【自主レポート】 |
第38回地方自治研究全国集会 第9分科会 「やっぱはまりで、ぬぐだまる」(津軽弁) |
日本の子どもの相対的貧困率は2012年の過去最悪の16.3%から2015年には13.9%と12年ぶりに改善したものの、依然として子どもの7人に1人が平均的な所得の半分を下回る額の世帯で暮らしています。京都府においては2014年度に「京都府子どもの貧困対策の推進計画」が策定されました。そこで、不安や悩みを持つ家庭の親と子が、気軽に交流し、安心して集うことができる居場所を提供することにより、情緒的に不安定な子の心の安定や学習意欲を高めることを目的とし、NPO法人あかしやふれあいネットワークが主体となり、京都府の補助を受けて2013年から地域や学校や各種団体の協力のもとで事業を行ってきました。 |
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1. 実施するにあたって ―― 福祉で人権のまちづくり運動の推進 これまでの「同和」対策事業で整備された地区施設の管理運営について、地元地域の西三条地区が主体となり、学区の自治連合会と連携して、2005年7月に、「特定非営利活動法人 あかしやふれあいネットワーク」を協働して立ち上げ、以降、高齢者の見守りや安否確認、ひとり親家庭のこどもの居場所づくり、中京いきいき市民活動センターを活用した交流事業などを行い、安心・安全で福祉で人権のまちづくりに取り組んできました。2. 実施するまでの流れ ① 京都府へ申請。② 大学学生ボランティアJVOの方へ事業説明会。 ③ 関係機関と打合せ(呼びかけ機関:市立朱雀第四小学校教頭、壬生児童館館長、中京福祉事務所支援保護課課長、中京社会福祉協議会事務局長、NPO法人理事長、NPO法人スタッフ)。 ④ 朱四小学校、壬生児童館、御前児童館から各家庭宛に文書を配布。また近隣の学校・児童館・学区各町内会の掲示板等にポスターを掲示したり、先生からの呼びかけをしたりなど。 問い合わせに応じたり、参加者を受けたら台帳の記入や面談を行ったり、この事業の説明を行う。 ・事務局で打合せ。 ・学生ボランティア、調理・作業スタッフ、事務局で打合せ。 ・事務局で最終打合せ。 3. 実施要項 日 時 毎週月・木曜日時 間 午後5時00分~午後7時45分 場 所 中京いきいき市民活動センター 会議室・料理室 定 員 子ども15人(先着順) 参加費 1人1日 300円 4. 実施内容 午後5時00分 学校・児童館にお迎え午後5時15分 オリエンテーション ※館内及び周辺清掃もあり 午後5時25分 勉強会 午後6時10分 銭湯入浴(希望者のみ) 午後6時40分 準備(当番制で行う) 食育タイム 午後7時10分 遊びや工作の時間、又は、イベント事業など 午後7時45分 終了(親の迎えにより帰宅又は、送りによる帰宅) ※ 館内及び周辺清掃は週に1度、料理実習は月に2回(第1・3水曜日)、イベント事業または工作は月1回程度実施。 5. 事業内容 ① 相談事業保護者からの相談は随時受付け、2か月に1度、こちらから、懇談形式で活動や家庭での日頃の様子などの意見交換を行う。 ② 学習支援事業 毎回、学校の宿題やこちらで用意するドリルで45分学習する。大学生ボランティアの方には学習の補佐をしてもらう。 ③ 交流事業 ・あかしやふれあい盆踊り大会に参加。 ・ふれあい餅つきのつどいに参加。 ・月に2回、調理実習を行う。 ・目的をもった社会見学や校外学習を5回程実施。 ・みんなで創り上げるレクリエーション(お楽しみ会など)を考え行う。 ④ 親の交流事業 事業の中で参観できる時に見学に来てもらい子どもや保護者同士で交流。交流事業にも参加してもらう。 ⑤ 生活支援事業 午後5時から集まり、出欠確認、施設周辺の清掃、入浴。食育の時間、反省会や終わりの会などを実施。 6. 意見交換や打合せで得たこと ・家庭の環境が見えるデリケートな部分もあるので、接するうえで、言葉や態度、内容を丁寧に考えて向き合っていけるように心得る必要があること。・できる限り一般家庭での生活に近い環境作りをめざし、不足しがちな会話を増やし、心の満足もできる環境づくりをめざすこと。 ・預かるうえで、子どもの体調や会話に気を配ること。 ・子どもは直ぐに慣れるが、父兄も気楽に立ち寄ったり、相談したりできる雰囲気をつくること。 7. 注意すべきうえで、どのようにしていくか ・マル秘個人情報に関わる内容を記入してもらい、個々の性格や事情、環境を把握したうえで接するよう心掛け、情報は厳重に管理する。(プライバシーポリシーの徹底)・保護者と密に連絡が取れるよう、連絡ノートやお知らせのプリントを利用する。 ・食育面でアレルギー症状や体質については、保護者面談で必ず確認する。 ・毎回、スケジュールを作成し、規則正しい環境をつくる。 ・子どもたちに名札を着用させ、出欠表などつくる。 ・「始めの会」や「終わりの会」を行い、1日の始まりと終わりをしっかり区別することで、次回へ繋げる意味のある1日にしてもらう。 ・日報を作成し、全従事者は1日の内容を把握し、改善できるところは改められるようにする。 ・従事者も名札を着用し、子どもたちがホッとするような居場所づくりをめざす。 ・毎月、クラブニュースを作成し、日頃の様子を保護者にわかりやすく報告する。 ・宿題がない時のために、ドリルをコピーして使う。また折り紙やぬり絵など、絵が描ける道具なども置いておく。 8. 活動の様子 9. 毎月発行するクラブニュース 10. 実施を終えて (1) 保護者の声・この機会をいただいて、家で規則正しい生活をできていなかったのが改善され、たいへん感謝している。毎月、ニュースで活動の様子をわかりやすく見せていただいて、とても安心している。 ・入ったころに比べると、皆に刺激されてか、はっきりと話すようになり強くなった気がする。 ・慣れない環境で心配したが、勉強だけでなく清掃や工作、絵画など、子どもはたいへん満足しているし、自信を持っているようで、毎回、自主的に行動するようになった。 ・子どもの様子が変化しているのがよくわかり、保護者の要望や考えも聞いてもらえるので安心。 (2) 実施による成果と課題 参加した小学生は、最初慣れない環境でルールを守り、縛りのあるタイムスケジュールで動くことすら、戸惑いがありできませんでした。文句を言ったり、少しのケンカをしてみたり、返事もできなかったり、それぞれの意思や考えもわかりにくかったのですが、少しずつみんなで行動し、お互いを刺激し合うことで、自然にルールを守り、やるべきことができ自分の思いを表現できる子たちに成長したと思います。今では、1つの家族のように、助けてあげられたり、注意してあげられたり、一緒に楽しんだり、チャレンジしたり、1つの居場所となり共存しています。まだまだ課題はありますが、もう少し協力し合えることや保護者との交流も考えています。 |