【自主レポート】 |
第38回地方自治研究全国集会 第1分科会 人口減少後の地域社会と政策 ~国が進めた政策の現状から考える~ |
地域課題の解決による「"自立"と"つながり"で支え合い、豊かさを創造する地域づくり」をめざし、安全で自由な移動と地域で安心して暮らすためのコミュニティの構築をめざした取り組みである「たすけあいプロジェクト」の展開及び新たなサービスの開発・実証を進め、民間主導での地域サービスの実現性を検証するために、豊田市は、株式会社三河の山里コミュニティパワーが実施する地域電力事業を活用した地域サービス事業を支援している。 |
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1. 経 緯 2016年に豊田市の足助・旭・稲武地区において、①おでかけ促進、②移動支援、③健康維持を3つの柱に、安全で自由な移動と地域で安心して暮らすためのコミュニティの構築をめざした取り組みである「たすけあいプロジェクト」(※1)を開始した。このプロジェクトは、名古屋大学・豊田市・足助病院・地域住民による共同実施である。同じく2016年、豊田市はこれからの持続可能な都市づくりに向けて、先進技術の開発や実証を展開する母体として、企業や大学をはじめとした団体とともに「豊田市つながる社会実証推進協議会」を組織した。「豊田市つながる社会実証推進協議会」は「つながる社会」をめざし、地域課題の解決につながる様々な先進技術実証をスタートさせている。この取り組みの一環として、一般社団法人三河の山里課題解決ファーム(代表理事:早川 富博、以下「ファーム」という。)(※2)及び中部電力株式会社(代表取締役社長:勝野 哲、以下「中部電力」という。)は、豊田市山村地域等における課題解決に向け、「地域電力事業を活用した地域サービス事業」の実証を行っていくことで合意し、2019年5月31日に3者協定を結んだ。実証目的等の詳細は以下のとおりである。 ① 実証目的 地域課題の解決による「"自立"と"つながり"で支え合い、豊かさを創造する地域づくり」をめざし、たすけあいプロジェクト(※1)の展開及び新たなサービスの開発・実証を進め、民間主導での地域サービスの実現性を検証する。 ② 対象地域 豊田市の山村地域及び山村地域に準ずる地域(※3) ③ 実証内容 ファームが設立する「株式会社三河の山里コミュニティパワー(以下「MYパワー」という。)」が、以下の事業を実施する。 ア 対象地域での電力の小売事業 イ 再生可能エネルギーの普及促進 ウ たすけあいプロジェクトの継承、発展 エ 山村地域等の課題解決のための新たなサービスの開発、実証、展開 ④ 各主体の主な役割 ア 豊田市:対象地域内における公共施設で使用する電力をMYパワーから購入するとともに、地域サービスの普及・定着に向けた調整を実施 イ ファーム:たすけあいプロジェクトや電力供給を始めとしたサービス事業を実施するMYパワーを設立し、運営を支援 ウ 中部電力:各主体のノウハウを活用した、対象地域の持続発展に資する「新しいコミュニティの形」の提供に向けた新サービスを開発、実証 2. めざす姿 「地域電力事業を活用した地域サービス事業」のめざす姿は、地域課題の解決による「"自立"と"つながり"で支え合い、豊かさを創造する地域づくり」である。このめざす姿を実現するため、MYパワーは、①対象地域での電力の小売事業②再生可能エネルギーの普及促進③たすけあいプロジェクトの継承、発展④山村地域等の課題解決のための新たなサービスの開発、実証、展開を実証事業として行う。3. 実施事業 MYパワーが行う事業を2つの柱として「エネルギー事業」と「地域サービス事業」に整理した。現在、小売電気事業として、山村地域等の公共施設(対象施設:24施設)の電力購入先の切り替えを行っており、一般家庭への販売は、来年度以降、各自治区で説明会を開き、順次進めていく予定である。(1) エネルギー事業 ① 小売電気事業 ア 当初売電先:公共施設、民間企業、介護施設 イ 今後の展開:民間企業の拡大、一般家庭 ② 再生可能エネルギー電源開発・検討 ア 自主電源の開発の検討 イ 卒FIT太陽光電気の買い取り (2) 地域サービス事業 ① たすけあいプロジェクトの継承、発展 ア ICTを活用した健康見守りサービス イ たすけあいカー、タクシム ② その他 実証期間中に新たなサービスの検討、実証、実装化を行う。 2019年10月よりたすけあいプロジェクトを継承、同年11月より公共施設の電力需要の切り替えを開始した。その他、新たな地域サービスの展開モデル地区の選定や、電源開発に向けた勉強会などを、順次実施している。 また、2019年度環境省補助事業にも採択され、地域への説明会や勉強会への専門家招聘、地域経済循環分析等を実施している。 2020年度は、たすけあいプロジェクトの発展、公共施設の電力切り替え完了、新たなサービスの開発・実証・実施に向けた調整を行っていく予定。 4. 最後に 利便性の高い公共交通システムを整備することが困難な山村地域等では、高齢者や子どもなどがとても不便な環境を強いられている。一方で、公共交通サービスを維持するためには、地域住民による積極的な利用が不可欠である。交通システムだけでなく、地域の課題を解決するには、地域住民が、自分事として地域課題に積極的に取り組む必要がある。行政の力だけでなく、民間の力と地域住民の力を合わせることで、「"自立"と"つながり"で支え合い、豊かさを創造する地域づくり」ができることを、今回の実証を通じて証明したい。 |
(※1)たすけあいプロジェクト: (※2)一般社団法人三河の山里課題解決ファーム: (※3)豊田市が2018年3月に制定した『山村地域の振興及び都市との共生に関する基本方針』にて設定 |