【自主レポート】

自治労京都府本部「電話労働相談」の取り組み

京都府本部/オルガナイザー 西澤  弘

1. 概 要

 自治労京都府本部が取り組んだ、電話労働相談について報告する。
 この電話労働相談は、京都府の労政業務に携わっていた組合員からの提案がきっかけで企画が進み、実施に至ったものである。その提案とは、以下のとおり。
① 自治労京都府本部の社会的認知を高め、社会的役割の拡大を図る
② 未組織労働者が抱えている諸課題の解決を支援できる体制を整え、組織強化に結びつける
③ 相談援助機関との連携を強化し、労働組合としての力量を高める
④ 未組織労働者の組織化に資する
 2004年の春から電話労働相談の実施について協議を進め、広報活動も視野に入れ、「若年労働者と、特に新規就職者向け」「パートタイマーなどの労働者向け」「解雇・不当労働行為などの労働争議向け」「未組織労働者の組織化」などのテーマを設けて実施し、時期もそれぞれ、6月、12月、3月に開催することとなった。電話労働相談の開催日は、平日と土・日曜日を含む3日間とし、時間帯は平日・土曜日は13:00~20:00、日曜日は13:00~17:00とした。
 今回報告するのは、2004年6月11日(金)~13日(日)に実施したものである。相談日を含む1週間で35件の相談があり、そのうち若年の新規就職者の相談は2件にとどまった。自治体職場からは、5件の相談があった。本人が直接電話せずに、母親から2件、妻から2件、友人から2件といった、労働者の周辺からの相談もあった。高齢者の解雇問題で、裁判所に地位確認の仮処分申請しているケースも1件あった。男性からの相談は20件、女性からの相談は15件であった。

2. 具体的な実施方法

① フリーダイヤルの設置:自治労京都府本部の電話2台にフリーダイヤルを設定する。
② 6月11日~13日の期間で相談担当者を配置し、運営する。(1日3名を配置)
③ 運営については、別に定める、「自治労京都府本部電話労働相談内規」(資料参照)に基づいて行う。
④ 広報は、府本部ホームページと機関紙に記事掲載。京都・読売・朝日・毎日の新聞社へ、電話相談日の紹介記事掲載を依頼。
⑤ 相談担当者 小原 健史・三輪 祖史・森 健一(自治労京都府職)
        米沢 修司・横山 美樹・西沢 弘(京都府本部)
⑥ その他の援助機関との連携 …… 援助機関リストの整備をすすめる。
⑦ 予算は、12万円
⑧ 相談担当者の事前協議事項
⑨ 対応方法の調整 …… 連合の「なんでも労働相談ダイヤル」大阪府総合労働法律事務所の「労働相談支援マニュアル」労働問題研究会の「労働相談マニュアルブック」等を参考とした。

3. 結 果

(1) 自治労京都府本部 電話相談の相談状況(2004年6月11~13日)

相談日付
件数
相 談 員
04・06・09(水)
西沢
04・06・10(木)
西沢
04・06・11(土)
15
三輪・森・西沢
04・06・12(土)
三輪・森・米沢・横山・西沢
04・06・13(日)
小原・森・三輪・米沢・西沢
04・06・14(月)
西沢
04・06・15(火)
西沢
合  計
35
 

 

(2) 広 報

2004年6月8日 京都新聞朝刊

2004年6月10日 読売新聞朝刊
2004年6月11日 朝日新聞朝刊

 

(3) 相談の概要
  ① 下図の産業分類の結果からは、おおむね全分野から相談が寄せられている。
  ② 自治体関連職場からの相談は5件あった。
  ③ 相談内容について
   ・相談内容については労働条件に関する相談が多かった。その内訳を見ると「賃金」「労働時間」「解雇」が多く、また「安全衛生」に関する相談が多いことも目についた。
   ・労働組合の有無では、労組なしが17件、労組ありが6件、不明のケースも大半が労組なしと考えられることから、未組織労働者からの相談が8割近くを占めていると思われる。

産 業 分 類
件数
1 建設
2 製造
3 情報通信業
4 運輸業
5 卸売・小売業
6 金融・保険業・不動産業
7 飲食店・宿泊業
8 医療・福祉
9 教育・学習支援業
10 その他
(自治体関連)





 




(5)
労働組合及び労使関係
 
1 組合組織の結成・組織・活動
2 労使協議制
3 労働協約
4 団体交渉
5 不当労働行為
6 争議行為
7 その他







労 働 条 件
 
1 就業規則
2 労働契約
3 賃金
4 退職金
5 労働時間
6 休日・休暇
7 安全衛生
8 解雇・退職勧奨
9 その他


11





雇     用
件数
1 人材確保
2 定年制
3 配置転換
4 高齢者の雇用
5 障害者の雇用
6 その他





職業能力開発
 
1 公共職業訓練
2 企業内職業訓練
3 企業外職業訓練
4 その他



勤 労 者 福 祉
 
1 労働保健
2 退職金共済制度・財形
3 福利厚生
4 その他



男女雇用機会均等法に関すること
 
1 均等待遇
2 セクシャルハラスメント
3 育児休業・介護休業
4 その他



外国人労働問題
その他の問題
1 職場の人間関係
2 苦情処理
3 その他


(4) 運営の状況
  ① フリーダイヤルを設置した電話機は2台で、今回は適正な台数を確保できた
  ② 相談が多かった時間帯は、概ね午後5時から7時である
  ③ 新聞記事が掲載されて、相談日を待てずにかかってきたケースが5件あり、その逆に相談日に電話できなかったとして後日かかってきたケースもあった

(5) 次回の開催予定
  ① 2004年11月末から12月当初を予定
  ② 開催曜日は木曜日から土曜日、時間帯は午後1時~8時

4. 考 察

 今回の電話相談を通して、見えてきた課題について検討したい。
 法律的な説明を相談者に提供することで、本人が解決に向けて行動できると予測できるケースも多かったが、相談員が直接出向いて、経営者と話し合わないと無理だと判断できるケースがあった。不安定雇用の拡大が原因であることは確かだが、経営者も労働者も労働法制についての知識が不足している。その上、「自己主張をしない」とか「法律上正しくても、すぐにあきらめる」現代人気質が加わって、労働者の権利が非常に軽くなりつつあるのではないだろうか。
 また「気が弱く、すぐにあきらめる」今の労働者の抱える問題に対し、相談者の権利意識を高め主体的な行動を促進するには、相談員が労働者を育てる視点に立ち、法律を解説し経営者との対応についてアドバイスする前提として、カウンセリングマインドを働かせて相談者との関係を深めておく必要があるのではないだろうか。このような資質を持った相談者の養成が、今後、特に必要になってくると思われる。

<資料1/自治労京都府本部 電話労働相談 内規>

(目的)
第1条 京都府内の労働者の権利を擁護するとともに、公正公平な労働条件が実現されるよう適切なアドバイスや情報を、未組織未加盟の労働者に提供するため、電話労働相談日を設ける。
(選任)
第2条 相談員は、労働行政ならびに労働組合の相談活動経験者などから、自治労京都府本部執行委員長(以下、執行委員長という)が選任する。
(任期)
第3条 相談員の任期は1年とする。
(解任)
第4条 執行委員長は、相談員が次の各号の一つに該当するに至ったときは、当該相談員の委嘱を解くことができる。
    (1) 心身の故障のため、職務の遂行ができなくなったとき。
    (2) その他、執行委員長が相談員として適正を欠くと認めたとき。
(研修)
第5条  相談員は、執行委員長が指定する研修を受けなければならない。
(報告)
第6条  相談員は、相談業務を行ったときは、当該相談業務を行った日から1週間以内に、別に定める報告書を作成し、執行委員長に報告しなければならない。
(守秘義務)
第7条  相談員は、職務上知り得た情報を他に漏らしてはならない。また、その職を退いた後も同様とする。
(実費弁償)
第8条  相談員には、職務の遂行に要する費用を支払うものとする。(日当および交通費を含む)
(その他)
第9条  この要項に定めるもののほか、必要な事項は執行委員長が定める。
附 則
 この要項は、平成16年5月19日から施行する。