【自主レポート】 |
第38回地方自治研究全国集会 第9分科会 「やっぱはまりで、ぬぐだまる」(津軽弁) |
人口減少と少子高齢化が進行しており、平均寿命は延びていますが、健康寿命は長くない状況です。今日、平均寿命と健康寿命の差が大きいことが問題となっています。本レポートでは、誰もが安心して暮らせる地域づくりをめざして、健康寿命を延ばすための提言として、社会福祉協議会が取り組む地域共生社会づくりに関し、「にこにこサロンあさひ(常設型サロン)」の立ち上げに関する地域づくりの取り組みを報告します。 |
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1. はじめに 三原市は2005年に1市3町が合併しました。
健康寿命とは、介護を受けることなく一人で生活できる期間であり、長寿でも不健康期間が長いという結果が、「厚生労働省都道府県生命表」でも明らかになっています。 広島県 平均寿命(2016年)女性 87.33歳 男性 81.08歳 健康寿命(2017年)女性 73.62歳 男性 71.97歳 平均寿命と健康寿命の差が大きいことが問題になっています。そのような状況の中、今回は健康問題について、社会福祉協議会のサロン立ち上げに関する地域づくりの取り組みを報告します。 2. 施策動向を踏まえた社会福祉協議会の取り組み 少子高齢化の進行により、ひとり暮らし世帯や高齢者世帯が増加する中、家族のあり方や暮らしの変化により、人と人の関係性が希薄化していることが社会問題となっています。さらに近年では、生活困窮や社会的な孤立などさまざまな問題が絡み合い、複数の生活課題を抱えて暮らす人への支援が大きな課題となっています。これらの課題に対し、介護保険制度の改正や生活困窮者自立支援事業など、新たな制度の施行に続き、社会福祉法の一部が改正されました。施策の方針には、地域住民や地域の多様な主体が「我が事」として参画し、「丸ごと」つながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい・地域をともにつくっていく「地域共生社会」の実現が盛り込まれています。地域共生社会の実現にむけて、制度やサービスの充実だけでなく、改めて、地域住民が主体的に、身近な圏域(町内会・自治会内)の地域課題を把握し、その解決をはかる住民活動の育成やその環境整備とともに、住民活動だけでは解決ができないことを、包括的に受け止める体制づくりや福祉専門職との連携も求められています。 社会福祉協議会では、町内会・自治会等が実施する「ふれあい・いきいきサロン」、「常設型サロン」、「地域見守り活動」、「生活支援活動」などの小地域福祉活動を通じ、同じ地域の住民同士がお互いを認め合い、つながりづくりを支援するとともに、住民と専門職との連携を推進することで、誰もが孤立することなく支え合う地域共生社会づくりに取り組んでいます。 今回は、2019年7月に旭町と古浜地域が合同で取り組みをスタートさせた、「にこにこサロンあさひ(常設型サロン)」を通じた地域づくりの取り組みをご紹介いたします。 3. 地域概要
三原市は広島県の南部に位置し、山陽新幹線・山陽本線・呉線・三原港・広島空港・山陽自動車道など主要交通が整っており、広島県における交通の要衝です。2005年3月に旧三原市、豊田郡本郷町、御調郡久井町、賀茂郡大和町が対等合併し、現在の三原市が誕生しました。 旭町は、漁師町で、現在も漁民の親戚関係が多い地域です。高齢化率が高く、その上サロンがある町内は、3町内会のうち1か所で、活動が年に数回と少なく、集いの場を求める声も聞かれる地域でした。 古浜町は、海を塩田に開拓した埋め立て地域です。比較的高齢化率が低く、区画整理も進み、若い世代が新たに転居し、人口も増加傾向にあります。集会所で実施されるサロン活動がありますが、車通りの多い国道を挟んでいるため、行き来の難しさから一部の地域の人の参加にとどまっています。 4. 活動のきっかけと設置までの経緯
5. 活動概要(2019年度) (1) 活動状況
(2) 運営委員会
(3) 緊急時・急用時連絡先カード ・疾患を抱えた高齢の参加者が多いことから、活動中の事故に備え、参加者の任意で「緊急時・急用時連絡先カード」の記載をお願いしています。 ・記載したカードは運営委員長が保管します。活動日毎に持参し、必要時に活用します。 6. 取り組みの成果 (1) 参加者の介護予防・健康意識の向上・「以前は閉じこもりがちでしたが、サロンができて毎週出かける場所ができました。」 ・「運動することで足腰の痛みが軽減した。」「以前よりも疲れにくくなった。」などの体操の効果に関する声が聞かれています。 ・「毎週のサロンの後に家周辺を散歩するようになった。」など、健康に対する意識がより強く持てたという声も聞かれています。 (2) 地域住民のつながりづくり ・高齢になり、人と会う機会が減っていたが、サロンに来ればご近所の人と会えるので、話す機会が増えました。 ・住民ボランティアからも、「あいさつや声掛けの機会が増えた。着実に地域間で気にかけ合う意識が高まっている。」といった声が聞かれました。 ・毎週会うことで、お互いが気にかけ合えるようになりました。そのことで、体調変化等の情報が参加者を通じて、サロンに集まるようになり、集まることが見守り的な機能にもなっています。 (3) 関係者間の連携意識の向上 ・包括支援センターによる認知症予防や、病院のリハビリの先生による健康体操を教えてもらうことができました。 ・出前講座を通じて、専門職に相談しやすい関係づくりが進みました。 ・緊急連絡先の把握について、町内会と民生委員が連携して把握していく方向性について意見交換ができました。 7. 課題と今度の取り組みついて
8. 取り組みを通じての気づき (1) 「サロン活動」を通じて得られる効果今回の取り組みの一番の成果は、住民同士の気にかけ合う意識が育まれ、つながりがより強いものになったことだと考えます。「にこにこサロンあさひ」では、体操が始まる前や、体操の休憩中には、参加者同士の会話がにぎやかにされています。会話を通じて、相手の体調や、身近な地域のできごとを知ることで、必然的に相手や地域のことを気にかける機会になっています。これは活動の頻度が高いほど、その意識が高まります。こうした住民同士の気にかけ合いがあることが、福祉サービスや制度だけでは得られない、地域で暮らす上での安心感になるのだと感じています。 (2) 運営委員会の必要性 福祉活動にボランティアとしてかかわることで、地域住民のさまざまな福祉課題への気づきも生まれています。運営委員会は、そんな住民ボランティアの気付きをそのままにせず、地域の福祉課題として協議する性質を持ち合わせた会議であり、これは、福祉活動を継続・発展させていく上で最も大切な機能だと考えます。 会議には、住民ボランティアだけでなく、地域の各町内会長や、民生委員も交えて、住民ボランティアの気づきを関係者全体で共有し、困ったことや気になることを考える体制をつくります。課題の解決を住民ボランティアだけに丸投げにしない関係づくりと、各関係者の立場でできることを考えるきっかけづくりにもなっています。 また、運営委員会に福祉の専門機関が参加することは、住民活動だけでは解決できない福祉課題を包括的に受け止め、専門的な支援や関係者へつなぐなどの、専門職との連携体制づくりにもなると考えます。近年では、介護サービスだけでなく、地域住民とのつながりを切らない重層的なサービス調整が求められる中、地域のサロン活動や見守り活動への関心も高まる中、三原市では市および地域包括支援センター等とも相談しながら、サービスと福祉活動の連携のあり方についても一緒に考えているところです。 現段階では、にこにこサロンあさひの運営委員会には、地域包括支援センターの会議出席はありませんが、今後は積極的に声かけをしていく予定です。
(3) 小地域福祉活動を通じた地域づくり 9. おわりに ① 市内全体においての活動はまだまだ広がっていませんが、できるところからやろうという取り組みが進められています。「にこにこサロンあさひ」も準備段階から、中心となる人が社会福祉協議会との連携のもとで進められ、本格実施に結びつきました。「血圧測定」「百歳体操」「健康ダンス」は途中、水分補給の時間や健康情報を伝える時間をとりながら、毎週1回、約1時間実施しています。参加者のみなさんは、知り合いもでき、大変元気です。 ② 介護予防事業が、健康づくりを具体的に取り組まれることによって、結果として「健康寿命」をのばすことにつながっています。 「運営委員会」が設置され、計画的にサロンの活動が進められていることが重要で、今後の活動の強化につながっています。 ③ 「にこにこサロンあさひ」(常設型サロン)の取り組みを、行政、社会福祉協議会、包括支援センター、町内会へ広げていくべきだと考えています。 ④ 「協働のまちづくり」をただのスローガンでなく、一人ひとりの健康と、災害にも強いまちづくりに今後もつなげていきます。 現在は新型コロナウイルス感染症の拡大の影響もあって、取り組みが中止されていますが、一日も早い再開ができるよう頑張っていきます。 |