【自主レポート】

第38回地方自治研究全国集会
第9分科会 「やっぱはまりで、ぬぐだまる」(津軽弁)

 自治労道南地方本部では、2020年度の取り組みとして子ども食堂への支援を行った。地域住民との接点を持つ私たち自治体職員は、日常業務以外でどのような形で地域貢献できるのか。子ども食堂への関りはほんの一例である。組合員が一体となるためのきっかけづくり、それは問題意識である。私たち組合員が積極的にコミュニケーションをとることで地域に活力が生まれるものと信じている。



「子ども食堂」を通じた自治労運動の展開
―― 地域貢献による組織強化を ――

北海道本部/道南地方本部

1. はじめに

 自治労道南地方本部現業公企都市交評議会は、これまで市電の施設維持や地域公共交通の必要性を住民に訴える機会として電停清掃運動を取り組んできたが、地域住民が抱える課題にむけ、これまでの運動に加え、二つの社会問題に着目し、新たな地域貢献活動を実施することとした。

2. 子ども食堂を取り巻く環境

 一つ目は、主に家庭環境の事情から「孤食」せざるを得ない子どもの割合が増加していること。農林水産省が公表した「平成29年度食育白書」によると、1日のすべての食事を1人で食べる「孤食」の頻度が、週の半分以上になる人が15.3%となり、6年前に比べて約5%増加したことが明らかとなった。
 このようななか、全国各地ではNPO法人やボランティアによる「子ども食堂」の取り組みが展開され、NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」調査によると、運営されている食堂の数は2019年で3,718カ所となっており、319カ所だった2016年時点と比べると12倍近い増加となっている。
 二つ目は、「食品ロス」の問題。2019年4月農林水産省発表の「食品廃棄物等の利用状況等」をみると、我が国における食品ロスは年間約643万トンで、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食糧援助量(2018年で年間約390万トン)の1.6倍に相当する数量となっている。
 日本はカロリーベースで約62%を他国からの輸入に頼っており、飲食業界、そして私たち消費者もこの現状を強く認識する必要がある。

3. 子ども食堂への支援をするにあたり

 両課題にむけ、評議会幹事を中心に子ども食堂に参加し、組合員である給食調理員による調理補助や配膳、保育士による紙芝居の披露を計画。さらに、食材については組合員の家庭に眠る賞味期限間近の食品、地域生産者等へ規格外食材の提供を募るなど準備を進めていた。ところが、新型コロナウイルス感染症の影響により子ども食堂を開催することが困難となり、本取り組みも中止せざるを得ない状況となった。
 その後、緊急事態宣言の解除、感染者の減少傾向からテイクアウト弁当の提供への変更連絡が主催者からあり、評議会として食材提供のみの取り組みに方向転換し、評議会幹事、地方本部専従者とともに、全単組・総支部に食材提供の取り組みを提起し、結果、加盟する約半数の延べ14単組の協力、さらには北海道ろうきん様からもジップロックなどの提供もあった。

4. 子ども食堂によっての気づき

 現業公企都市交評議会としては、この間の取り組みについては一定の成果があったとするものの、この運動をさらに拡大、浸透させるべきとの判断をし、2021年度においても継続する方針を評議会幹事会で決定した。食材の提供に限らず、子ども食堂での皿洗いなどの手伝い、また、コロナウイルス感染症が収束したあかつきには、子どもたちとのふれあいなどで関りを持ち、地域貢献をすることが可能であると考える。
 11月14日に開催された子ども食堂の学習会では、食材の提供を地域から十分に受けられている団体がある一方、フードバンクを通じて食材を確保している団体があること、また、その他にも食材の保管場所が足りないことや食材の流通にも課題があることがわかった。
 自治労道南地方本部では、子ども食堂への関りを食材提供のみに限らず、多くの組合員が参加できる取り組みにつなげたいと考えるところであり、「食品ロス」に関する紙芝居を管内の幼稚園等に寄贈する取り組みを企画した。紙芝居の原案は沖縄県のデザイン会社が作ったものであるが、無償での使用許可をいただき、200セットを作成。各単組の組合員から12月中旬にクリスマスプレゼントとして各施設へ贈呈した。

5. おわりに

 食材提供という取り組みを通じ、社会問題への意識啓発のほか、組合員同士で話すことが多くなったことにより、組織強化につながった単組もあった。また、子ども食堂への参加で、地域住民が抱える課題のほか、住民が抱く自治体職場と私たちが置かれている現状の違いも確認することができた。
 現在、多くの自治体で地域コミュニティの希薄化が叫ばれ、このことは地域力の低下にも大きく影響していることからも、改めて、私たち自治労が、住民と地域、行政をつなぐ接着剤となり、地域の発展、安心して住み続けるまちづくりに関わる運動を今一度考えるべきである。
 私たちができることは必ずある。ともにがんばりましょう。

提供された食材等で完成した子ども食堂弁当(2020.7.3開催分) (株)寅福様よりご提供いただいた規格外トマト(上ノ国町職)
新聞記事:12月10日(木)函館新聞掲載