【自主レポート】
中心市街地活性化の舞台づくり
福井県本部/自治労福井市職員労働組合 橋岡 克典
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1. はじめに
福井市は、日本列島のほぼ中央部に位置し、福井県の県都として、商業、文化、行政等にわたる高次の都市機能の集積が進み、現在は面積約340.60km2の北陸における主要都市の1つとなっています。
本市の中心市街地は、近年、居住人口の減少、自動車社会の進展による商業施設や公共公益施設等の郊外立地等により、相対的な魅力の低下を引き起こしています。
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中心市街地活性化事業予定位置図
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こうした中、本市では中心市街地の再活性化を図るため、平成11年に福井市中心市街地活性化基本計画(対象区域面積約105.4ha)を策定し、「出会い、暮らし、遊びが彩るまちづくり」を基本理念に、「プラス1時間楽しむまち」を目標とし、当面重点的に整備する地区として連続立体交差事業等が進む福井駅周辺とともに、中央1丁目周辺を位置付けし、中心市街地整備改善事業とTMO事業を一体的に取り組んでいます。
2. 中央1丁目周辺・福井駅周辺の主な中心市街地活性化事業
(1) 中心市街地整備改善事業(賑わいの道づくり事業・ポケットパーク整備)
広域的に商圏を抱える県下一の商業集積地として、回遊したくなる環境づくり、憩い集うための溜り空間の創出等によって、集客力の向上と滞留性の強化を図り、質の高い道路整備を面的かつ集中的に整備することを目的に、平成12年度から平成16年度の5カ年計画で整備を進めています。
具体的には、コミュニティ道路化、バリアフリーでのネットワーク化、電線類の地中化、そして舗装の高質化(グレードアップ)を行い、賑わいの舞台づくりを進めています。
市道中央1-333号線(アップルロード)着工前 |
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市道中央1-333号線 (アップルロード)着工後
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市道中央1-332号線(北の庄通り)完成後
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また、平成14年度事業で整備されたポケットパークは、駅前の賑わいの発信スポットとして、イベント、休憩機能を備えた公園として、来街者に広く利用されています。
平成15年7月に完成イベントを開催し、それ以降多数のイベント利用があり、今年7月現在では、アカペラライブ等全21件の利用があり、中心市街地の賑わいの溜り空間として、広く活用されています。
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ポケットパークでのイベント状況(アカペラライブ)
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(2) 柴田公園・北の庄城址公園整備事業(公園整備事業)
当該公園は、平成13年度から平成15年度にかけて、発掘調査の成果及び文献上の成果に基づき、福井城および北の庄城期遺構を復元、修景に利用出来る形で、「歴史性」を基調として整備してきました。
柴田勝家公やお市の方、結城秀康公等の当地縁の偉人や偉業、文化に関する情報発信機能を併せ持った施設として、中心市街地への来訪者が、往時を偲ぶことができ、安らげる空間を創出する整備を行ってきました。
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柴田公園・北の庄城址公園
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(3) 駅周辺整備事業
JR北陸本線等による市街地の分断により都市機能が著しく阻害されている中、JR福井駅を中心に県都の玄関口にふさわしい活力と魅力ある都市拠点の形成を図るため、連続立体交差事業(平成4年度~平成18年度)や土地区画整理事業(平成4年度~平成21年度)を進めています。
連続立体交差事業は、交通問題の要因である踏切を解消することで、東西両地域の物理的分断を解消し、一体となったまちづくりができる環境をつくること、また土地区画整理事業は、交通結節機能の強化、都市基盤の再編を目的とし、他の事業をより効果あるものにする役割を担うことが期待されています。
(4) まちなか文化施設整備事業
中心市街地に不足し、市民の要望も大きい「文化機能」の導入を通して活性化を推進するという目的から、まちづくり福井株式会社(TMO)は、福井市中心市街地の一等地に立地していた山一證券跡地を利用し、本事業に着手しました。(平成14年度~15年度)
この施設は、約200席規模の多機能小ホールと練習施設、商業(飲食)施設を整備し、鑑賞から練習、発表に至る一連の文化活動の拠点として、また中心市街地の集客核として賑わいを創出しています。
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福井まちなか文化施設
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3. 事業進める上での課題および解決方法
(1) 福井駅周辺での各種事業との調整について
このような福井駅周辺の各事業および計画については、計画段階において都市計画マスタープランや中心市街地活性化基本計画等の上位計画や周辺の関連計画との調整を図りながら策定してきました。
しかし、その後の社会情勢や周辺条件の変化への対応や、都市機能の配置、活性化戦略等についての具体化が必要となってきます。
そこで、福井市では福井駅周辺における各事業および関連計画に関して課題等を整理調整し、まちづくりのあり方を議論・検討するための「福井駅周辺まちづくり調整委員会」を設立し、
① 事業および計画における機能分担
② 将来の交通処理
③ 景観の方向性
④ わかりやすい将来像 等
を検討事項とし、調整を行っています。
(2) 事業の合意形成手法
中心市街地における工事を進める上では、いかに市民に納得してもらう整備をするかという事が、大きな課題となってきます。
中心市街地整備改善事業(賑わいの道づくり事業)においては、これまでの公共事業における道路整備と違い、企画段階で地区全体のコンセプトを取りまとめ、路線ごとに通りの特徴をうまく引き出すような整備を行っています。
また、整備後においては地元商店街が道路をうまく活用し育てていくために、設計段階から地元商店街等と協議を繰り返しながら、全体から詳細部分までを決定していきます。
協議中には賛否両論のいろいろな意見が出されるため、行政・地元商店街とも意見をとりまとめることができるコーディネーター的人材が必要となります。
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商店街役員との協議
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商店街全体を対象とした説明会
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4. 整備後における事業効果について
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道路景観に合わせた新店舗
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中心市街地整備改善事業においては、整備が完成した路線では、店舗ファサードを改装したり、魅力的な店舗が出店したりと、高質な道路空間の景観に合わせ店舗の表情も魅力的なものになってきています。
また、ソフト事業の取り組みとしてまちづくり福井株式会社による多種のイベント等の開催が増加し、ストリートミュージシャン等にも道路空間が積極的に活用されつつあります。
また、3-(2)で述べた整備段階前から地元商店街と合意形成を図った路線等については、商店街自らが統一したプランターを設置したり、週一度の道路一斉清掃を行ったりといった道路景観を重視した活動を行っており、様々な事業効果が見られます。
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