【自主レポート】 |
第38回地方自治研究全国集会 第12分科会 昨日までの働き方…ちょっと立ち止まって考え直してみませんか? |
城南衛生管理組合は、独善的な行政運営を続けた結果、2013年に廃棄物処理法等の法令違反が相次ぎ判明。報道機関の厳しい批評に晒されて組織存亡の「ピンチ」に陥りました。そうしたなかで、労働組合として取り組んだ「再建計画」などが外部から「正しい」との評価を得ることができ、職員を守る、職員の役に立つ活動を継続した力が「チャンス」に結び付きました。この時から「継続」が労働活動の主幹となっています。 |
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1. はじめに 城南衛生管理組合労働組合は、地方自治法第284条の2に定められている一部事務組合(特別地方公共団体)城南衛生管理組合に従事する者で組織化している労働組合です。城南衛生管理組合は、京都府南部にある宇治市・城陽市・八幡市・久御山町・宇治田原町および井手町で構成され、し尿の収集・処理・処分、ごみの処理・処分・再資源化及びその事務を行っています。 2. 活動の原点 城南衛生管理組合労働組合(以下、「城南衛管労組」という)は、1964年に「城南衛生管理組合職員組合」として発足しました。その後、現在の単組名に改称しました。現在の組合員数は、73人ですが、20年前は最大150人を超え、一部事務組合としては「西の城南衛管、東の二枚橋(二枚橋衛生組合のこと)」と言われるほど、西日本最大の規模を誇っていました。しかし、当時は、自治労内でも一部事務組合に対する認知度は低く、自分たちの存在を広めるため、先輩たちは、全国の一部事務組合の仲間を訪ね、自治労一部事務組合労組全国組織の設立に尽力し、代々、代表職を担うなど先導役として、積極的に活動を展開していました。 なぜ、先輩たちは一部事務組合の存在を広めたかったのでしょうか。その答えは、「組織消滅の危険性」があるからです。簡単に言えば「解散失職」と隣り合わせだからです。前述の二枚橋衛生組合は、2010年3月に諸事情により解散しました。また、多くの一部事務組合が解散し、仲間が失職の憂き目にあっています。 このような背景から、城南衛管労組は、「解散失職」に対する強い危機感を持ち、全国初の「身分保障協定」を締結しました。そして、この強い危機感をバネに雇用責任と身分保障を当局に毎年、確認し続けています。 3. 暗黒の時 私たち城南衛管労組は、小さい単組ながら団結力は最高峰レベルであると自負しています。しかし、約20年前に着任した特別職(専任副管理者)が、新自由主義の手法で拙速な採用凍結と業務委託化、3級から4級への昇格制度(新主査制度)の一方的導入と運用、特殊勤務手当の廃止、職員互助会の廃止、退職者セレモニーの廃止、夏専免の全廃、住民啓発イベント「環境まつり」への労組参加の排除、一般職への恫喝・パワハラ防止などを、行革の名のもとに断行しました。これまでの労使合意事項や労使慣行を無視し、管理運営事項を拡大解釈した恣意的な行政運営に対して、労組は、腕章着用闘争、京都府労働委員会への斡旋、裁判所への提訴などでたたかいましたが、労組運動のボリュームが浮き沈みすることが避けられない暗黒の時が長く続きました。このように、現場の実情を顧みず、組合員の声に蓋をした独善的な行政運営を続けた結果、2013年に廃棄物処理法等、3件の法令違反を重ねていたことが明らかになりました。当局はNHKなどの報道各社から厳しい批評に晒され、組織存亡の危機を引き起こしたのです(詳しくは、第36回宮城自治研集会第2分科会「~生きる~『いのち』を守る」の自主レポート「排水処理施設を自主改修 ―― 組織の存亡をかけて」を参照)。 4. ピンチからチャンスへ この直近20年間は、先輩たちの築いてきた土台を守るのに精一杯の時期でした。そして、2013年に当局がマスコミに批評されている一方で、労組が当局に訴え続けてきたことが「正しい」との声を多く頂きました。職員を守る、職員の役に立つ活動を継続してきた力が「ピンチをチャンス」に結び付けたのです。この時から、「継続」こそが活動の源泉であるとの思いに至り、現在の労組活動の主幹となっています。5. 具体的な取り組み 如何に「継続」を実行するか、を考えたとき、「要求」-「交渉」-「妥結」の基本プロセスに立ち返りました。自治労からは、毎季、闘争指令が下りてきます。それを順守したらどうなるのか取り組みを始めてみると、面白いことにほぼ毎月、要求書の提出や交渉を実施することに繋がりました。また、当局側も絶えず出てくる要求事項や内容から目を背けることができなくなり、プレッシャーを与えることができました。 要求書や交渉での内容追及は繰り返しになります。ある時、総務課長から「毎回、同じ内容」との発言がありましたが、これに対し書記長が「毎回、同じ回答。解決したら要望どおり別の要求を出す」と即答しました。こうした粘り強い取り組みを積み重ねた甲斐があり、少しずつではありますが、労組の要求が当局に浸透し、新規採用の再開や地域手当の改善、夏休の日数増、高機能安全靴の支給、福利厚生事業の復活などを獲得していきました。 また、組合員への「見える化」として、大会議案書の編成も変えました。春・夏・秋・冬ごとに取り組みを記載するように変更し、4月は春闘要求、6月は男女共同参画、ワーク・ライフ・バランスと人員要求、7月は職場要求、10月は現業・公企統一闘争といったように、毎年、同じ取り組みを継続することで、労組が今の時期は何をしているのかをわかり易くしました(下表参照)。合わせて、機関紙を交渉ごとに発行し、できるだけ組合員を登場させるよう工夫を重ねました。このように、ほぼ毎月要求書を提出し交渉することで、「機関紙のネタもできる。そして、組合員から執行部の動きもよく見える」にも繋がりました。 6. これからも「継続は力なり」 「要求書の作り方がわからない」「要求書を出したことが無い」という声もあります。「偉い人と交渉するのは苦手」と感じるのは私たちも同じです。しかし、このご時世に労働運動に従事する理由は、皆さん、「人の役に立ちたい」との想いを持っているからではないでしょうか。私たちもその想いを大切に秘めながら、紆余曲折、試行錯誤を繰り返してきました。そして、たどり着いた言葉が「這ってでも前へ進め」「行動あるのみ」、そして『継続は力なり』でした。長い期間、採用が凍結され、組合員数は激減の一途と絶望感漂うなか、人員要求を繰り返しても「管理運営事項」と突っぱねられた辛く苦い経験もしました。しかし、この辛く苦い経験も力に変え、少ないチャンスを活かし、2年間で20人(5人に1人が新規採用者が占める状態)の新規採用を勝ち取った時の喜びは、一生の宝物です。例えば、100個の要求事項のうち、1個だけでも満額回答が得られれば嬉しいはずです。そして、自分自身の自信にも繋がるでしょう。仲間と一緒に笑顔になれる取り組み、それが労働組合運動の醍醐味ではないでしょうか。 厳しい環境に置かれた現業職の情勢を鑑みれば、残念ながら今後も組合員数は減り続けるかもしれません。しかし、城南衛管労組は、次の醍醐味を求めて、次世代の執行部メンバーとともに、これからも要求書作りに励んで参ります。それが私たちの雇用を守る唯一の術であると信じて。 「さあ、城南衛管労組のみんな、また、当局を青ざめさせる要求書を考えよう!!」 2019年度活動実績表
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