【要請レポート】

次世代育成支援・地域行動計画(先行策定市)の取り組み

大分県本部/津久見市職労 中津留和子・川野 明寿

【市町村名】  津 久 見 市

(平成16年4月1日現在)
人      口
保 育 所
幼 稚 園
総 人 口
児童数
(うち就学前児童数)
か所数
定員数
か所数
定員数
23,121人
3,371人
(924人)
3か所
241人
7か所
700人

<市町村の概況及び特色>
 津久見市は、大分県の東南部に位置し、みかんとセメント、温暖な気候と山・海の幸に恵まれた自然にあふれたまちです。
 この恵まれた自然の恩恵を頂きながら、「生涯を託せる津久見づくり」を基本理念に住みよいまちづくりをめざしています。
 21世紀を迎え、待望の東九州自動車道や津久見湾の埋立整備も完成し、これらを契機に、「ひと、モノ、心の交流とふれあいのまちづくり」をキーワードに、健康で、明るい市民生活を送ることができるまちづくりを推進しています。

<子育て支援施策の現状>
 津久見市では、少子化対策を市政の最重要課題の一つとして位置付け、平成11年3月、母子保健サービスの充実や児童健全育成の推進などを主な内容とした「母子保健計画・児童育成計画(エンゼルプラン)」を策定し、子どもたちが健やかに育ち、喜びや楽しみをもって、子どもを生み育てる環境づくりを推進してきました。
 さらに、多様化する子育てニーズに対処すべく平成14年4月福祉事務所内に「子育て支援係(保育士3人、事務職2人)」を新設。子育てに関する相談や育児サークルの育成支援業務など児童部門の統括的部署として、市民サイドに立った子育て支援事業を展開中です。

<子育て支援施策の課題、展望>
 子育て支援施策の課題として、子育てに対する意識の多様化、核家族化の進行に伴う家族形態の変化や、近隣との人間関係の希薄化による、家庭や地域における子育て支援機能の低下によるさまざまな問題等、子どもを取巻く環境は大きく変化し続けている中で、各種事業の内容の見直しを含め、市民ニーズに沿った適応性のある事業の選択が必要です。
 これらの課題やニーズを的確に判断すべき次世代育成支援・地域行動計画の策定を契機として、本計画に沿った関係機関の連携と事業の展開を図りつつ津久見市がこれまで進めてきた子育て支援を一層充実し、子育てに夢や喜びや楽しみが感じられるまちづくりを目指していきたいと思います。

1. つくみ子ども育成支援行動計画 <概要>

(1) 行動計画策定の趣旨
   子どもは「未来の夢」、「次代の希望」です。ところが近年、我が国の合計特殊出生率は一貫して低下し続け、平成14年には「1.32」と史上最低記録を更新しており、「少子化問題」は早急に取り組まなければならない最も重要な課題です。
   本市では、少子化対策を市政の最重要課題の一つとして位置づけ、平成11年3月、母子保健サービスの充実や保育・児童健全育成の推進などを主な内容とした「母子保健計画・児童育成計画(エンゼルプラン)」の策定や、平成14年4月に福祉事務所内に「子育て支援係」を新設するなど、子どもたちが健やかに生まれ育つための環境づくりを推進してきました。
   しかしながら、核家族化の進行、就労環境の変化、近隣関係の希薄化などを背景に、家庭や地域における子育て力の低下は著しく、親の育児負担感の増大などが生じ、子どもたちを取り巻く環境が大きく変化するとともに、依然として少子化に歯止めがかからない状況が続いています。
   こうした中、国においては、少子化の流れを変えるため、平成15年7月に「次世代育成支援対策推進法」が制定され、平成17年度から10年間、地方公共団体及び企業が集中的・計画的な取り組みを促進する「行動計画」の策定が義務付けられました。
   本市では、全国の先行策定モデル(全国53市町村)として指定を受け、これまで進めてきた子育て支援施策や国の「行動計画策定指針」等を踏まえた、次世代育成支援地域行動計画の策定に取り組み、掲げられた理念を具現化するため、計画的に推進していく「つくみ子ども育成支援行動計画」として策定するものです。

(2) 行動計画の性格・位置づけ
   本行動計画は、「次世代育成支援対策推進法」(平成15年法律第120号)第8条第1項に基づく市町村行動計画として位置し、すべての子どもと家庭を対象として、津久見市が今後進めていく子育て支援施策の方向性や目標を総合的に定めたものです。
   また、この行動計画は、「生涯を託せる津久見づくり」を基本理念とする「第3次津久見市総合計画」(平成8年3月策定)を上位計画とし、各種関連計画との整合性をもったものとして定めています。
   また、本行動計画の実施に当たっては、行政のみならず、家庭や地域、保育所、幼稚園、学校、企業等が、次世代育成支援(次代を担う子どもやこれを育成する家庭を社会全体で支援すること)の視点に立ち、一体的な施策の推進を図るものです。

(3) 行動計画策定において重視すべき視点
   本行動計画策定にあたっては、以下に示す4つの視点に重視しました。
  ① 子どもの視点
    子育て支援サービス等により影響を受けるのは多くは子ども自身であることから、次代の社会を担う子どもの幸せを第一に考え、子どもたちの意見を取り入れること。
  ② すべての子どもと家庭への支援の視点
    子育てと仕事の両立支援のみならず、子育ての孤立化等の問題を踏まえ、すべての子どもと家庭への支援という視点から策定すること。
  ③ 地域における社会資源の効果的な活用の視点
    子育てに関する活動を行うNPO、子育てサークル、母親クラブ、子ども会、主任児童委員、区、児童館、公民館をはじめとする様々な地域の社会資源を十分かつ効果的に活用することと、本市の自然環境を効果的に活用する取り組み。
  ④ 地域特性の視点
    本市の地域の特性を生かした子育て環境づくりや、離島・半島部までいきわたる子育て支援施策の取り組み。

(4) 行動計画の期間
   「次世代育成支援対策推進法」に基づく市町村行動計画では、平成17年度からの5年間を第1期とし(前期計画)、前期計画の見直しを平成21年度に行った上で、平成22年度からの5年間の後期計画を定めることとしています。
   しかし、本市においては、先行策定市町村(53市町村)のひとつとして1年先行して計画策定に取り組んできたことと、子育て支援に関する新たな取り組みを少しでも早く展開するために、平成16年度を初年度とする前期6年間の計画を策定しました。
   さらに前期6年間の計画期間中であっても、様々な状況の変化により見直しの必要性が生じた場合は、適宜、計画の見直しを行っていくこととします。




(5) つくみ子ども育成支援行動計画施策体系

(6) 行動計画策定の経過
  ① 行動計画策定体制の構築
   ア つくみ子ども育成支援行動計画策定委員会  平成15年8月25日設置
    a 策定委員:各分野より推薦及び本人の承諾  委員20人で構成
    b 設置目的:策定委員会は、市町村行動計画に住民の意思を反映する観点から、指針に基づく関係者から構成し、ニーズ調査や専門委員会からの審議等の結果を踏まえ、それぞれの分野から専門的な知識あるいは考え方等を提案していただき、本行動計画策定に反映させることを目的としています。
    c 開催回数:5回
   イ つくみ子ども育成支援行動計画専門委員会  平成15年8月25日設置
    a 専門委員(ワーキンググループ)
      各分野より推薦及び本人の承諾並びに一般公募(3人) 委員25人で構成
    b 専門委員会委員の市民公募  3人公募(応募者3人)
      公募期間:平成15年7月15日~7月31日
    c 設置目的:専門委員会は、策定委員会の目的と同様のメンバーで構成し、特に住民代表の一部には公募(7月に実施済)により選定しました。
      専門委員会はワーキンググループとして市町村行動計画の素案や具体的内容を調査検討することを目的としています。
    d 開催回数:7回
   ウ つくみ子ども育成支援行動計画庁内推進会議 平成15年12月25日設置
    a 推進委員:関係部署より推薦及び本人の承諾  委員12人で構成
    b 設置目的:「つくみ子ども育成支援行動計画」及び次世代育成支援対策推進法策定指針に基づき、行動計画実施の把握、推進等、効果的な取り組みについて情報交換し、互いに連携を取りながら事業の充実を図ることを目的としています。
    c 開催回数:3回
  ② ニーズ調査の実施
   ア 目 的:ニーズ調査は、次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)第7条第1項に規定する、行動計画策定指針に基づき、サービス利用者の意向及び生活実態を把握し、サービスの量的及び質的なニーズを把握した上で本行動計画を策定するため実施しました。
   イ 調査実施期間:平成15年11月5日~平成15年11月20日
   ウ 調査対象
    a 就学前児童:就学前児童(0歳~5歳)のいる保護者の方
      614人に配布、うち424人から回答  回収率 :69.0%
    b 小学生児童:小学生児童(小学1~6年生)のいる保護者の方
      462人に配布、うち355人から回答  回収率 :76.8%
  ③ 情報提供に伴う意見の募集
   ア 目 的:市民の意見を計画に反映させるため、市報等により情報提供を行い、葉書やインターネット等活用して広く意見を聴取しました。
   イ 実施時期:市報 平成16年1月号・ホームページ
  ④ 「地域づくり子ども討論会」の実施
   ア 目 的:指針の基本的視点「①子どもの視点」に基づき、子ども自身の意見を聞くことが重要視されていることから、各小学校で「地域づくり子ども討論会」を実施し本行動計画の中に反映していく。
   イ 実施期間:平成15年9月~10月15日 総合学習や社会の授業の中
   ウ 実施学年:各小学校5年生1クラス(4年生、6年生でも可・長目小は6年生)
  ⑤ 「私たちの地域づくり」市長との懇談会の開催
   ア 実施日時…平成15年10月27日(月)  14:00~15:30
   イ 場  所…津久見市役所 第1委員会室
   ウ 対 象 者…④で実施したクラスの代表 28人(10校)
   エ 実施内容・方法
    a 「地域づくり子ども討論会」で実施した授業の要約
    b 全員での意見交換、市長への要望等
    c 発表の仕方、様式等自由。1クラス5分
  ⑥ 関係機関におけるアンケート調査及びヒアリングの実施について
   ア 目 的:平成11年3月に策定した「児童育成計画(エンゼルプラン)」の実施状況等次世代育成支援対策に関連する各種の資料を収集・分析し、その結果を活用・反映していく。
   イ 実施時期:平成15年8月~11月
   ウ 対象部署等:福祉事務所・健康推進課・都市建設課・教育委員会・企画財政課・総務課・秘書課・環境保全課・四浦幼稚園の保護者
  ⑦ ホームページの開設及び市報における情報提供
   ア 目 的:津久見市ホームページ内及び市報に専用ページを設け、計画策定に係る情報を随時提供し、計画策定についての周知を図る。
   イ 掲載時期:平成15年8月~
子育て支援係 ホームページアドレス
       http://www.city.tsukumi.oita.jp/kosodate/top/h15main.htm
  ⑧ 市職員の取り組み
    策定委員会等の各種会議の企画、ニーズ調査票の設計・実施・分析、行動計画書の編集等については、コンサルタント会社等の外部機関に委ねるのではなく、職員の意識の向上及び計画策定後の施策の円滑な実施並びに委託料などの経費削減など効果的なことから、職員自らが携わりました。

2. あなたのまちでの次世代育成支援・地域行動計画策定のポイント

 各市町村で策定される地域行動計画は、今後の地域における次世代育成支援施策の方向性と具体的な数値目標を明確にする"重要な計画"です。
 地域の実態に即した実効ある計画が策定されるよう、行政担当部局・住民等が積極的に参画するとともに、計画策定を機に子育て支援の充実、子育てしやすい地域づくりに向けて、次世代育成支援の取り組みを進めていくことが必要です。下記のとおりポイントを挙げてみました。

(1) あなたの自治体での地域行動計画の策定状況を把握しましょう!
   現在市町村行動計画については、先行53自治体に続いて、平成16年度内の計画策定が進められています。
   しかし、積極的に行動計画を取り組んでいる市町村もあれば、策定委員会等組織化していない市町村もあるなど、地域によって行動計画策定に対する姿勢はまちまちです。あなたの市町村での策定担当者に策定状況を聞くなど策定状況を把握しましょう。

(2) 透明性のある策定過程が大事! 多くの地域住民が関わり「協働作業」の計画書を!
   いかに多くの住民が子育てや次世代育成支援が大事であることを共通認識として持つ事が必要です。
   さまざまな地域の集会や活動などあらゆる機会を活用して、行政や地域住民、関係者に意見を伝えていくことが重要です。
   住民にわかりやすい情報提供と多くの地域住民が関わる「協働作業」の計画策定を。

(3) 地域ニーズを改めて見つめ直し、「総合的な」更なる取り組みを!
   今、地域でどのようなことが求められているのか、将来どのようなことが求められているのか。
そのことに対して家庭や地域、保育所、幼稚園、学校、企業等地域社会がどのような役割を果たすことができるのか。
   「次世代育成支援」という新たな枠組みで、行政各部局や関係機関、そして、住民との協働による「総合的な」更なる取り組みが求められています。

(4) 行動計画策定後の実行・推進・点検が最も大事!
   計画策定に費やした議論を大切に、行政各部局・関係機関・住民等が連携し、実行・推進・点検を忘れずに。

「つくみ子ども育成支援行動計画」
発行年月 平成16年3月 / 発行 津久見市 
企画・編集 津久見市福祉事務所 子育て支援係
    〒879-2435 大分県津久見市宮本町20番15号
    TEL 0972-82-4111(内174)/FAX 0972-82-9466
子育て支援係 ホームページアドレス
http://www.city.tsukumi.oita.jp/kosodate/top/h15main.htm
(行動計画書・ダイジェスト版をダウンロードできます)