1. はじめに
城南衛生管理組合は、京都府南部に位置する宇治市・城陽市・八幡市・久御山町・宇治田原町及び井手町の3市3町で構成する特別地方公共団体(一部事務組合)であり、管内約38万人の日常生活から排出されるごみやし尿の処理・処分、埋め立て処分及び資源ごみのリサイクルを行っている。
1999年に、資源循環型社会推進のための資源化処理と啓発の機能を併せ持つ施設として、リサイクルプラザ「エコ・ポート長谷山」を設置。缶類、びん類、ペットボトル、紙パック、発泡トレーの5品目の資源ごみの再資源化のほか、ごみの減量、不用物品の再生利用の促進を図るため、衣服、ガラス、自転車などのリサイクル工房の事業を展開している。
2. リサイクル工房の現況について
リサイクル工房は、職員4人(土日受付担当の嘱託職員1人含む)と、一般公募による住民ボランティアスタッフ(以下「住民スタッフ」という)34人が協力し運営している。2010年度の体制は以下のとおりである。
区 分 |
人 数 |
備 考 |
衣服工房 |
11 |
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ガラス工房 |
14 |
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自転車工房 |
4 |
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ガイドスタッフ
(小学校施設見学案内) |
12 |
小学校施設見学案内担当 工房との兼務者7人 |
計 |
41 |
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エコ・ポート長谷山は、市街地から離れた山間部に設置されており、直接の交通機関がなく、立地条件は厳しい状況にあるが、近年は参加者の利便性を考慮した市街地公共施設での出張開催、構成市町主催のイベントに積極的に参加しており、確実にその認知度は高まっているところである。
また、2009年度からは、環境学習として訪れる小学校の施設見学案内を住民スタッフに行っていただくなど、多くの成果を収めているところである。(2009年度実績:41校、101クラス)
参考までに、2008年度の利用実績については下表のとおりである。
区 分 |
人 数 |
収入額 |
備 考 |
衣服工房 |
119人 |
70,400円 |
工房開催日は、主に毎月の土 ・日・祝日と平日1回 |
ガラス工房 |
858人 |
511,250円 |
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自転車工房 |
127人 |
204,700円 |
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各種教室 |
812人 |
309,550円 |
年間84回開催 |
衣服譲渡 |
1,792人 |
909,400円 |
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合 計 |
3,751人 |
2,005,300円 |
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※ 各種教室とは、各工房の住民スタッフが企画する特別教室。月に2回~3回開催。
3. 工房の自主運営化について
(1) これまでの運営方法
1999年4月のリサイクル工房開設以来、各工房における教室などの開催内容については、工房担当職員が企画を立案し、住民スタッフについては工房開催日における体験参加者の対応と教室の準備が主たる活動となっていた。
(2) 工房自主運営に向けて
2008年度から組織方針としてこれまでの直営型から住民スタッフによる自主運営型(NPO法人運営方式も可とする)を目指すとの方向性が示された。開設以来大きな成果を遂げ、運営形態も確立した10年目を期に、循環型社会構築に賛同する住民から構成する「住民スタッフの会」と組合が協力しながら、その進展を図ることとしたものであり、これまで職員が担ってきた年間事業計画、予算管理等の工房運営事務のすべてを「住民スタッフの会」に移行するとした計画であった。
① 他団体同種施設の運営状況について
2007年11月に実施した自主運営に関する調査によると調査対象とした21施設のうち、約半数が運営方法は異なるものの自主運営方式を採用していることがわかった。
運営方式 |
施 設 数 |
直営運営 |
12 |
自主運営 |
行政協働型 |
2 |
NPO |
2 |
委 託 |
1 |
財団法人 |
1 |
指定管理者制度 |
3 |
計 |
21 |
② 住民スタッフの会の組織と位置付け
2008年度からの自主運営試行期間として、これまで各工房で活動いただいている住民スタッフを一つのサークルとして一本化し、2008年5月1日、自主運営組織「住民スタッフの会」を立ち上げた。
この会の立ち上げに際しては、会則を制定し、スタッフによる会の名称決定、役員の選出を行った。また、運営にかかる事務処理等を行う事務局を設置し、当面の間は組合職員をもって充てることとした。
運営経費については、「組合の負担金」と「会の自主活動による収入額」を充てることとしているが、初年度については、「手作り市の収入見込み(各工房スタッフによる手作り作品売り上げ収入)」を予算化し、会議にかかる経費、視察研修経費などに充て、スタッフのやりがいを引き出すための独自運営経費として位置付けた。
※1 未実施
※2 原則年1回開催、総会で予算及び決算、活動計画等を確認する。
※3 衣服、ガラス、自転車の各工房別代表者(役員)と事務局、工房担当職員で毎月1回の工房運営会議を開催。
4. 自主運営の現状と課題
2008年5月からの自主運営試行から早2年が経過した。より積極的な自主運営体制を構築するにあたり、以下に現状と課題をまとめてみた。
(1) 事務局の体制について
「住民スタッフの会」発足の2008年度は、従来の工房担当職員が1人減員の上3人(嘱託職員1人含む。)となり、住民スタッフ26人及び事務局職員1人(再任用短時間勤務職員2人の交代制)で開始することとなった。
基本的には、工房運営を事務局中心にすすめ、スタッフの会に対し、工房担当職員は、事務局とのパイプを通し、間接的な支援を行っていく体制となった。
当初は、事務局員の2人の交代勤務体制が障壁となり、事務局内での連絡調整、意思決定が図れない状況が生じた。また、この欠点を補うため2人同時出勤による体制を図ったが、結果、勤務日数の制約を受け、肝心の住民スタッフとの意思疎通が図れず、また、外部との連絡調整、工房の開催準備がままならないなど、住民スタッフからの不信感が増幅する結果となった。
試行錯誤をしながら2年間この体制を実践したが、紆余曲折の結果、自主運営試行を迎える3年目の2010年度からは再任用職員を解消して、代わりに1人の正規職員配置となり、工房担当職員が事務局を兼ねる形での体制がスタートした。
(2) 住民スタッフの意識向上に向けて
住民スタッフの会立ち上げ後、スタッフの自主運営に関する意識向上のため、各工房において毎月1回全体会議を定例化し、スタッフ間の意見交換の場を設けた。このことにより、これまでの工房開催日の当番だけではなく、教室の企画立案等についても積極的に協議をいただけるようになった。
特に、3年目は工房担当職員(事務局)とスタッフ間との対話を重視し、意志の疎通を図りながら、これまで職員が担当していた工房運営の根幹となる年間事業計画等の策定作業についても共同で行っていける機運があり、少しずつではあるが、これらの積み重ねが会の積極的な自主運営に結びつくものと考えている。
(3) リーダーの育成について
ひとつの会としての定まった目的・目標に向かって活動していくためには、各工房を束ねる、会の運営の中心的なリーダーの存在が不可欠である。
各工房のそれぞれの活動が地域のごみの減量、リサイクルを通じた資源循環型社会の構築に貢献していることは間違いなく、行政ボランティアという立場を理解した上で参加いただいている住民スタッフばかりであるので、おのおのに十分にその力が備わっていることは間違いない。
会の立ち上げから2年、各工房代表者(役員)の選出には輪番制により毎年役員が変わるといった傾向があったが、3年目になって中心的なリーダーのもとに活動していく基盤が整いつつある。
(4) 報償費条件の検討
これまで、組合が住民スタッフに要請する活動については、無報酬とし、その日数に応じて日当(交通費)を支給している。この経費については、年間事業計画に基づき工房開催回数により積算し予算措置を行っているため、今年度はスタッフ数も会発足時より増加したこともあり、1人1人の住民スタッフの活動回数が制約されている現状にある。よって、個人のボランティア意欲の向上、これまでの支給背景も考慮しながら、より自主的な活動が行えるよう、支払い額の改定(削減)も検討していく必要がある。
(5) 運営経費(会の予算)について
運営経費については、「組合の負担金」と「会の自主活動による収入額」を充てることとしているが、初年度以降、住民スタッフによる手作り作品の販売収入のみを予算化している。
しかし、その手作り作品に係る材料費や作成にかかる光熱水費等の経費は依然組合負担のままで、いわゆる経営的感覚がとれない予算となっている。今後は、さらにやりがいを創出するためにも、一度にすべての運営経費を引き渡すのではなく、まずは、現在スタッフの会で積極的に企画することになった各工房の教室開催にかかる材料費を会の支出で行い、その参加料収入は会の予算に充てるなどの検討を行う必要がある。
5. まとめ
組合にとってのリサイクル工房は、一部事務組合というその性格上、直接的に住民と接する機会が少ない組織の中、循環型社会構築に向けた掘り起こし事業、啓発事業を行える貴重な部門であり、今後も行政方針等を反映させていくことも必要とされる。
よって、当初は、組合が運営負担金(委託料)を「住民スタッフの会」に支出を行い、会が中心となって工房運営を行うという計画であったが、工房担当職員(事務局)の体制が変更になった今、現行どおり事務局を工房担当職員が担当し、然るべき事務を担当しながら、会のお目付け役(監査役)ともなり、現行の体制で「住民スタッフ」の会の自主運営を発展させていくことが最良であると考える。
自主運営方式には様々な運営方式があるものの「住民スタッフの会」という組織に積極的な行政参加をいただくことは、今後の工房発展には欠かせないことである。
これまで住民スタッフとともに積み上げてきた成果を無駄にすることのないよう、まずは工房自主運営の範囲と工房担当職員の事務範囲を再整理し、さらに一丸となって活動できる組織となるように導き出していきたい。
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