

(2) 調査結果の考察
 冒頭でも述べたように、外来雑草は輸入粗飼料や穀物によって日本国内に種子が移入され、広まったものと考えられている。
 アレチウリについては、1952年に静岡県で発見されたものであるが、これは輸入大豆に混入していた種子が原因とされている。
 このような形で国内に侵入した種子は、旺盛な繁殖力と生命力によって急速にその生息域を拡大しており、県内の分布状況を見ると、利根川が千曲川のような状況に陥らないとも限らない。
 本県に限らず、多様な自然を維持していくことについては、地域住民の意識が低いと思われることから、長野県のように「全県一斉」の取り組みが必要だと感じた。
 本県においては、輸入粗飼料に混入した種子が家畜排せつ物とともに農地へ還元され、それが広まっていると考えられることから、農業とその関連産業に対しての働きかけも重要である。
 このほか、長野県の現地調査では確認できなかったが、本県では東毛地域を中心として外来水生植物の繁茂によって農業用水路や水利施設への悪影響も指摘されていることから、「水と土」を守っていく活動の推進が求められる。

2. 外来雑草駆除対策

 群馬県では、地域住民による公共施設の保全管理を目的として、「クリーン大作戦」をはじめ、環境レンジャーによる環境保全活動の意識啓発、農村環境の維持保全を図る「農地・水環境保全向上対策」などを推進している。
 このような対策は、それぞれが施策として進めているものであるが、個々に独立した活動支援であり、一体的な活動支援とはなっていないようである。
 都市的な地域と郊外農村ではそれぞれの住民意識は異なると推察されるが、「県内の地域環境保全」という情緒的なものであっても、生物多様性の維持が将来にむけて必要なものであることを踏まえ、それぞれの施策連携、あるいは持続性のある活動支援が求められる。
 このため、2004年に施行された【外来生物法】により「特定外来種」に分類されている外来植物の駆除活動を、地域環境保全支援活動の項目に加え、「地域環境保全と生物多様性の確保に関する活動」を補助対象としてはどうか。
 地域環境の保全を図るためには、人海戦術による駆除がもっとも効果的であり、強害雑草への除草剤使用を減らすことで安全・安心な地域農業の実現にも一歩近づくことから、活動によって被益する範囲も拡大する。
 このほか、輸入粗飼料を国産粗飼料生産へと誘導することは、外来雑草移入の脅威を低減するばかりでなく、家畜排泄物の的確な処理と利用を促し、「食糧自給率向上」にも寄与することが期待される。
 副次的効果としては、地域景観も向上することから「観光客誘致」を図る面でも好材料となるほか、外来雑草対策に貢献する「環境レンジャー」育成塾のようなものを県内に設置することで、群馬の知名度向上にも寄与すると思われる(下図参照)。

3. まとめ

 これまで、外来雑草の脅威という点については強く意識していなかったが、関係文献にあたったり、先進的な取り組み事例を調査したりする中で、その地域の景観とともに、植生を保全する活動が重要であると痛感した。
 植物の名称は、発芽時や生育段階での見分けがつけにくいこと、日頃なじみがないため覚えにくいという側面もあるが、地域の自然環境に影響を及ぼす種類に限り、県の広報紙、あるいは地元広報紙に紹介するとともに、子供会活動や地域住民活動の中で取り上げ、広く周知することが望ましいと感じられた。
 行政側では、予算や人員の不足などにより地域の植生にまで気を配る施策の展開は困難であることから、地域の自治活動を応援する中で、外来雑草対策を進めることを提案し、まとめとしたい。


<外来雑草対策のイメージ>