【自主レポート】 |
第38回地方自治研究全国集会 第2分科会 「ラッセーラー」だけじゃない! 地域に根付いたねぶた(祭り) |
北海道七飯町では、日本国内では2020年1月に初めて感染者が確認され、その後、国内全域に広がった新型コロナウイルス感染症の影響により、多大な被害を受けた町内の飲食店等を支援するため、組合員に対し町内で使用できる商品券を配布する取り組みを行った。本レポートでは、この取り組みの内容や課題等について記載する。 |
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1. はじめに 中国湖北省武漢市での流行に端を発した新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という。)が全世界に多大な影響を与えている。日本国内でも2020年1月16日に第1号の感染者が確認された後、徐々に国内全土に感染は拡まっていき、4月7日には1都1府5県に緊急事態宣言が発出され、その9日後の4月16日には、緊急事態宣言の対象地域が全都道府県に広がるという事態に陥った。特に北海道では、感染の拡がりが早く、4月7日の緊急事態宣言の発出に先駆けて、2月28日に北海道独自の緊急事態宣言が発出されている。これにより、私たちにはコロナ感染拡大防止のため「不要不急の外出自粛」等が要請されることとなり、行動は抑制され、国内の経済は大きく混乱することになった。 七飯町でもその影響は顕著であり、特に観光業、宿泊業及び飲食サービス業などへの影響が大きく、売上が全くなくなった業種もあったほどであった。 2. 新型コロナウイルス感染症による地域経済への影響 七飯町は人口約28,000人の北海道の南部に位置する町である。主な産業は農業であり、その他、大沼国定公園を中心とした観光業も盛んである。七飯町では、2月19日に北海道で4例目となる新型コロナ感染者が発生しており、早い段階から町民に「不要不急の外出自粛」の呼びかけが行われた。さらに、2月28日には北海道独自の緊急事態宣言が発出されており、これらのことにより、地域経済は大きな影響を受けることになった。 具体的には、中国圏が中心であった観光客が激減。それに伴いホテルなどへの宿泊客のキャンセルが相次ぎ、3月は前年比7割減まで落ち込んだ宿泊施設もあった。また、「不要不急の外出自粛」要請の影響からか、飲食サービス業の売上も減少し、3月は前年比3~5割減まで落ち込んだ店舗が多い状況であった。 お土産品の取扱いを中心とした小売店の中には、休業を余儀なくされ、その後、再開の目途が立たないとの理由から、販売部門のパート職員を全員解雇するなどの措置をとった店舗もある。その他、企業からのセーフティネット保障制度(中小企業への融資制度)への申請が2019年度は1件だったのに対し、2020年度は6月1日時点で既に53件の申請があり、多くの企業が資金繰りに苦慮している状況が浮き彫りとなっている。これらの状況だけでも、新型コロナの地域経済への影響は多大なものであることがわかる。 3. 七飯町の支援内容 私たちは新型コロナによって地域経済が大きく影響を受けていることを肌で感じていたことから、少しでも助けになればとの思いから、地域経済を支援する方法を検討することにした。その結果、大きな影響を受けており、かつ私たちでも協力が可能な飲食店への支援に取り組むこととした。支援実施にあたり、次の2つの方法について検討した。 ① クラウドファンディングによる運転資金の確保 ② 組合員への商品券の配布による売上げ貢献 ①の方法は、クラウドファンディングにより地元民を初めとした全国の方々に、飲食店への支援を求めるものである。具体的には、支援希望者が数種類の支援金の中から好きな金額のものを選び支援する代わりに、その金額に応じた飲食券が返礼品として支援者に贈られる仕組みである。これにより得られた資金を協力飲食店に配分することで、協力飲食店は運転資金を確保することが可能となる。ただし、デメリットとしてクラウドファンディングは専用サイトを経由して行うことがほとんどであり、手数料として支援金の5%程度が専用サイト運営側に徴収されることや、返礼品の飲食券は通常、支援額以上の額で準備する必要があるため、支援金が集まるほど飲食店側が損をしてしまう仕組みになっている。 そこで、この取り組みを実施するにあたり町内の飲食店に聞き取り調査を行ったところ、次のことがわかった。 ① 町内の飲食店は住宅兼用の家族経営の店舗がほとんどである。 ② ①の場合、店舗の賃料が発生しないため、当面は国や町からの支援金で生活できる。 ③ 実質的には損になってしまうのであれば協力する飲食店は少ないことが予想される。 このような結果から、七飯町ではクラウドファンディングによる効果が少ないことが予想された。ただし、町内の飲食店が全て上記の①~③に当てはまるわけではないので、効果の大小にかかわらず実施することも検討した。しかし、飲食券の発行や協力飲食店の募集などには、かなりの手間がかかることが予想されたため、デメリットが多く、この取り組みについては行わないこととした。 ②の方法は、新型コロナの影響で様々なイベントが中止となったことにより、余剰となった組合費を活用して、組合員に対し七飯町商工会が発行している商品券を配布する取り組みである。この商品券を飲食店で使用してもらうことで、飲食店が商品券代+αを売上げることを目的としている。配布した商品券の額面は、余剰となった組合費と組合員数を勘案し、1組合員当たり一律3,000円分とした。 ただし、この取り組みについては、次の2つのデメリットがあった。 ① 商品券を配布することは、飲食店の利用を促すことに繋がるので、新型コロナ感染拡大への一助になってしまう懸念がある。 ② 商品券は飲食店のみではなく、町内の小売店等でも使用が可能であり、狙い通り飲食店の売上げに貢献しない場合がある。 これらの対応として、①については新型コロナの感染状況等を注視するとともに、町の意向等を確認したうえで、慎重に商品券の配布時期を決定した。また、②については、商品券配布時に本取り組みの趣旨を組合員に周知徹底することで、できる限り飲食店での使用を促した。ただし、いずれの対応もデメリットを完全に払拭できるようなものではなかった。
4. まとめ 今回のレポートでは、新型コロナ拡大という前例のない異常事態の中で、組合として少しでも地域を支援したいという思いから、何ができるか悩みつつも、飲食店への支援に取り組んだ。ただ一方で、新型コロナ拡大の中での取り組みとして、商品券の配布が正しい取り組みであったのか疑問が残っている。この取り組みにより、飲食店の売上に貢献することはできる一方、感染拡大リスクの増加にも繋がり、万が一、飲食店を通じた感染がおきてしまえば、より一層飲食店に悪影響を与えてしまいかねないからだ。 今回の取り組みは、判断が非常に難しい状況の中での取り組みであった分、組合として地域をどのように支援できるかを考えるよい機会となった。もちろん、このような事態は起こらないことにこしたことはないが、今回のようにいつ起こるかわからないものでもある。今後は、組合としても日頃から他市町村の取り組み事例など様々な事柄にアンテナを張り、迅速に地域を支援できるような体制を整えていきたい。 |