1. はじめに
全国の公営企業の電気事業は、大多数が二酸化炭素を排出しない水力発電を行い環境にやさしい自然エネルギーで再生可能な水を用いて貴重な電力を作っています。
神奈川県企業庁は、1938年から電気事業で水力発電を行い、近年ではクリーンエネルギーの自然の力を用いた発電の普及を図るために太陽光・風力発電PR施設の設置、ダムから河川の維持管理用水を放流する際にエネルギーを利用した小水力発電設備の設置などさまざまな取り組みを行っています。
一方、水道事業では浄水処理発生土(河川から取水した原水から水道水をつくる過程で取り除いた土砂等の沈殿物を乾燥させたもの)はすべてセメント原材料として有効利用したり、漏水防止のために地下漏水の発見、漏水を未然に防ぐ工事等を行ってきました。
近年では、浄水処理発生土をセメント原材料以外に園芸用土やグラウンド用土として再資源化したり、環境に配慮した水道施設工事として①水道管の浅層埋設、②建設発生土の再利用などの環境保全に向けた取り組みを行っています。
また、計量法の規定により検定期限となったメーターを回収し、メーターの外側の金属部分を再利用するなど廃棄処分による環境負荷低減も取り組んでいます。
本レポートでは、浄水場・配水池における電気設備を中心にしたCO2削減に向けた取り組みを報告します。
2. 取水施設から安全な水を届けるまでのCO2削減の取り組み
川・湖等から取水し、浄水場できれいにするなど、県民が安心して飲むことができる水道水を届けるまでには、さまざまな工程があります。
その工程で、エネルギーの消費量や二酸化炭素・窒素酸化物・硫黄酸化物などの排出量の削減などで環境負荷低減に取り組んでいます。
なかでも、水道事業における電力使用量の大半は浄水場やポンプ所で使用するものとなっており、浄水場やポンプ場の運転方法改善や更新時等に上記のような取り組みをして、消費電力量とCO2の削減をしています。
3. 浄水場太陽光発電システム
県営水道寒川浄水場の沈でん池やろ過池には、異物の投げ込みを防ぐため、上にふた(蓋覆)を設置する際、上部を有効活用して約900枚のパネルで覆うようにして、最大出力容量約120kWの太陽光発電システムを設置しました。
ふた(蓋覆)は点検のときに開閉しやすいように軽くて丈夫なFRP(強化プラスチック樹脂)でできており、発電した電気はポンプや水質計器などに使われています。
これにより年間約8万キロワットアワーの発電と年間約30トンのCO2削減になっています。
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ふた(蓋覆)が開の時 (手動で開閉可能) |
通常は投げ込み防止のため閉めています |
4. 配水池小電力発電設備
浄水場で作られた水道水は、送水ポンプにより各配水池などへ送られ、そこから各家庭に配水しています。
芹沢配水池では、水車発電機を設置するまでは入水弁を開閉して配水池へ水道水を入水していましたが、送られてきた水道水にはまだ未利用エネルギーが残っていました。
これを有効活用するため最大出力55kWの小水力発電設備を設置し、クリーンな発電による環境負荷低減を図っています。
発電した電力は、ポンプ所で使用する電力の一部としてほぼ全量消費しますが、余った場合は電力会社に売電しています。
これにより、年間約20万キロワットアワーの発電と年間約84トンのCO2削減になっています。
5. 今後の取り組み
今後の取り組みとして、運用・監視システムの低損失サーバ等の採用、高圧受電設備の高効率変圧器への変更、ポンプのインバータによる流量調整などが計画されています。
本レポートでは、神奈川県庁組織の電力使用量の約37%が浄水場やポンプ所で使用されている状況から、運転方法の改善や発電設備の設置により消費電力とCO2削減の取り組みを報告しましたが、水道事業として他にも①ダム上流域から取り除いた土砂の骨材利用、②ダムに流入した流木の破砕処理による再資源化、③水源かん養林の整備・保育など【水源からじゃ口まで】CO2削減の取り組みを行っています。
このような取り組みは、地球規模全体から見れば極めて小さいものではありますが、関心をもって取り組んでいくことが重要であると考えます。
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