【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第13分科会 温暖化ガス25%削減 地域での可能性を模索する

 化石燃料等、例えば石油などを使用し、COを大量に排出し続けたことが原因で発生した地球温暖化は、一刻の猶予も許されないところまで進行しつつある。そうしたなか、成長する過程でCOを吸収し、資源の再生が可能なバイオマスに、いま注目が集まっている。地球環境を守り、持続可能な未来をめざす鍵は、バイオマスの活用にあるということを提言したい。



富山県におけるバイオマスの利活用について


富山県本部/富山県地方自治研究センター・環境部会長 吉村  誠

1. はじめに ―― バイオマスとは? ――

 バイオマスとは動植物から生まれた再生可能な有機生資源で、代表的なものは家畜排せつ物や生ごみ、木くず、もみがらなどである。
 バイオマスを大きく分けると「廃棄物系バイオマス」「未利用バイオマス」「資源作物」の3つに分けられる。日本の主なバイオマスについて、図表-1に示す。
 現在、我が国においては、地球温暖化防止、循環型社会形成、戦略的産業育成、農山漁村活性化等の観点から、2002年12月にバイオマスの利活用推進に関する具体的取り組みや行動計画を「バイオマス・ニッポン総合戦略」として閣議決定し、さらに2006年3月には、これまでのバイオマスの利活用状況や京都議定書発効等の戦略策定後の情勢の変化を踏まえて見直しを行い、国産バイオ燃料等の本格的導入、林地残材などの未利用バイオマスの活用等によるバイオマスタウン構築の促進等を図るための各種施策を進めているところである。

図表-1 日本の主なバイオマス

出典:(社)日本有機資源協会

2. 日本のバイオマスの賦存量と利用状況

 現在のところ、日本の「廃棄物系バイオマス」は約3億万トンあり、そのうちの20%にあたる6千万トンが利用されておらず、未利用バイオマスについては、8%程度しか利用されていない。富山県においても、ほぼ同様のデータが得られた。
 日本のバイオマスの賦存量と利用状況を図表-2、富山県のバイオマスの賦存量と利用状況を図表-3に示す。

図表-2 日本のバイオマスの賦存量と利用状況

出典:(社)日本有機資源協会

図表-3 富山県のバイオマスの賦存量と利用状況


3. 富山県におけるバイオマスの利用状況

(1) 富山県のバイオマスタウン構想
 富山県では15市町村中6市町が既にバイオマスタウン構想を公表・策定済みであり、2010年度には、南砺市が策定予定である。富山県のバイオマスタウン構想策定市町村を、図表-4に示す。

図表-4 富山県のバイオマスタウン構想策定市町村(6市町)

(2) 富山県の6市町におけるバイオマスの賦存量等について
 富山県の6市町の主なバイオマスについて、賦存量、利活用目標を、イラストマップ上にまとめた。

図表-5 「バイオマスタウン構想」公表市町村の利活用目標




(3) バイオマスタウン構想の概要(6市町)
 各市町のバイオマスタウン構想の概要を、図表-6にまとめる。

図表-6

富山市バイオマスタウン構想の概要
1. 生ごみ(一般廃棄物)によるバイオマス発電
2. 廃食用油、なたねによるバイオディーゼル燃料の製造
3. 製材工場廃材、稲わら・もみ殻及び林地残材・未利用間伐材によるバイオマス発電やペレット、バイオ燃料の製造
4. し尿汚泥及び紙ごみの再生利用

黒部市バイオマスタウン構想の概要
1. 下水道汚泥等利活用事業
2. 廃食用油等のバイオディーゼル燃料化推進事業
3. 廃木材・流木等の利活用促進事業
4. 資源作物(非食用多収穫米・なたね)活用事業
5. 食品廃棄物(生ごみ)のバイオマス利活用促進事業
6. リサイクル可能な廃棄紙のバイオマス利活用促進事業
7. 資源作物を原料としたバイオプラスチック製品の普及啓発事業

高岡市バイオマスタウン構想の概要
1. 家畜排せつ物、もみがら及び野菜残渣を活用した良質堆肥づくり事業
2. 廃食用油を活用したバイオディーゼル燃料製造事業
3. 生ごみ、刈芝草、下水汚泥を活用したメタン化・堆肥化事業
4. バイオマスの利活用を促進するためのソフト事業
5. その他
    
朝日町バイオマスタウン構想の概要
1. 家畜排せつ物、食品廃棄物及びもみがらを活用した良質堆肥づくり事業
2. 食品廃棄物、剪定枝、下水汚泥のバイオマス複合利活用事業
3. 廃食用油の燃料化事業
4. その他の取り組み

射水市バイオマスタウン構想の概要
1. 木質系バイオマスの利活用
2. 食品廃棄物系バイオマスの利活用
3. 農業系廃棄物
4. 畜産加工廃棄物
5. 農業系未利用バイオマス
6. 水産からのバイオマス
7. バイオマスの教育・食育へのサポート
8. 地域のバイオマス資源や利活用に向けた取り組みの調査

立山町バイオマスタウン構想の概要
1. 生ごみのたい肥化
2. 木質バイオマスのペレット化
3. 家畜排せつ物の堆肥化

4. まとめ

 バイオマスとは、私たちが利用した資源が、様々な生物を経て、自然へと戻っていくものである。それは山から川、海へ、海から山へといった、自然の流れの輪の中にあるものである。そして、このような循環があればこそ、そのなかにいる我々は誰一人として欠けてはならない。みんなの協力があって、はじめてバイオマスの利活用のメリット、資源循環が生まれるのである。それは大きな地球環境のなかで、実践するのは難しいことであるが、だからこそ、今回紹介させていただいた富山県のバイオマスタウンのような、身近な地域の環境の中で、自分自身が連携の環の一員として存在していることを意識し、小さなアクションを起こすことがとても重要なことではないだろうか。地域でつくる連携の環のイメージを下記に示す。