【自主レポート】 |
第38回地方自治研究全国集会 第1分科会 人口減少後の地域社会と政策 ~国が進めた政策の現状から考える~ |
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1. 出雲市の現状 出雲市の人口は175,728人(2019年5月末現在)。島根県内では人口が増加している数少ない都市のひとつです。製造品出荷額は県全体の4割、農業産出額、商品販売額はともに県全体の4分の1を占めるなど、各産業がバランスよく発展しています。 また、出雲縁結び空港、河下港、山陰自動車道など陸・海・空の交通拠点を有し、山陰有数の高度医療機関群の集積により医療福祉分野も充実する極めて発展可能性の高い都市となり、日本海側の玄関口としての条件を備えています。 昨今の人口減少社会にあって、若干ではあるものの人口増の傾向が続いている要因としては、近隣自治体からの転入者増のほか、市内大手電子部品製造メーカーに勤める日系ブラジル人の転入増が考えられます。 外国人住民の国籍別の人口としては、ブラジル3,628人、中国316人、ベトナム316人、フィリピン207人、韓国133人と続き、総計で4,950人(2019年5月末現在)。出雲市人口の2.8%を占め、島根県内の外国人住民人口の半数以上が出雲市に居住している状況です。 また、外国人の中でも在留期限や国内での活動が制限されている技能実習生とは異なり、職業選択が自由で、居住地も本人の意思で自由に移動ができる永住権を持つ者が全体の8割を超えるのが特徴です。電子部品製造業を中心に好調な業績が続いている地元企業にとって、貴重な働き手として期待されており、こうした傾向は当面続くものと予想されています。 2. 多文化共生の取り組み (1) 行政の取り組み新たな在留資格「特定技能」を新設する改正出入国管理法が2019年4月1日から施行されました。深刻な労働力不足に対する外国人就労者の増加に期待する声がある一方で、外国人と日本人との相互理解を推進させなければなりません。 出雲市においては、前述のような経過から、地方都市にあっても、比較的先進的に取り組んできた自治体といえるでしょう。これまで他国との友好・姉妹都市協定等の取り組みによる中高生の相互派遣などの「国際交流」と技能実習生の受入などの「国際協力」をキーワードに、国際化を推進してきていましたが、これに加えて、外国人住民を良きパートナー・良き隣人として受け入れ、ともに暮らしやすいまちづくりを進めていくために、「多文化共生」の取り組みが求められるようになってきました。 ① 国際交流員の役割 多文化共生を促進するため、市ではフィンランド、アメリカ、ブラジル出身の3人の国際交流員が活動しています。地域の国際交流や教育現場での国際理解教育の場に参加し、多文化共生、相互理解を進展、促進するための活動を行っています。 ② 日本語教室 外国人人口の増加に伴い、小中学校に通う外国人児童、生徒も増加しています。そのような日本語以外を母語とし、日本語が十分でない児童、生徒が在籍する学級で日本語での学習ができるように、特別の教育課程により日本語指導を行っています。昨年度は小中学校合わせて21校で193人の生徒が指導を受けています。また、日本語指導員21人、巡回日本語指導員3人を配置しています。児童生徒の母語のわかる支援員として日本語指導補助員(ポルトガル語)2人の配置や通訳・翻訳支援員2人を配置し、学校教育における日本語指導の充実を図っています。 ③ コールセンターの多言語化 消防では、緊急時の多言語への対応として、119番通報における多言語コールセンター(同時通訳サービス)を開設しています。英語、中国語、韓国語、ポルトガル語に対応し、2018年中は合計18件の利用があり、ポルトガル語が13件を占めていました。 外国人向けの防災研修を開催し、実際に多言語コールセンターへの通話訓練や、消火器訓練、地震への対応訓練などを行っています。 ④ 「やさしい日本語」の取り組み すでに多くの自治体で取り組まれているように、出雲市においてもやさしい日本語での情報提供を行っています。避難場所の情報提供をはじめ、生活に必要な事柄や外国人向けのお知らせ、確定申告のご案内等、やさしい日本語での情報提供を行っています。避難所運営における表示シート等についても、やさしい日本語で情報提供できるよう準備しています。 また、市民向けにやさしい日本語研修会を開催し、住民どうしの交流促進を図っています。
(2) 民間における取り組み
(3) 労働組合の取り組み |