【自主レポート】 |
第38回地方自治研究全国集会 第6分科会 使って 広めて 愛して 守ろう公共交通 |
このレポートでは、衰退の一途をたどる川本町地域公共交通の維持・発展へ向けて、単組としてどのように関わっていくべきかについて考察し、論じたものである。川本町の地域公共交通の現状、自治体と単組の取り組みを整理した上で、今後の単組(組合員)の役割について考えていく。 |
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1. 川本町地域公共交通の現状と課題 (1) 川本町について川本町は、島根県のほぼ中央に位置しており、総面積は106.43km2である。人口は約3,300人、高齢化率は約45%と、人口減少・少子高齢化が進行する典型的な過疎地域である。
(2) 地域公共交通の現状 2. 自治体の動き (1) 利用促進の取り組み① デマンド交通の運行 自宅からバス停までの距離が遠い地域へ、デマンド型乗合タクシー(以下、デマンドタクシー)を運行している。デマンドタクシーは完全予約制で、予約があった場合にのみ運行する。(1日最大4便) ドアtoドア方式の運行であるため、予約者にとって希望する場所で乗り降りができるメリットがある。 主に、高齢者が通院や買い物に利用している。 ② タクシー利用助成 自宅からバス停までの距離が遠く、さらにデマンドタクシーの運行も難しい地域へ、タクシー料金の助成を行っている。タクシー運賃の半額を、町が助成する。 対象地区で、免許証を持っておらず日中移動手段を持たない高齢者が、主な利用者である。 ③ 高齢者バスカード購入助成 三江線代替交通として運行する路線バスの利用者を増やすため、路線バス運賃の決済ができる「バスカード」の購入費用を助成している。対象者は65歳以上の住民とし、免許返納後も安心してバスを利用できるよう取り組みを行っている。 また、バスカードの販売所が町外のバス会社営業所にしかなかったが、制度のスタートと共に町内の商店街に働きかけを行い、町内で購入できるようにした。 主な利用者は、バスを利用して近隣市町へ通院をする高齢者である。
(2) 島根大学生との共同研究事業
3. 単組の自治研活動 川本町では地域公共交通維持のため、上記のような取り組みを行っているが、労働組合においても下記のような活動を行ってきた。行政施策では手の届きにくい部分(イベントの実施)や、地域住民と協力した活動などを続けることで、公共交通の維持・発展に関わっている。
(1) JR三江線を利用した企画実施
(2) 駅舎を活用したイベントの実施
イルミネーションは12月~1月まで、約1ヶ月の間点灯する。点灯初日には「点灯式」を行い、毎年およそ200人が来場する。点灯式では地域の各団体により、下記のような催しを実施し、主に子ども達にとって駅舎が思い出となるよう尽力している。 (点灯式の催し)地元高校生によるクイズ大会・サンタさんからのプレゼント、地元保育園児による作品展示、地元グループによるキッズダンス、女性部によるあったか~いお汁粉・豚汁の配布など 三江線廃線後に初めての実施となった去年の点灯式では、線路の上を走る「レールバイク」のイベントを行った。 レールバイクイベントは川本町観光協会が三江線線路跡の活用として実施してきたが、点灯式と同時に開催することを青年部から提案し、実現に至った。レールバイクや線路跡地にも電飾を施し、幻想的な空間を走り抜けるレールバイクへ、親子連れや三江線の根強いファンの方など、多くの乗車があった。 (3) 駅舎の清掃活動
そこで、今年度青年部では、地域貢献活動として駅舎の清掃を計画した。今年度5月末日に第1回目の清掃活動を実施したところ、大量のごみを撤去することができ、清掃にやりがいを感じた部員もいたようである。 清掃活動では、床の掃き掃除、窓や天井の蜘蛛の巣とり、線路跡の草取りなどを実施した。 この活動を職員組合女性部に伝えたところ、次は自分たちも参加したいとの意向をいただいたため、青年部と女性部による第2回目の清掃活動を計画中(2019年6月現在)である。 バスの乗客が気持ちよく駅舎を利用できるよう、今後もこのような活動を続けていきたいと考えている。
4. まとめ(今後、職員組合はどのように関わっていくべきか?) これまで、川本町の地域公共交通の現状と自治体の取り組み、その中で職員組合としてどのように関わってきたかについて整理し、振り返ってみた。前述した通り、職員組合では行政施策の手が届きにくい部分での活動を行っており、公共交通の維持へ向けて一定程度の貢献ができているのではないかと思う。 しかし、今後ますます人口減少が進んでいく現状の中で、公共交通を維持していくために、職員組合としてはどのような関わり方が考えられるだろうか。これまでの活動を継続するだけでは、人口減少社会において地域公共交通を持続させることには繋がらないのではないだろうか。 私は、「組合員一人ひとりの意識改革」が重要ではないかと考える。 地域公共交通を持続させるために、地域住民のニーズに合わせた交通体系を構築していくことは自治体や交通事業者の役割だと思う。「公共交通を守るため、積極的に使おう。」という住民一人ひとりの意識がなければ、自治体や事業者がどれだけ尽力したところで、公共交通は衰退の一途を辿ってしまう。 そういった意識を芽生えさせるためには、まず第一歩として、自治体職員である私たち労働組合の組合員が、積極的に公共交通を使っていかなければならないのではないだろうか。 通勤にバスを使ってみる、出張にバスを使ってみる、休日にバスを使った近隣スポットへのお出かけを計画してみる……。など。 好きな時間に好きなところへ移動できるマイカーの利便性に対し、公共交通は不便に感じられるかもしれない。 しかし、マイカーにはない公共交通のメリットとして、私は次のことを感じている。 ① 乗車中は自分の時間 自治体職員の業務量は年々増えており、労働の長時間化が問題視されていることは言うまでもない。 そのような現状の中、なかなか自分の自由な時間がないと嘆く組合員も多いのではないだろうか。 そんな方にオススメなのが、公共交通による移動である。移動中は自分の自由な時間であるため、ゆっくり読書をしたり、パソコンを開いて作業をしたり……まとまった自分の時間を確保することができる。 ② お酒を飲める 休みだから飲みたいけど、運転があるから飲めない……。と嘆く方には、ぜひ公共交通の利用を勧めたい。 きっと優雅な休日を過ごせるであろう。 ③ 車よりお金が掛からない 一度の移動にかかる費用は車の方が安いかもしれない。しかし、車の維持費(車検代、保険代、自動車税、メンテナンス代など)を考慮すると、実は公共交通の方が安いかも。 私たち一人ひとりが公共交通にメリットを感じ、自ら利用する意識を持つことが、公共交通の維持へ向けた第一歩であると、私は考える。 |