【自主レポート】

第38回地方自治研究全国集会
第1分科会 人口減少後の地域社会と政策 ~国が進めた政策の現状から考える~

 近年、台風の影響による様々な被害が多発し、全国的に局地的な豪雨による災害も増加をしている。
 東日本大震災が発生した際にも多くの被害があった。
 このような災害時での龍ケ崎市職員の対応について振り返り、地域の自主防災組織との連携について考察した。



市職員による災害時即応力と
地域担当職員制度による災害対応
―― 市民生活を守るために ――

茨城県本部/龍ケ崎市職員労働組合 圓城寺和則

1. はじめに

 近年の災害は、東日本大震災をはじめ、阪神・淡路大震災、新潟中越地震、熊本地震、2017年九州北部豪雨は甚大な被害を発生させ、わたしたちに多くの貴重な教訓をもたらした。
 また、龍ケ崎市は、地震災害のほか、台風等による風水害を幾度となく受けた災害の歴史があり、こうした自然災害等に対する対策が必要でもあり、市民の防災意識を高め、積極的な行政との協働防災と東日本大震災等の市現業職員による復旧作業について考察していく。

2. 龍ケ崎市の自然条件

 龍ケ崎市の防災対策の前提となる自然条件等についてまとめる。
 本市は茨城県の南部に位置し、東西約12km、南北約9km、面積78.55km2、牛久市、稲敷市と接する。
 市の中心部を含めた平均標高6mの低地部は水田地帯を形成し、西方には小貝川を隔てて取手市、牛久沼を隔ててつくば市とそれぞれ接する。台地と平坦な水田地帯、湖沼から成っている。
 台地面は、標高20m~27.3mで、3~5m程度の厚さの関東ローム層に覆われている。
 また、各所で大規模な造成がなされており、凹部が埋められたり、台地面が切り取られて本来の地形とかなり異なった人工改変地となっている地区がある。低地は、市の南半分に広がる氾濫平野と、台地を刻み込んだ小河川に沿って分布する谷底平野に分けられる。

3. 龍ケ崎市で発生した災害

 龍ケ崎市では、幾度となく自然災害による被害を受けてきた。
 1981年8月24日に発生した台風15号では関東平野直撃により、小貝川が決壊し甚大な被害を受けた。
 2009年10月8日には、台風18号に伴う竜巻被害、2013年10月15日には、台風26号に伴う土砂災害被害があった。

(1) 台風15号による小貝川決壊被害
 関東地方で強い雨が22~23日までの約30時間の比較的短時間に降り、特に利根川と鬼怒川の上流山間部では、総雨量300~500mmに達し、利根川では1972年の洪水を上回る規模の出水となり、警戒水位を大幅に超え、1959年8月の洪水以来22年ぶりに利根川に警戒警報が発令されました。
 この洪水により、利根川水系は随所で河岸護岸崩壊・漏水・根固め流失等の被害を受け、特に利根川の支川となる小貝川下流左岸の龍ケ崎市では、24日午前2時頃堤防が決壊し、浸水戸数915戸、浸水面積は約1,600haに達した。


決壊現場(茨城県龍ケ崎市高須地先)

龍ケ崎市浸水被害状況


(2) 台風18号に伴う竜巻被害
 2009年9月29日に発生した台風18号は、中心付近の最大風速が40m/sの強い勢力で8日5時過ぎに愛知県知多半島付近に上陸後、東海・関東・東北地方を進んだ。この台風は、非常に強い勢力を維持したまま上陸したため、沖縄地方から北海道地方にかけての広い範囲で暴風が吹いた。この台風の影響で、8日の午前4時55分ごろ、龍ケ崎市大徳町を中心に局地的突風による大きな被害が発生した。
 建物の損壊が生じたのは、北河原から上佐沼、大徳町戸張を経て野原町に至る延長4.5km、最大幅250mのほぼ南北に真っ直ぐ伸びる帯状域だった(参照)。この被害の分布や屋根瓦の飛散方向などから、南から北へ進行した竜巻が生じたことが分かる。
 被害は、負傷者4人、住家124棟、非住家48棟、車両被害3台など。全体の被害の4分の3は龍ケ崎中心市街の東端にあたる大徳町戸張地区であり、建物全半壊のほぼ全てはこの地区の北半部にて発生している。老朽化した木造家屋や屋根や壁の弱い倉庫・作業場に全半壊が多くみられた。渦内の低い気圧は吸い上げの力を加えるので、屋根・板壁が引き剥がされているのが目立った。住家の一部破損被害の大部分は屋根瓦のずり落ちであり、竜巻被害の特徴は屋根の飛散や2階部分の破損で、この状況は上空から撮影した写真でよく示される。


建物被害発生地点および被害写真

被害種別

被害内容

人的被害

4人(軽傷)

住家被害

半壊

2棟

一部損壊

122棟

その他

4棟

非住家被害

公共建物

2棟

その他

48棟

その他

車両

3台

フェンス

4箇所

カーポート

20箇所

ビニールハウス

1棟

(竜巻被害の概要)

(3) 台風26号に伴う土砂災害被害
 2013年10月11日発生した台風26号は、関東地方に接近・上陸する台風としては「10年に一度の強い勢力」として警戒された。16日午前中には大型で強い勢力のまま暴風域を伴って房総半島東岸をかすめ、東京都、千葉県、茨城県の14地点で、観測史上最大の24時間降水量を記録した。
 龍ケ崎市では、総降水量244mm、1時間あたりの最大降水量は47.5mmに達した。この台風による被害は、床下浸水が200棟、冠水による床下浸水が36棟、また、土砂警戒区域の崖崩れが12箇所で発生した。


台風26号による土砂災害の状況

路肩法面部が大きく崩落

(4) 東日本大震災による被害
 2011年3月11日に発生した東日本大震災では、龍ケ崎市の最大震度5強を観測し、その後も余震(最大余震5弱)により被害がさらに大きくなった。
 被害の状況としては、建物の崩落による死者1人、負傷者5人、家屋・建物の全半壊が数多くあった。

龍ケ崎市の被害状況

死者

負傷者

家屋損壊(棟数)

その他建物

1人

5人

全壊

半壊

一部損壊

公共施設

その他

30

7,920

37

302

 道路に関しても大きな被害があり、陥没や破損により通行不能箇所が市内に多数発生した。
 また、住宅塀の倒壊による交通障害も複数箇所で発生した。


 
震災による道路破損状況

4. 緊急時の現業職員による直営力

 龍ケ崎市の現業職員数は、2020年4月現在44人おり、様々な資格を有し各所属課で活躍している。
 日常の業務においては、現場での市民ニーズに応える柔軟な対応ができることが委託業者との大きな違いとアドバンテージとなっている。
 また、ひとたび緊急災害時となれば即時に臨機応変な対応をすることができる。
 龍ケ崎市で発生する可能性がある主な災害としては、台風や降雪、竜巻、地震等が考えられる。
 1981年に発生した小貝川決壊による水害時には、全職員体制で対応をし、現業職員も重機等を駆使し冠水被害の食い止めや、その後の復旧作業、浸水住宅の消毒作業等を素早く実施している。
 2009年の局地的突風被害時には、早朝の発生であったが、緊急対応をし、家屋からの飛散物(特にカーポートや物置、家屋屋根、ビニールハウス等)の撤去・回収作業を行った。大型の飛散物に関しては、重機を使用しての対応となった。
 2011年3月11日に発生した東日本大震災時には、市内各所で道路破損による通行不能箇所が多数発生し、住宅では屋根瓦の落下や塀の倒壊(特に大谷石積み塀の倒壊が多数発生)が数多く発生した。
 龍ケ崎市では技能労務職事務所(所属所名:施設管理事務所)でショベルカーやバックホゥ等の重機やダンプカー等を配備しており、砕石等の資材も市直営の資材置き場に常備をしている。
 この地震発生時には初動で陥没等による道路通行不能箇所の通行止め作業を昼夜休日問わずに行った。
 その後は、道路復旧作業を順次行うことにより、通行止めの解除が早い段階でできた。
 2013年の台風26号による土砂災害時には、土砂崩落で寸断された道路をショベルカー等の重機類で対応をし、復旧作業を行った。再度の土砂崩れ発生を防ぐための保護シートでの覆土作業も行っている。

5. 龍ケ崎市職員の災害時初動体制

 地震災害時の初動対応については、「龍ケ崎市職員災害時初動対応マニュアル」(地震災害発生後概ね1週間の初動期において人的被害防止・軽減を目的とした災害応急対策が確立するまでの初動対応)が策定されている。

・地震発生状況に応じた配備体制

  区分

震度

体  制

体 制 内 容

対応組織

警戒体制
(自動配備)

情報収集活動に当たるとともに、速やかに第1次又は第2次の非常体制へ移行できる準備を行う。

警戒本部

5弱

第1次非常体制
(自動配備)
(全職員の概ね40%)

必要に応じた周囲の救助活動と、情報収集連絡活動等を実施し、被害状況に応じて、第2次非常体制へ移行できる体制とする。

災害対策本部

5強以上

第2次非常体制
(自動配備)
(全職員の概ね90%)

市の組織、機能のほぼ全てをもって応急の対策活動に当たる体制とする。(各課の日常業務は必要最小限にとどめる。)

災害対策本部


(1) 警戒本部
 市全体の被害状況を把握し、防災関係機関と連絡をとりながら、全市的若しくは局地的な応急対応を指示する。

(2) 災害対策本部
 全体的な被災状況を収集・把握するとともに、速やかに全市的な応急対策を決定し、それぞれの任務に当たらせる。 
 また、各部署で災害時対応役割が「龍ケ崎市職員災害時初動対応マニュアル」により決められている。

(3) 職員の招集
 職員緊急連絡用メール配信を利用し、携帯メールアドレスに災害対策本部等から各職員へ連絡をし、職員の安否確認および参集の可否(参集可能時間)を確認し、参集後には、各所属部署で災害復旧の任に当たる。
 台風等の自然災害についても「龍ケ崎市職員災害時初動対応マニュアル」に準じた対応をとっており、台風の進路・勢力規模によって災害本部の立ち上げや、夜間であれば、待機や対応を行っている。

6. 地域担当職員制度による地域防災

(1) 地区活動拠点指定職員の定義
 市役所に勤務する部課長を除く職員の中から各地区のコミュニティセンターに直接参集し、災害対応の初動対応を行う職員をいう。
 職員の勤務時間外に震度5強以上の地震が観測されたときに自動設置され、龍ケ崎市災害対策本部の指示があったときにも設置される。

(2) 地区活動拠点の設置場所
 原則各地区のコミュニティセンターに設置されるが、コミュニティセンターの安全が確保できない場合は、近傍の公共施設(小中学校等)となる。
 地区活動拠点の設置基準(震度5強)の地震が観測されたときは、自己の安全及び家族の安否等を確認後、おおむね30分以内にあらかじめ指定された地区活動拠点まで徒歩又は自転車等で参集する。
 2人体制を基本とし、職務上位の者が地区活動拠点運営の指揮をとる。

(3) 役 割

防災ボックス内部
地震発生時に自動で開錠される
 地区活動拠点の設置をし、避難所の開設及び初動運営を行い、設置してある防災ボックス内にあるカギを使用してコミュニティセンターの開錠を行う。
 地区活動拠点の設置状況、地域の被災状況、避難者の状況などを災害対策本部へ報告をし、避難者が発生した場合は、受け入れを行う。

(4) 避難所運営体制
 施設の安全確認後、避難者の入所に備えて、住民自治組織又は自主防災組織等の協力を得て、受付場所や受付要員を配置し、避難者受入れを行い、防災コンテナに備蓄してある食糧・毛布などの運搬・配布、防災井戸の開放などを行う。


検温の様子
 
避難者カード記載の様子

(5) 初動対応セット・感染症対策セットについて

 初動対応セットは、避難所の受付を行う際に使用する備品をまとめたもので、各小学校の防災コンテナに配置され、避難所開設・受付開始までの時間を短縮できるようになっている。
 感染症対策セットについては、消毒液原液、マスク、フェイスシールドや非接触型体温計等も配備されている。


初動対応セットの中身
 
感染症対策セットの中身

7. まとめ

 様々な災害が発生していく中で、自治体は、被害情報の集約や発信、必要な物資・食料の確保、危険箇所への対応等に忙殺され、行政の対応にも限界がある。
 発災直後の人命救助や初期消火活動に対して、行政の救助活動は時間的、人員的制約が大きいため、地域の自主防災組織の活動いわゆる"共助"がさらに大きな役割を果たすことになる。自主防災組織は、地域住民の生命・財産を守り、被害を最小限にとどめるために、効果的な防災活動を行うことができる極めて重要な組織であり、行政と地域がさらに連携していくためにも、地域担当職員制度を活用し、地域と協力して防災活動に取り組むことが重要となっていく。