【自主レポート】
山陽中央総合病院の過去の再建計画の検証
山口県本部/山陽町職員労働組合・山陽町病院職員労働評議会 伊藤 敦
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1. はじめに
山陽中央総合病院は過去3回にわたり、再建計画を策定、実施したにもかかわらず、収支は改善されるどころか逆に悪化の一途をたどり、不良債務11億6千万円(H13年度決算)、不良債務比率56%と全国でも指折りの不良債務を抱える公立病院となってしまった。
この現状から脱却するためには、これまでの計画がなぜ成果をあげるどころか、1~2年目で何度も破綻するということを繰り返したのか。その原因を見つけ出し、責任の所在を明確にするところから始めないと中央病院の再建は絶対に不可能である。
国は現在、全国で160万ある病床を半分の80万床以下に削減しようと目論んでいる。私たちは山陽町の地域医療を守るためにも、中央病院の生き残りをかけた病院改革を果たさなければならない。
2. 第1回再建計画
(1) 計画の策定 H3年度
再建の期間 H4年~H8年の5年間
計画の概要 収入増―5年間で収入を26%増
特別繰り入れの実施 212,000千円
医業収支比率 H7年度で100.2%
(2) H3年度までの収支状況
(3) 結 果
計画期間の1年目で収入(対H3年度)11%増を図る計画であったが、H4年度決算は4.5%増(対H3年度)に止まり、計画の93%の収入しかなく、医業収支比率も92.1%から91%へ低下し、計画実行1年目で破綻の様相を示し、2年目のH5年度決算は計画に対して、88%の収入しか確保できず、医業収支比率も86.4%という散々足る結果に終わった。
当然、不良債務は減るどころか、H3年度末の244,758千円から逆にH5年度決算では510,648千円と倍増してしまい、第1回目の再建計画は2年目で破綻してしまった。
(4) 総 括
これまでの一般会計からの普通交付税分の繰り入れ不足は、実に432,609千円となっており、交付税措置分だけでも病院会計への繰り入れを行っていれば、H3年度時点で不良債務は生じていない。また、この第1回目の計画書の「総括」の中で「しかし、近年の医療を取り巻く社会環境、社会構造は大きく変化するとともに厳しさを増しつつあり、他の多くの自治体病院同様に経営のバランスを失するところとなり」と書かれているが、これは病院財政の悪化・設置者としての責任等を外的要因へ責任転嫁していると断言できる。
さらに「経営方針」の中の「一般会計からの繰り入れについては、繰り入れ基準及び地方交付税算定基準相当額を目途とし,適正化を図る。」とあるが、裏を解せば、交付税分以上の繰り入れを行う方針は全く無いという設置者としての町長の政策の現れであり、このような考えの下でこの第1回目の計画は策定、実行されたといえる。
H3年以前の医業収益状況(経常損益は年々悪化していた)、H1年から導入された消費税による費用増(医業費用の約1.0%)、医師一人当たり診療収入が近隣の公立病院に比べて極端に少ないというような大変厳しい当病院の実情を踏まえた上で、医師を含めた中で計画の策定を行ったという実態も無く、また現場への具体的な方針・方策の提示や協議、「医師、看護師、間接部門」での全体的な再建計画に対する取り組みがなされた形跡は全くなかった。
そして、この2年目で破綻した計画の責任を幹部職員が取ったという事実も無く、後年そのつけが第2回再建計画の中で医療現場の第1線で働く職員に人員削減という形で回ってきた。
3. 第2回再建計画
(1) 計画の策定 H5度
再建の期間 H6年度~H10年度の5年間
計画の概要 ① 収入を5年間で36%増加
医師を中心とする経営健全化委員会の設置
病棟統合(4病棟体制を3病棟体制へ)
診療収入の具体的増加対策の実施
② 療養型病床群への転換
③ 業務委託
④ 特別繰り入れの実施(4億2千万円)
(2) 結 果
医業収益は全く増えず、不良債務は計画スタート年度(5億1千万円)の約2.1倍(10億6千4百万円)と膨れ上がってしまった。第2回目の再建計画も完全な失敗となった。
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実 績
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計 画
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医業収益 |
2,063,261千円
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2,565,532千円
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医業費用 |
2,209,527千円
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2,534,101千円
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人件費 |
1,280,571千円
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1,392,852千円
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不良債務額 |
1,064,645千円
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245,208千円
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不良債務比率 |
51.6%
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9.6%
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医業収支比率 |
93.4%
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101.2%
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(3) 総 括
厳しい医療行政の中、収益を5年間で36%も増やすという非常に高い目標を掲げてスタートした第2回の再建計画であったが、医業収益改善の大きな要素である医師を中心とする経営健全化委員会の設置等が実行されたという形跡も無く、医師1人当たりの診療収入が他の公立病院に大きく水をあけられた状態は改善されなかった。
また、この計画のもうひとつの大きな柱であった病棟統合計画は、事前の病棟勤務職員を含めた入念な計画策定となっておらず、いざ実行という段階でハード・ソフト両面で現場から多くの指摘事項が噴出し、結局「3病棟体制」へ移行できず、夜勤看護加算(6千5百万円)、特Ⅲ類看護(1億円)、18時給食の実施(2千3十万円)、等が全く出来なかった。
次に一般会計からの繰り入れに関しては、病院経営が赤字基調となったS50年代まで遡り、交付税措置分を下回った年度の繰り入れ差額分(4億2千万円)を特別繰り入れとして繰り入れるということで、この第2回目の再建計画は作成されているが、正確な言い方をすれば、病院を設置しているということで今まで国から交付された交付金額のうち、病院に繰り入れされなかった分(4億2千万円)しか繰り入れしていない。
他の公立病院を設置している首長が当然のこととして実行していた、地域医療を守るための努力(一般会計からの交付税以上の繰り入れ)は今後も行わないということであり、さらにはその計画していた特別繰り入れもH9年以降は実行すらしなかった。
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H6年度
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H7年度
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H8年度
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H9年度
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H10年度
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計
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計画 |
5千万円
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1億円
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1億円
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8千5百万円
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8千5百万円
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4億2千万円
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実績 |
5千万円
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1億円
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5千万円
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0
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0
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2億円
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結局、前町長在籍期間中は地域医療を守るための独自予算は1円も病院に投入されることはなかった。
組合としてはこの第2回目の再建計画に対して運動方針を大転回し、積極的に病院経営に踏み込むということで、助役・病院長・組合3役を含んだ再建委員会の設立を要求し、3回ほど委員会を開催させたが、病院長は最初しか出席せず、医師が再建計画の策定に参加することにはならず、さらに当局側が唐突に人員合理化を含んだ再建計画を組合に説明も無く議会に報告するという事態を迎え、この委員会は宙に浮く形となった。
そして交渉の結果、間接部門の委託・退職不補充・臨時職員化を認める代わりに一般会計からの特別繰り入れの確約を得るということになったが、その特別繰り入れも上述したように計画途中のH8年以降は一方的に反故にされてしまった。職員給与費に関しては、この間、常に計画より下回るという結果となった。
また、この第2回目の再建計画が失敗した原因は内的要因だけではなく、H7年7月に近隣に新築開業された小野田労災病院が大きく影響を及ぼしている。
この労災病院の新築開業に対する経営的な対抗策が事前に練られ、第2回目の再建計画に盛り込まれ実行されたという事実は無く、内科・外科の患者数の減少に対して全くの無策であったといえる。
4. 第3回再建計画
(1) 計画策定の経緯
第2回の再建計画で不良債務は減るどころかH10年度はH6年度の1.7倍となり、県からの経営健全化の圧力などにより、議会が町民アンケートを実施し、「提言書」を採択した。(町長自らだと結果責任を問われるからか?)そして、その「提言書」に基づき、「再建委員会」が設置され、「中間答申」が策定され、第3回目の再建計画に意見反映された。
(2) 提言書の問題点
今までの2回の再建計画の中には無かった院長の積極的なリーダーシップの下での改革や、町長自ら町民に病院利用のアピールを求め、予算の優先配分を訴えている部分については評価できるが、病院財政悪化の原因を周辺医療機関の充実とだけしか捉えておらず、問題が生じ、解決していくための第一段階に必要な根本原因の究明の点では過去の再建計画と同じ過ちを犯している。
そしてこの「再建委員会」の位置づけが経営状況を把握し、町長または病院長に「提言」する権限しかなく、その提言の実行力の担保が無い委員会としての機能としての位置づけにしかなっていない。
また、この提言書を採択するときの前町長は、町民に病院利用のアピールを訴えるどころか「病院に金を入れるのはざるに水を入れることと一緒」と議会答弁しており、それまでの前町長の地域医療を守るという姿勢がまったくないということが如実に現れた答弁であった。
(3) 中間答申の問題点
「中間答申」の中身については、前述した「提言書」と同じで今日までの病院経営が悪化した根本原因を外的要因(少子化、不況等)でしか捉えていず、また、なぜ今までの再建計画の中の重要施策が実施できなかったのかという掘り下げも無い。
一番の矛盾は、一般会計からの特別繰り入れは困難としながら、ある程度の不採算はあっても再建を図るべきという両立できない問題の整理がなされていない。
再建委員会のメンバーは議会、知識経験者、医療を受ける立場の人間で構成されているが、病院経営の専門家が含まれていない。そして計5回開催されているが病院長は2回しか出席していない。
この時、前院長は組合との事務交渉の場では「私は一介の医者にしか過ぎず、経営にタッチできる権限はありません。」と公言している状態であった。
(4) 計画の策定 H11年度
再建の期間 H12年度~H18年度
計画の概要 ① 収入を7年間で4%増 経費を7.6%減
② 産科を廃止し、4病棟を3病棟へ
③ 加算制度の活用
④ 業務委託
⑤ 人件費の節減
(5) 結 果
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外来収益
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入院収益
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医業費用
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不良債務
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医業収支比率
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H12
年度 |
計画 |
705,845
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1,300,239
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2,347,523
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1,253,776
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93.3
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実績 |
645,810
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1,224,082
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2,191,344
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1,235,218
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92.1
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H13
年度 |
計画 |
720,300
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1,246,533
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2,278,414
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1,218,514
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94.4
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実績 |
652,553
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1,203,226
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2,133,080
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1,163,858
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95.7
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(6) 総 括
第3回目の計画策定に当たっても、1・2回目同様、院長、医師の積極的関与はなく、計画実行に際しても「提言書」・「中間答申」に盛り込まれていた院長の強力なリーダーシップが発揮されることは無かった。
そのような状況の中、H11年12月、前町長の病気による辞任を受け、H12年1月に病院再建を公約に掲げた現町長が誕生した。その現町長のもと基本的には中間答申に基づいたものではあったが、特別繰り入れの再開を含んだ第3回目の再建計画が作成された。
H13年度は十数年ぶりに純損益で3千3百万円のプラスを計上したが、しかし、一般会計の財政悪化により、H14年度には国の「第5次病院経営健全化措置」に乗らなければならなくなってしまった。
5. おわりに
H3年から10年間に亘り、作成されては1~2年で失敗するという結果をなぜ繰り返してきたのか?
どこに原因があったのか?
まず、第1番にいえることは、病院職場は多種多様な職種で構成され、それぞれが密接に関連しながら運営されている。そのような組織で財政再建のために大きく舵を切り直し、改革を断行し、経営を再建するという過程では大きな軋みを生じ、反発・抵抗・自己犠牲や感情的なしこりがいたるところで発生する。
ぬるま湯から引きずり出され、痛みを伴う変化を喜ぶ者はいない。
大きな痛みと反発、抵抗、自己犠牲を伴う改革を推し進める者には大きな権力・権限が必要であるし、反面最終的な全責任を負う覚悟が出来ている者しか、改革を進めることは出来ない。
絶対的な権力を行使出来得る立場の者が、確固たる信念を持ち、改革を推し進めなければ、人・組織はついては来ない。また、そのような権限を持ちうる者が、その権限を行使しないということは、職務怠慢そのものであり、組織全体に波及する悪影響を考えれば責任を追及されても止むを得ないであろう。
病院において、絶対的権限を有するものは誰が見ても病院長であるこということに異議を唱える者はいないはずである。
病院経営の最高責任者は病院長である。
その病院長が過去10年間(H3年~H13年)再建に関わってきた事実はない。最高責任者としての職務を果していなかったと断言できる。
また、財務上の実質的な責任者は事務長であるが、その事務長は地域医療に対して全くの無関心、無理解の前町長の下で通常の町の定期的な人事異動により就任する普通の地方公務員である。そのような事務長に公営企業の経営者としての認識や経営責任を問うことは、最初から現実問題として無理があったのではないだろうか。
前町長はハコ物行政を推し進めるため自らの経営責任を放棄し、赤字の根本原因に目をつぶり、人員削減・民間委託などの一番安直な方法で、財政の建て直しを図ってきているように対外的に繕ってきた。
この10年間で間接部門の合理化は41名から19名へと徹底的に行われ、これ以上の人員削減の余地はもう無い中で、H14年度から国による第5次経営健全化措置に身を任せなければならない状況を作ってしまった。
病院職員は地域医療を守るために医療現場の最前線に身を置き、そして病院経営の影響を直接受ける当事者でもある。その病院職員はこの10年間、病院経営に対してどう関与してきたのであろうか。「赤字、赤字……」を鵜呑みにし、「院長が、医師が、事務長が、町長が○○○○してくれない。○○○○してほしい。」と受身で人任せで、親方日の丸体質のもと他人事として日常業務に拘泥していたのではないだろうか?
赤字の根本原因に目を向け「○○○○が動いてくれないのなら」と自分たちで地域医療を守り、自分たちの職場を守ろうと自ら行動したものが何人いたであろうか。
このような現状を打破し、真の病院再建を果たすために組合からの提起により、昨年4月から助役、病院長、医師全員、各部門代表、組合4役と日本病院管理学会前理事の岩本氏を助言者として病院経営健全化委員会をスタートさせることが出来た。
昨年4月からの医療費負担3割などの逆風による患者数の減をまともに受けているが、病院長がやらないのなら、自分たちでやろうと早朝、玄関での患者様に対する挨拶運動や患者一人当たり診療収入の増加に結びつく検査件数の増加策や、経費削減に直結する現場からの提案など目に見える部分での再建に向けた動きが、この健全化委員会を開催させていく中で徐々にではあるが出てきつつある。
しかし、医業収入(22億円)の半分を超える巨額な不良債務を解消する再建計画の収益目標には遠く及んでいない状況も続いている。
今一度、過去の再建計画がなぜこうも簡単に、しかも何度も破綻を繰り返したのかという事実を真摯に見つめ直し、その責任の所在をしっかりと追求していくことが、真の病院再建に結びつくものであろうし、そのことがこの山陽町の地域医療の質と量を守っていく唯一の方法であり、出発点であると確信する。
最後に「再建失敗の責任の所在を明確にしなければいけない」という前記の岩本先生の指導に基づき、この「検証」をまとめ、全国で病院再建に取り組んでいる仲間のご助言を戴きたく、「自主レポート」として再編集し直し提出しております。ぜひ、ご意見・ご助言を下記メールアドレス(組合事務所)まで送っていただければと考えております。―――――(jichiro@netaro.net)
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